Nothing’s Carved In Stone
15th Anniversary Live at BUDOKAN
2024年2月24日(土)日本武道館
オープニングではバンドの15年のヒストリーがMVや記念碑的なライブ映像で紡がれ会場が高揚するなか、村松 拓(Vo/Gt)、生形 真一(Gt)、日向 秀和(Ba)、大喜多 崇規(Dr)が登場。生形がギターの弦を滑らせると、「Out of Control」でショーをスタートした。ステージ背面の大きなヴィジョンに、4人の姿が4分割で映し出されると会場が歓声で包まれ、さらに熱を帯びていく。「Deeper,Deeper」や「ツバメクリムゾン」など冒頭の5曲から新旧の曲が入り混じり、「Chain reaction」では不規則にフロアや会場を差していくライトや幻想的なライティングが、美しいメロディや生き物のようにしなやかにフォルムを変えていく柔軟なバンドアンサンブルを際立たせる。
「Nothing’s Carved In Stoneです、マジでありがとうございます」と村松は挨拶をすると、「まだ5曲しかやってないけど、もう帰ってもいいくらい満足感がある」と語り、自分たちと同じ感性を持った人がこれだけ集まってくれたことに興奮すると、会場を見渡す。そして(リクエストで構成された)みんなの気持ちのこもった武道館だと言って、続くブロックへと突入した。ギターアルペジオと歪みの効いたベース、変則的なビートが絡み合いエキゾチックなムードを醸す「Cold Reason」ではじまったこのブロックは、Nothing’s Carved In Stoneの真骨頂であり、この4人でからこそのヴルーヴやアンサンブルを堪能できる曲が並ぶ。「踊ろうぜ!」と村松が声を上げ、爽快な風を巻き起こるようなサウンドで観客を揺らしていく「Brotherhood」、鋭いレーザーとともに鋭いギターフレーズが会場を射抜いていく「Stories」が続くと、観客はそのアイディア多彩なギターフレーズやビートに酔いしれる。テクニカルだということだけでなく、シンプルでもハッとするような新しさがあったり、どこから発想されるんだろうという刺激をくれるサウンドや、音。その万華鏡的な音楽の深みへと、ショーは進んでいく。
ステージや、会場の床をも這い回っていくようなベースと、ドラムビートとギターで紡ぐポリリズムが不可思議な平衡感覚を生む「Gravity」に続き、「村雨の中で」や「Walk」など日本語詞の曲でグッとエモーショナルになったところで、袖からトランペットのメロディアスな旋律とともに登場したのは、タブゾンビ(SOIL&”PINP”SESSIONS)。饒舌なトランペットが入って再構築された「Inside Out」は最高で、とくに間奏パートのアンサンブルではメンバーのテンションも楽しさも、無邪気に跳ね上がっているのがわかる。リクエストによるセットリストや映像やレーザー、特効という演出などテッパンで盛り上がるものだけでなく、新しい刺激、新しいアレンジなど、つねに試みあるものを見せてくれる。これが、Nothing’s Carved In Stoneというバンドのマインドだろう。
「一発、でかい花を咲かそう」。村松のその言葉でプレイしたのは、「きらめきの花」。シンガロングが起こり、一体感を増していくなかで折り返した後半では、映像でNothing’s Carved In Stoneというバンド名に由来した石盤が映し出される。ここからまた新たな歴史をそこに刻んでいく。15周年のライブは、そのはじまりでもあることを感じさせる。
恍惚感で満たす「Shimmer Song」や「Milestone」、爆発的な盛り上がりを見せる「Like a Shooting Star」などハイカロリーな曲を連投し、呼吸を整えるように挟んだMCでは、「2週間、がっつりリハしてきたけど、どうなってんのこれ?」と、改めて30曲超えのセットリストについて語る村松。また改めて、積み重ねてきた人生を詰め込んだ曲たちだと再確認したと、充実した曲を作ってきたことを語った。そして、終盤では再びタブゾンビが登場して、「Spirit Inspiration」と「Idols」で共演。先ほどにも増してディープにサウンドに絡み、「Spirit Inspiration」ではド派手に上がる特効の炎とともに会場の温度を上昇させて、ギターリフや躍動するベースのグルーヴを濃密にしていく。さらに「Idols」では、ドラム台で大喜多とともにサウンドのボリュームを上げ、観客のジャンプを高くする。ファットなビートと、ノイジーでいて瀟洒なリフが会場を駆け巡っていくのが爽快だ。
村松は「楽しいわぁ」と声をあげる。またいよいよ終わりに近づいてきていることも感じさせながら、「大切な1曲です。(リクエスト)1位の曲をやります」と、ゆったりと刻まれるビートのなか響かせた歌は、「November 15th」。節目となるライブや大事なタイミングで欠かさずに披露してきた曲である。観客はそのフレーズを味わうように、またともに口ずさみながら、コブシを振り上げる。15周年を迎え、そして武道館という特別な場所で、しかし変わらずにこの曲を奏で、歌うことができていることにバンドの確かな手応えを感じる。キラキラと紙吹雪が舞うなかでのシンガロングは、この日のハイライトでもある。そして、感情を大きく爆発させていくように「Isolation」から、ラストの「BLUE SHADOW」へと駆け抜けていった。瑞々しいギターのサウンドと、村松の骨太なボーカルが響き、映像では4羽の鳥がゆったりと、自由に、様々なシーンを羽ばたいていく。これからの、まだ見ぬ景色も予感させる締めくくりとなった。
アンコールでは、改めて観客へと感謝を述べ、また生形は「16年前に、下高井戸のドトールでひなっち(日向)とふたりで、かっこいいバンドを作ろうと話して──」とバンドのはじまりを振り返る。またこの15年で世の中は人と人との繋がりが希薄になったと感じていると話し、Nothing’s Carved In Stoneでは一対一の付き合いをしていきたいとMCをした。また村松は、「まだ(リクエスト分)全曲やりきってないの、気づいてるよな」といって、まずは「Around the Clock」で再び観客を沸かせていった。客電がついた、互いの顔がはっきりと見える明るい会場での演奏が、先ほどの生形のMCとも重なりグッとくる。さらに「Sunday Morning Escape」から、ラストは最新曲「Dear Future」で未来への約束をし、15周年の集大成となる武道館公演を締めくくった。エンドロールでは、5月にニューEPをリリースすることと、次なるワンマンツアーの開催もアナウンスされ、ここからもノンストップでバンドが進んでいくことが伝えられた。メンバーそれぞれがキャリアを築いてきた上で、結成されたNothing’s Carved In Stone。そこから15年、他のバンドやいくつものプロジェクトを並走させているメンバーもいるが、それでもこのNothing’s Carved In Stoneは変わらぬメンバーで“バンド”として新しい音楽、ロックミュージックを追求し続け、成長も続けている。それだけクリエイティヴィティを触発しあえる仲間であり、音を合わせる楽しみがある4人であり、まだ見ぬ音楽世界を一緒に開拓したいバンドなんだろう。そんな思いを感じる一夜となった。
SET LIST
01.Out of Control
02.Deeper,Deeper
03.YOUTH City
04.ツバメクリムゾン
05.Chain reaction
06.Cold Reason
07.Words That Bind Us
08.Sands of Time
09.Brotherhood
10.Stories
11.Gravity
12.村雨の中で
13.Red Light
14.Walk
15.Inside Out
16.Everlasting Youth
17.In Future
18.きらめきの花
19.Diachronic
20.Shimmer Song
21.Milestone
22.Like a Shooting Star
23.Music
24.You're in Motion
25.Spirit Inspiration
26.Idols
27.November 15th
28.Isolation
29.BLUE SHADOW
ENCORE
01.Around the Clock
02.Sunday Morning Escape
03.Dear Future