2016年の森山のケガからの劇的な野音での復活から、早くも1年半。
それから無事に今までと変わらずに精力的にライブ活動を続けているTHE MODSの今年最初のライブツアーが始まった。その一発目となる横浜に行った。
僕は会場となる新横浜の「NEW SIDE BEACH!!」に行くのは実は初めてで、途中で少し道に迷ってしまった。そしたら、モッズファンにはお馴染みの、フライングジャケットを着た男性が歩いていて、それを着てる人は確実にモッズファンなので、迷わずその人の後をついて行って会場に辿り着いた。
これはモッズファンにしか分からない話で恐縮だが、そのフライングジャケットというのは、ジョンソンズというロンドンの老舗パンク系ブランドの、ドクロなど派手なワッペンや刺繍の入ったヴィンテージの革ジャンで、昔クラッシュやストーンズ、そして森山もそれを着ていたので、ロックファンには永遠に憧れの一着なのだ。モッズのライブにはその自身の自慢のフライトジャケットを着たファンが沢山つめかけるので、それを見かけると「ああ、今日もモッズのライブに来たな」と実感ができるようになっているのだ。
完売超満員でギュウギュウの会場にいつものモッズコールが巻き起こる中、ほぼ定刻に明かりが消え、演奏がスタート。
いきなり中期以降の激しいナンバーがたて続けに3曲演奏される。しかも、いわゆる「ライブ定番曲」ではないが人気のある3曲で、その予想外な嬉しい展開に集まった常連ファン達も「おっ?今回のモッズのライブは今までと何か違うぞ?」ときっとみんな思ったはずだ
激しい3曲が終わり、いつもの森山の「こんばんわ、ザ・モッズです。」という挨拶の後の森山の「明けましておめでとうございます。」といった言葉に、そうか、モッズに会うのはまだ今年初めてだったな、と気付かされる。
そのあと、ライブでも人気の古いナンバーが披露され、会場全体が大合唱となる。それが終わると、森山はいつものテレキャスターをレスポール・ジュニアに持ち変え、またもレアなモッズのブルース曲を演奏。森山がスローめな曲でエレキアコースティックギターを弾く事はあったが、テレキャス以外のエレキギターをライブで弾くのは多分本当に久し振りだと思う。
この辺りから、僕もまわりのファン達も、今回のモッズが今までと違うライブのモードになっている事を確信した。
ライブの中盤、森山がギターを外しロカビリー定番服のエドワードジャケットを着て、踊りながらロカビリー系のナンバーを歌う、数年前から定番コーナーとなっている「ジョーカータイム」が始まる。
いつもモッズのロカビリー系の人気曲から始まるのだが、今回はファンキーでこれまたレアな曲が最初に披露されたが、これが凄くよかった。
モッズといえば激しい8ビートというイメージが強いが、そもそもモッズは音楽のレンジの広いバンドで、ブルース、R&B、レゲエ、スカ、それにファンキーな名曲もいくつもある。僕はそのファンキーなモッズも昔から大好きだったので、今後はロカビリーコーナーだけでなく、ファンキーコーナーも是非やってってほしいと強く思った。
実際この日、ブルースやファンキーなナンバーを歌ってる時の森山はとても楽しそうで、声の調子もバッチリで、アオッ!とかフー!など、シャウトやフェイクを連発し、歌う事を楽しんでいて、見てる僕らにもそれが伝わり、みんなも歓声でそれに応えていた。
そのジョーカータイムの前と後に、この夜、2曲のバラードが披露された。
2曲とも、もう30年以上も前の曲でモッズを代表するバラードの名曲だ。
たまらなかった。胸がいっぱいになり、またしても涙がこぼれてしまった。
歓声をあげ、踊り騒いでいたみんなが静かに聞き入った。何人もの僕と同世代の男性ファンも女性ファンも泣いているのがわかった。
きっとみんなその頃、僕と同じ10代で、恋や学校や人生の色んな事に思い悩んでいた頃だ。そして、このバラードを毎日聞きながら、好きな人の事を思ったり、夢に向かう自分の不安な気持ちのより所にして、この曲に助けられていた。
そんな集まった誰もが大切な思い入れを持つバラードが、30年以上経った今も、何も変わらず続いているモッズによって目の前で歌われているのだ。いやでも自分達の人生が、このバラードの名曲と重なり合わさってきて、熱い思いが込み上げてくる。
激しい曲でも、バラードでも、きっとこのかけがえのない瞬間を、同じ思いを持って集まったみんなと共有したくて、僕らはみんなモッズのライブに通い続けているのかもしれない。
そして最後の2曲も、新しめの激しい人気ナンバー2曲で締めくくられ、本編が終了。
激しいモッズコール(アンコール)を受けて再度出てきたモッズは、またしても今までの定番曲とはまた違う感じの新旧の人気ナンバーを織り交ぜた選曲で二度のアンコールに応えた。
オープニング3曲もそうだったが、アンコールの選曲も、モッズの本質でもあるシビアなメッセージ性の強い新旧の人気ナンバーが今回は意図的に選ばれてる感じがした。
そんな今までとまた変わろうとしているモッズを見ながら、僕は体がゾクゾクしていた。
デビューから何と37年目となるモッズが、安定を一切選ぼうとせず、更に今までと違う新しいライブの境地へと進み、進化しようとしている。しかも激しいままでだ。
なんて凄いバンドなんだと思った。そしてその「変化する」という事は同時に「これからもまだまだ続けていくのだ」という、モッズの戦闘宣言にもなるのだ。
僕はモッズというバンドを心から誇りに思った。そして37年経った今も、そのファンで居続けられる自分は本当に幸せだと思った。
モッズはこの日なんと三度目のアンコールにも応え、大盛り上がりの中、ライブは終了した。
ライブ終了後、会場で20年振りくらいの昔の知り合いに突然声をかけられて凄く驚いた。
実はその知り合いも昔からモッズのライブに通ってたそうだが、僕も行ってたという事は全く知らず、ここの僕の書いたモッズのコラムを先日初めて読んで、僕もいつも来てると知り、驚いたという事だった。
少しの間、昔話をして盛り上がった。その知り合いは音楽好きで、ほかのアーティストのライブとかにもよく行ってるそうなんだが、今も継続して通い続けてるアーティストはモッズだけかも、と言っていた。
「なんかさあ、やっぱなんか、モッズじゃなきゃダメなんだよね~。」と言っていた。
そうなのだ。なぜかホント不思議ですらあるけど。
モッズじゃなきゃダメなんだ。