甘い暴力 8周年記念のプレゼンツ 八年目の招待
2024年11月14日(木) 東京・Spotify O-EAST
大阪を拠点に活動中のヴィジュアル系ロックバンド・甘い暴力。“拗らせ女子達に捧げる、スウィート・ヴァイオレンス・ロック”をコンセプトに掲げている彼らは、様々な闇/病みを抱えた人間の心情を生々しく綴った歌詞や、攻撃的ながらもメロディアスかつ多彩なサウンド、そして緩急をきかせまくったライブパフォーマンスで着実に支持を高め、強い存在感を放っている。そんな甘い暴力が、東名阪にて『甘い暴力 8周年記念のプレゼンツ「八年目の招待」』を開催。タイトルの通り、今回のライブはバンド結成8周年を記念して行なわれたもので、11月14日(木)にSpotify O-EASTで開催された東京公演は、凶暴すぎる音塊と、並々ならぬ気迫と、熱くて深すぎる愛がドロッドロに噴き出す祝宴となった。
暗転。ステージにかけられていた黒い幕がゆっくり開いていくと、文(Gt)、義(Ba)、啓(Dr)の3人がすでにスタンバイ。啓のドラムを皮切りに、3人が凄まじいテンションで音をフロアにぶつけていくと、咲(Vo)がマイクを高く掲げて登場。メランコリックで耳に残るメロディを擁した「清純系不純エゴ」でライブをスタートさせると、「ハジメマシテ。」「君、依存、タトゥー」と重量感のあるサウンドを次々に畳み掛けていった。それにしてもステージから放たれる熱量が尋常じゃないほどに高い。オーディエンスもそれに熱く応えていたのだが、まだまだ足りないと言わんばかりに「東京で一番治安の悪い場所はO-EASTやろが!」と煽り、「乱痴気卍娘」へ。このペースで最後まで本当に保つのだろうかと心配になるぐらい、とんでもない勢いで駆け抜けていく。
フロアの熱狂を生み出していくメンバー達の個性もかなり強烈だ。文がフロアを見渡しながら要所で耳をしっかりと惹くフレーズを残していけば、ときにイスから立ち上がるだけにおさまらず、ドラムセットに乗って叩いたりと、派手でありながらも一撃がやたらと重たいドラミングで啓が魅せれば、衣装の特攻服が映えに映える気合いの入ったリーゼントヘアの義は、ステージを動き回りながらも堅実なプレイでボトムを支える。個性的な楽器陣による、爆発力はありながらも安定した演奏を背中に受け、フロントマンの咲は全身全霊で歌をフロアに放つ。お立ち台に直立し、グロウルやファルセットなど様々な歌唱法を使い分けて闇の世界へ誘った「アマイドグマ」や、「嫌いになってください」をはじめとした歪んだ愛とも、愛ゆえの暴走とも、ある意味純粋とも言える楽曲への入り込み具合はとにかく圧巻。なかでも「故に、ドエス。」で見せた情緒不安定ぶりは真に迫るものがあり、恐怖を感じさせるほど。毒々しすぎる言葉でフロアを煽り倒すと、「ミナゴロシ」へ突入。オーディエンスは激しく頭を振り回し、叫び声をあげる。「楽しんでますか!?」と声を求めた咲が話す。
「何者にもなれなかった8年前。いつかキラキラと輝ける人間になれるんじゃないか、自分自身を形成している闇が変わって光になれるんじゃないかと思っていた。でも、8年間続けてやっと気付いた、やっと教えてもらったものがあったんだよ。“咲さん、どうかあなたのままで、甘い暴力のままで突き進んでくれ。なぜならば闇の中でしか生まれない言葉がある。あなたたちにしか書けない曲がある”。この8年間でお前が教えてくれたんだよ!」(咲)
そう叫び、4人が届けたのは、彼らなりの言葉で“生きる”ことを歌った「死に方を教えて」だ。4人が放つ本気の情熱をオーディエンスはまっすぐに受け止めていた。
そんなエモーショナルなステージから打って変わって、メンバーによるコミカルな“茶番”も彼らのライブの魅力のひとつ。この日は8周年記念ライブということで、蜂(ハチ)を題材にした寸劇が披露された。いろいろ訳ありで婚活歴8年目に突入したハチコ(義)に、イケメンで優しいけどちょっと頼りなさそうなハチオ(文)が声をかけていたところ、高身長・高収入だけど自信満々なところがちょっと引っかかるカマキリ男(啓)が乱入。ハチコを巡ってハチオとカマキリ男が争い始めるのだが、ハチコが男性を選ぶ際に重要視しているポイントは「いかに思い出を大切にしているか」だということで、咲の司会進行のもと、甘い暴力の歴史を振り返る「8年の間であんなことやこんなことがあったんでしょうかクイズ」になだれ込むという展開でフロアを盛り上げていた。そして、“茶番”のポップな空気を増幅させるように、「絶対純愛光線」ではフロアが一体となってキュートな振付で踊り狂えば、「元気もりもり100%」では“オラに元気をわけてくれ!”という某アニメの名台詞が流れると、メンバー達が元気玉ならぬカラーボールをフロアに投げ込み、オーディエンスも喜ばせていた。
ややもすればバンドの世界観がぐちゃぐちゃになってしまいそうなところだが、そうなることなく、180度真逆のベクトルをフルに活かせているところは、前述した演奏力や、咲がステージで伝えるメッセージがバンドの軸にしっかりとあるからだろう。「蝶王」や「暴れ少女」では楽器隊のダイナミックなソロ回しが飛び出せば、「勝て」では咲が2本のマイクを巧みに使い分けながら歌を届ける。求心力抜群の言葉もより熱と説得力を増していき、へばるどころかピークを延々と更新していく状況に、「間違いなく過去イチだったぞ!」と、咲はフロアを讃えていた。「これからも俺は闇のままで生きていくから、お前もお前のままで走れ! どうかそのまま、自分をいじめる自分を、自分を憎む自分を許して、このEASTの外に持って帰ってやってください! 俺らは闇の中でしか生まれない言葉、闇の中にしか咲かない花を咲かせていくんで、またいつでも遊びに来いよ!」。
甘い暴力は、12月に『甘い暴力 アコースティックのプレゼンツ「恋のクリスマス」』を開催。年末はカウントダウンイベントに出演し、来年早々に『甘い暴力 2025年明けのプレゼンツ 姫ハジメ。』を、1月5日(日)にUMEDA CLUB QUATTRO、1月19日(日)恵比寿LIQUIDROOMで、翌月には『クソプレゼンツ 「バレンタイン心中」』を2月7日(金)CLUB CITTA’、 2月14日(金)大阪BIGCATにて行なうことになっている。2025年も自分たちの道を突き進んでいく彼らのライブを是非一度味わってもらいたい。
— 甘い暴力 (@sweetviolencejp) November 14, 2024
SET LIST
01. 清純系不純エゴ
02. ハジメマシテ。
03. 君、依存、タトゥー
04. 使えね。
05. 乱痴気卍娘
06. 今、ここで死ねたなら
07. アマイドグマ
08. 共依存
09. 嫌いになってください
10. 故に、ドエス。
11. ミナゴロシ
12. 死に方を教えて
13. 絶対純愛光線
14. 元気もりもり100%
15. 蝶王
16. 暴れ少女
17. 挑戦者
18. 暴動
19. 心の温度
20. ヒス症
21. 勝て
22. 好きな人でしかイケません