天月-あまつき-、豪華ゲストを招いて今年の夏の最後を盛大に彩る!東京体育館2daysの初日をレポート

ライブレポート | 2023.09.27 20:00

天月ワンマンライブ「ハローサマー・グッバイ」
2023年9月16日 (土) 東京体育館

2023年9月16(土)、17日(日)に東京体育館にて開催された、天月-あまつき-(以下、天月)主催の2daysライブ。初日『天月ワンマンライブ「ハローサマー・グッバイ」』はゲストのluz、un:c、超学生と夏の終わりを彩り、最終日の『みっくすじゅーす!〜良いスポーツ音楽祭〜』はゲストのrion、じゃすぱー、少年T、リモーネ先生、松丸亮吾と歌唱だけでなくバラエティ企画を実施するなど、天月がこれまでの活動で出会った仲間たちの力を借りて2日間でまったく異なる趣向のライブを展開した。
このうち初日に足を運んだところ、ワンマンライブの固定観念を覆すその内容に感服した。観客の予想を超えたギミックが次々と巻き起こるエンターテインメント性と、1本の物語を臨場感たっぷりに味わえる作品性を両立させた、オリジナリティ溢れる一夜だった。

天月のマスコットキャラクター・正宗くんによる開演前のアナウンス動画の後、夏を描いたオープニングムービーとともに天月による朗読が流れる。夏にやり残したことを探しにいこうという呼び掛けから、最新曲「僕らは夏を待っていた。」のイントロが鳴ると、天月がメインステージ上段に登場。“天月バンド”の演奏に乗せて、会場一帯を一気に夏の空気へと染め上げた。
「この日のためにたくさん準備をしてきました。最高の夏の締めくくりをみんなで作りましょう」と真剣なまなざしで語ると、back number「高嶺の花子さん」のカバー、“天月ダンサーズ”との息の合ったダンスも目を引く「Miracle Planet」と、夏曲や夏と親和性の高い楽曲を立て続けに披露する。
テンポがよく人懐っこいMCやコールアンドレスポンス、天月ダンサーズによる振り付けのレクチャーなどで観客の緊張をほぐすと、DECO*27の「おじゃま虫」のイントロで天月が3階北側のスタンド席に登場。周辺の観客たちは突然の事態に驚きを隠せないと言った様子だ。その後は彼がステージに戻るまでの間にメインステージにいるバンド&ダンサーチームが「トワイライトダンス」「エンジェルに花束を」を披露したり、天月が今度は反対側の3階南側のスタンド席に移動したり、直前にレクチャーした振り付けを会場一帯になり踊るなど、様々なギミックで楽しませる。客席を飽きさせず、サポートメンバーにもスポットを当てる全年齢対象のエンターテインメントに、彼の思慮深さと豊かな発想力が垣間見られた。

10代の甘酸っぱい夏の青春を描いた「無責任せんせーしょん」の後は、ゲスト3人が順々に登場するセクションへ。ゲストがそれぞれまず天月のオリジナル曲をカバー、その後に天月が合流してツインボーカルでカバー楽曲を歌唱するという、2パターンの“リアル歌ってみた”が味わえるというプレミアムな時間だ。
トップバッターとして登場したun:cは、「月曜日の憂鬱」を天月ダンサーズとともにダンスをしながらパフォーマンス。キュートな楽曲を爽やかな笑顔で届けた彼に天月は「歌うだけじゃなくて踊ってるじゃないですか!」と驚きを見せ、un:cは「(これだけ大変なことを天月も)よくやってるねえ」と賛辞を贈った。そして「みんなが大好きで、盛り上がっているあの曲を一緒に歌いたい」という天月の言葉から、YOASOBIの「アイドル」で抜群のコンビネーションを見せた。
続いての超学生は「Prison Land」を歌唱し、妖しげな力強さで一気に彼の世界観に包み込む。同曲は天月の楽曲のなかでも、超学生が得意とするエレクトロスウィングナンバーゆえに、ボーカルと楽曲との高い親和性を見せた。天月と超学生が歌うGigaの「劣等上等」は、対極の声の魅力を持つ者同士ならではの不思議な共振で客席を翻弄。楽曲の破壊力を格段に上げていた。

最後にluzが「ルマルソルシエ」をカバーし、ドラマチックなメロディを艶やかに彩る。優雅で堂々とした立ち振る舞いは魔王さながらの存在感だ。だがMCでは「この曲歌いたかったんですよ~」と朗らかに語り、その後もマイペースで自由なトークを展開する。そんなluzのギャップにたじろぐ天月の様子も微笑ましい。ふたりで披露したみきとPの「ロキ」は、天月の高音とluzの低音のユニゾンが小気味よく響いていた。
バンド&ダンサーメンバーの紹介コーナーを挟むと、天月がカジュアルな衣装にチェンジしてライブはラストスパートへ突入。優里の「ベテルギウス」のカバーや、オリジナル曲「コスモノート」など真摯でエモーショナルなボーカルが際立つ、夜や星を描いた楽曲を立て続けに届ける。青い葛藤を描いた*Lunaの「アトラクトライト」では明日への願いを込めるように熱い歌声をメロディと言葉に乗せ、夏の夜空と“君”への思いを綴った「きみだけは。」では目の前の観客に語り掛けるように優しく、芯の通った歌で包み込んだ。

天月は「僕らは夏を待っていた。」を誕生日の翌日にリリースしてから、葛藤する日々が続いていたという。コロナウイルス関連の制限が緩和し、来年活動15周年を迎えるというタイミングで、様々な悩みに直面しながら東京体育館2days初日を迎えたそうだ。そして「だけどここに立って歌ってみたら、その悩みはみんなが吹き飛ばしてくれました。僕はここにいていいんだなと思いました」と、自身を求めてくれる人々の存在に勇気づけられた旨を明かす。「今日はあらためて答え合わせができました。これでまた精一杯走っていくことができます」と晴れ晴れとした真剣な表情で感謝を告げ、リスナーたちが悩んだ時に自身の活動が前を向くきっかけになればうれしいと望みを語った。
本編ラストはhalyosyの「Fire◎Flower」。夏の最後を盛大に彩るようにスケールのある歌声を会場中に響かせると、それに触発されて客席からもあたたかいシンガロングが湧き上がる。夏の始まりから、夏ならではの特別なお楽しみ、夏の夜と終わりまでを丁寧に描いたセットリストは、夏の思い出や心情を詰め込んだ1冊のアルバムのようだった。

ライブTシャツに着替えた天月がMONGOL800の「小さな恋のうた」のカバーでアンコールをスタートさせ、ゲスト3人も合流して4人で「パーペキヒーロー」を歌唱すると、4人がこの日の感想を口にする。un:cは会場のあたたかい空気に感謝しながら「夏はもっとライブをやりたいと思いました。9月に夏っぽいことができてうれしかったです」と告げ、超学生は「皆さんの盛り上がりのおかげで、今日で悔いなく夏にお別れできそうです」と満足げに話す。luzはこの日披露した「ルマルソルシエ」のカバー動画とその告知投稿を事前にYouTubeとSNSにタイマー予約してしまったせいで、ライブが終わる前に終わったかのごとくそれらがアップされた旨を謝罪。予想だにしない告白に、3人も観客も肩の力が抜けたようだった。
天月が「夏に相応しくて、みんなでいい夏だったなと言い合えるようなこの曲をみんなで歌いたいと思います」と告げると、最後に全員で披露したのはジッタリン・ジンの「夏祭り」。4人でセンターステージに出ると最後のサビで銀テープも飛び出し、ポジティブなムードのなか今年の夏を締めくくった。

終演後、出口で天月からの手紙が配られた。そこには感謝の気持ちや「また次のステージで会いましょう!」という言葉が綴られているだけでなく、薄い文字で謎解きが隠されていた。それを解いてみたところ「武道館1月」という答えが導き出された。9月24日に行われた重大発表配信に先駆けて、この日集まった観客にひっそりと開催を明かしていたのだ。2009年に生配信からキャリアをスタートさせ、その翌年から歌い手としての活動を本格化し、現在に至るまで自身の活動でリスナーを笑顔にさせるべくジャンルにとらわれない楽しいことを追求してきた彼らしい、粋な計らいである。
日本武道館は、彼が2018年に初めて立った長年の夢の舞台だ。再びあの地に舞い戻る彼は、15年間で得た経験や巻き起こった気持ちをもって、さらに笑顔とアイデア溢れる感動的な空間を作り出すだろう。今年の夏に別れを告げた天月は、新しい季節へと走り出した。彼の仕掛ける“遊び”は、まだまだ落ち着いてなどいられなさそうだ。

SET LIST

01. 僕らは夏を待っていた。
02. 高嶺の花子さん
03. Miracle Planet
04. おじゃま虫
05. 無責任せんせーしょん
06. 月曜日の憂鬱
07. アイドル
08. Prison Land
09. 劣等上等
10. ルマルソルシエ
11. ロキ
12. ベテルギウス
13. コスモノート
14. アトラクトライト
15. きみだけは。
16. Fire◎Flower

ENCORE
01. 小さな恋のうた
02. パーペキヒーロー
03. 夏祭り

公演情報

DISK GARAGE公演

The opening of 15th year
天月ワンマンライブ「僕の名前を呼んで。」

2024年1月13日(土) 東京・日本武道館

  • 沖 さやこ

    取材・文

    沖 さやこ

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  • 撮影

    アンザイミキ

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