甘い暴力、「九年目の招待」KT Zepp Yokohamaで解き放った剥き出しの音と言葉

ライブレポート | 2026.01.23 18:00

甘い暴力 9周年記念のプレゼンツ 九年目の招待
2025年12月12日(金) KT Zepp Yokohama

甘い暴力が、バンド結成9周年を記念した単独公演『甘い暴力 9周年記念のプレゼンツ 九年目の招待』を、大阪・神奈川の2ヶ所で開催した。2025年も精力的な活動を繰り広げてきた彼らだが、本公演の開催を前に、ドラムの啓が甘い暴力のメンバーとしての活動を終了することを発表。12月12日(金)に開催されたKT Zepp Yokohama公演は、様々な思いが交錯する中、剥き出しの音と言葉をフロアにぶつけ、それに応えるオーディエンスと共に激走する120分間となった。

重厚なSEが流れると、文(Gt)、義(Ba)、啓(Dr)の3人が登場。オーディエンスは息を呑んでステージを見つめている。そこへ咲(Vo)が姿を現して声を求めると、フロアから歓声が上がった。そのまま最新EP『フェティッシュ』に収録されていた「ハッピィアフターピル」でライヴがスタート。緑と赤のライトがステージを不気味に照らし出すと、扇動的なシンセを組み込みつつ、静と動を効かせた凶暴なサウンドをフロアへ放つ。ガナり気味に歌う咲の声は並々ならぬ気迫に満ちていて、ラストで凄まじい咆哮を轟かせると、そのまま音を途切れさせることなく「堕天」へ繋げる。そこから「首絞めマアチ」「激痛」とさらにギアを上げていくと、その勢いを加速させるように啓がドラムを乱打。すると咲がドラム台の前まで行き、「オイオイオイオイオイ!」と啓を激しく焚きつけ、「『9年目の招待』へようこそ!」と絶叫し、そのまま「ヒス症」へ。場内には凄まじい熱が渦巻き続けている。

咲(Vo)

啓(Dr)

まさに音の暴力と言える壮絶な展開になっていたが、「情死」から始まったセクションでは、エモーショナルで骨太なサウンドはそのままに、メンバーのプレイ1つひとつが光る場面も非常に多かった。「フェティッシュ」では、咲が艶やかなフェイクを響かせて官能的な世界へどっぷり浸らせると、「溺愛シット」では、大きく頭を振りながら重低音を響かせる義と、笑顔でドラムを猛烈にシバく啓が生み出すどっしりとしたグルーヴが身体に強く響く。曲の終わりで一拍だけ音を止め、咲の歌から「スイート・ペイン・ロックンロール」になだれ込んでいく流れも見事。文もド派手にギターソロを弾き倒すと、「何もかも脱ぎ捨てた、裸の、“無修正”の、甘い暴力をてめえにくれてやるよ!」という咲の絶叫から突入した「無修正」では、フロアにヘッドバンギングが吹き荒れた。

「9年前は何もなかった。楽屋でも、“あんなしょうもねぇ奴ら、どうせすぐ消えんだろ”って聞こえる声で言われたこともある。だけど、俺達は曲を書き続けてきた。泣こうが、わめこうが、メンバーとケンカになろうが、自分の中にどんどん深く入り込んで、何度も自己嫌悪に陥りながら、辿り着いた言葉がある。誰に何を言われようが、そうやって曲を書き続けてきた──」。咲のそんなMCから始まったのは、「死に方を教えて」だ。どんな励ましの言葉もうすら寒く聞こえる真っ暗な闇の中で、自分の感情を一つひとつ丁寧に紡ぎ上げていったような言葉を、最大限の熱量で届けていく。途中、白くて淡い光が4人を包み、まるで時が止まったかのように錯覚させられるライティングも美しかった。

文(Gt)

義(Ba)

そんな感情を深く揺さぶる場面から、ラフでコミカルな“茶番”に一気にシフトチェンジするのが、なんとも甘い暴力らしいところ。この日の“茶番”は、文、義、啓の3人が、“9年”になぞらえたゲームに挑戦することに。その内容は、まず、ぐるぐるバットで9周する。その後に一発芸を披露するのだが、その芸の時間を計測して、最も9秒に近かった人の勝ちというもの。「俺、勝った人の言うこと、なんでも聞くから」という咲の一言に、3人が俄然やる気を見せる中でゲームスタート! 甘い暴力の前身バンドである白日ノ夢の「事例04 -ナイン-」をBGMに挑んだ結果、“9秒以内に目に見えない敵を倒す”という芸を披露した文が、9.67秒という好記録を叩き出して優勝。最初は「叙々苑に行ったことがないから行きたい」と、フロアにいる全員を連れて焼肉に行こうとしていた文だったが、「小さい頃から動物園でライヴをするのが夢だった」と明かす。じゃあその夢を今ここで叶えようということで、次に披露する曲のみ、オーディエンスは咲にどれだけ煽られても、すべてゾウの鳴き声で返すということに。そして、「動物のことは大好きです! 動物愛護の人に怒られない域で言います」という前置きから「ミナゴロシ」がスタート。大音量の“ぱおーん”という声がKT Zepp Yokohamaに響き渡るという、普通のライヴではまず生まれることのない景色を作り上げていた。そこから「みんな人間辞めちゃって可愛いな! そんなところも“らぶみ”が深いなー!」と、キュートなフリを交えた「らぶみ」、さらに「共犯者」と、激甘なポップサイドをエグい音で届け、「蝶王」の怪しくも煌びやかなシャッフルビートでフロアを揺らすと、「底なしの自由を楽しもうぜ!」と「乱痴気卍娘」でぐちゃぐちゃ掻き回していった。

怒涛の終盤戦に差し掛かる直前、咲は9周年の感謝と、様々な想いが入り混じる今の心境をまっすぐに明かしていた。「今から届ける曲は──というか全曲そうなんだけど──俺とお前が傷を舐め合うために書いた曲じゃない。元々そんなバンドでいるつもりはねぇんだ。心の奥底まで覗き込んで、書いて、それを届けるのを続けていくことに残りの人生を注ぎ込むって決めているから、今から届ける曲も傷を舐め合うための曲じゃない。ある意味、俺の独白に近いような曲──」。そこまで話すと語気を強める。「順風満帆に生きてこれた奴なんていない。そんなお前がしっかり泣いて、悔しがって、自分を傷つけて、それでもしっかり歩めるように。(啓に向かって)コイツがこの先ひとりで歩んだとき! つれぇな、もうやりたくねぇ、どこにも行きたくねぇって思ったとき! しっかり目を瞑って、今日の日を思い出せよ! その“なみだの後”で、互いに会おうぜ!」。

そして、ノーマイクで「行こうぜ!」と咲が絶叫し、激情的な音とポエトリーリーディングを疾駆させる「なみだの後」に突入していった。薄暗い照明と逆光で細かい表情は分からない中、4人は異常なまでの熱をまとって激走していく。啓が俯きがちに猛然とドラムを叩き上げていると、途中で咲は啓に向かって言葉をぶつけていく。文も啓のほうを向いてギターをかき鳴らし、義は溢れ出る思いを強く噛み締めながらしっかりとボトムを支える。オーディエンスは、激流のように思いが溢れ出している4人の音を、その姿を、この景色すべてを心に焼き付けるように見つめ、受け止める。曲を終え、楽器隊が爆音で音をかきまわす中、咲が話し始める。「俺達は何があっても大丈夫なんだよ。しかし、今、この9年で一度だけ弱音を吐かせてくれるんだったら言わせてくれ…………大丈夫なわけねぇだろ!」。轟音の中、彼はそう叫び、崩れ落ちた。

「んなわけねえよ! どいつもこいつもぶっ飛ばせればどれだけラクだったか! クスリに逃げれば、酒に逃げれば、どうにかなったのかもしれねえ! でも、俺の中の俺がそれを許さなかった! そのときのために、今までなんと言われようと書き続けてきたんだよ! わかるか! 黙って聴いとけ!」(咲)

そんな剥き出しの絶叫から始まった「だいじょばない」も、交錯した感情をそのまま吐き出したかのような演奏を繰り広げていて、気付くとペンを取る手が止まってしまうほど、一瞬もステージから目を離すことができなかった。曲を終え、「独白を聴いてくれてありがとう」と叫ぶ咲が、大阪公演の後、文に「解散ライヴみたいなMCしてんじゃねぇぞ」と言われたと笑いながら明かす。「気持ち切り替えろよ! 俺達は今日ここまでどんなライヴでも一本も手を抜いたことがねえんだ。心に刻む忘れられないライヴにしていこうな!」。

そこからは「てめえで決めろ」「暴動」「勝て」と、ピークを延々と更新していく甘い暴力の真骨頂を見せつけていく。「好きな人でしかイケません。」に入る直前、「この先もバンドに生き、バンドで死ぬ」と咲が叫んでいたが、その覚悟を表すような音塊にフロアが呼応し、会場がまるでひとつの生き物のように蠢く瞬間が何度も生まれていた。「大丈夫じゃないっていう本音を言えたから、本当にもう大丈夫。ここから最高の10年目に向かってやっていくし、最高の15年、20年迎えるようにしっかりやっていくから。でも、だらだらやるつもりはない。それがどれだけ難しいことかもよくわかってる。いつ何が起こるかわからない。だからこちとらテキトーに生きてらんねぇんだよ! この9年間、一片の悔いも残さなかった。これからもそうしていく!」。この日のラストナンバーとして彼らが選んだのは、「どうせ死ぬ」だった。“終わりがあるからこそ、まだここで終わらせられない”と、ここまで築き上げてきたすべてと、これからも命を燃やし続けていく決意を高らかに宣言し、記念すべき1日にふさわしいエンディングでライヴの幕が降りた。

2026年、甘い暴力は新年早々から走り出す。まず、『2026年明けのプレゼンツ 姫ハジメ。』と題した単独公演を、1月12日(月・祝)に大阪BIGCAT、1月17日(土)に恵比寿・LIQUIDROOMにて開催。そして、啓の卒業公演として『啓ちゃん卒業のプレゼンツ「はっぴぃぃぃぃ!!!!」』を、2月6日(金)に川崎CLUB CITTAʼ、2月15日(日)になんばHatchにて行うことになっている。咲、文、義、啓の4人による甘い暴力はこのライヴをもって終了となってしまうわけだが、バンドはここで止まる気など毛頭なく、2月23日(月・祝)から全国18ヶ所を廻るライヴハウスツアー『2026春のプレゼンツツアー「虎伏戦吼」』を行なうことを発表している。2026年にいよいよ結成10周年を迎える甘い暴力。ひとつの節目に大きな転機を迎える彼らの音楽でありライヴを、その目で、耳で、身体で受け取ってほしい。

SET LIST

01. ハッピィアフターピル
02. 堕天
03. 首絞めマアチ
04. 激痛
05. ヒス症
06. 情死
07. フェティッシュ
08. 溺愛シット
09. スウィート・ペイン・ロックンロール
10. 無修正
11. 死に方を教えて
12. らぶみ
13. 共犯者
14. 蝶王
15. 乱痴気卍娘
16. なみだの後
17. だいじょばない
18. てめえで決めろ
19. 暴動
20. 勝て
21. 好きな人でしかイケません。
22. どうせ死ぬ

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