Amatsuki 15th Anniversary Tour〜Re:ALIVE〜
2024年5月6日(月・振休)Zepp Haneda(TOKYO)
※昼夜公演/レポートは昼公演で実施
今年1月に日本武道館2days公演を開催し、活動15周年のアニバーサリーイヤーの幕を開けた天月-あまつき-(以下、天月)。5月の東名阪Zeppツアー「Amatsuki 15th Anniversary Tour ~Re:ALIVE~」は、彼にとってFCツアーを除けば約7年ぶりとなるライブハウスでのワンマンライブだ。さらに今ツアーのZepp Haneda公演は、天月の活動開始日である5月6日。記念すべきタイミングで開催された同公演は、彼が磨き続けたエンターテインメント性に富んだステージと、ライブハウスならではの濃密な熱量が両立する、ライブの旨味に溢れた時間となった。
マスコットキャラクターの“正宗”が注意事項を交えたアナウンスで会場の空気をほぐすと、天月の15年間を振り返る朗読のオープニングを経て、サポートバンドとともに「タイムカプセル」でライブをスタートさせる。天月のエモーショナルかつ爽やかな歌声と、観客のシンガロングが混ざり合い、一気に初夏の青葉と青空を彷彿とさせるエネルギッシュな空気が広がった。「僕らのセカイ系戦争」ではさらに攻めのムードで会場の熱気を牽引し、「DiVE!!」では観客のコールも水しぶきのごとく清涼感をもって響く。序盤からライブハウスと相性のいいロックナンバーをたたみかけ、ポジティブな一体感を作り出した。
久々のライブハウスでのライブに「ガンガンにみんなの顔が見える」と喜びをあらわにする天月は、ダンサーを呼び込みギターを抱えて「StarMan!!!」、振り付けを交えて「恋人募集中(仮)」、1stシングル収録曲「虹の向こうへ」とピュアで煌めきに満ちたポップソングを届けた。彼のボーカルスタイルは楽曲のストーリーを伝えるだけでなく、観客一人ひとりを曲の世界に連れていくようなソフトさを帯びており、それをライブで体感すると自分がこの曲の登場人物になったかのような心地がある。楽曲に描かれた「君」と「僕」の関係性がクリアに伝わるところにも、様々なエンターテインメントで活躍してきた人生、1曲1曲の物語とひたむきに向き合う人間性が表れていた。
バンドメンバーとダンサーによるパフォーマンスを挟み、カジュアルな衣装から中世ヨーロッパの貴族風の衣装にチェンジをした天月は、「シネマ」「世界の真ん中を歩く」と立て続けにカバー曲を披露する。この日の舞台セットや演出、デザインに用いられた映画館のモチーフは、天月がこの15年間でオリジナル楽曲のみではなくこうした様々な楽曲をカバーしてこられた歴史から着想を得たものだろう。2023年末にカバー動画投稿していた「シネマ」について彼は「作品と心情が重なり過ぎているがゆえに、歌うことに折り合いがつかずなかなか形にすることができなかった」とコメントを寄せていた。これまでに自身の理想や美学、等身大の心情を自由に表現できるオリジナル曲を多数リリースしながらも、今も彼は他者の楽曲をフラットかつ純粋な観点でキャッチしている。インターネット上でカバー曲をアップする「歌い手」としてのキャリアは、彼にとって今も昔も大事な表現のひとつであることを再確認した。
15年間の集大成として開催した日本武道館公演を経て、今回のツアーは「ここから心機一転で再スタートをしたい」という思いから昔の楽曲をセットリストに多く入れたこと、観客に楽しんでもらうために選曲をしたことを明かす。「その結果、自分と向き合う楽曲が多くなって。皆さんと一緒に盛り上がって、ちょっとでも元気になれたらいいなと思っています」と言い、クリエイターの苦悩をユーモラスに昇華した「海月」を軽やかに歌い上げる。自分と向き合うという苦しい行為も、リスナーの存在があるからこそ乗り越えられるというメッセージが、痛快かつ情熱的に響いた。
「小さな恋のうた」、そして本公演前日に動画投稿をしたボーカロイド界隈では知らない人はいないであろう「メルト」とカバー曲を披露すると、天月は劣等感や自信のなさを抱えながらも15年間休まずに活動を続けてこれたのは、「楽しい」という気持ちをずっと持ち続けられていたからだと話す。「大変なこともあったし、もうちょっと器用に休めば良かったけど、続けたいな、頑張りたいなという気持ちのほうが上回っていたからここまで走ってくることができました」「いつの時代の楽曲も、みんなを支えられる、笑顔にできる曲であればいいなと思います」と告げ、本編ラストに選んだのは「トラジェクトリー」。彼の人生が刻まれた歌詞を一言一言真摯に歌う様子は、天月という物語の主人公は彼自身であること、その物語にリスナーの存在は不可欠であること、この物語はまだまだ続いていくことを言葉以上に物語っていた。
「かいしんのいちげき!」などオリジナル曲メドレーでアンコールに応えると、歓声に包まれる天月は「(Zeppはホールよりも)距離が近くて、皆さんの声が直に身体に届く」と晴れやかな表情を浮かべる。「これからもこの声が出る限り、できる限り続けていくので、是非ともお付き合いいただけたらと思っております」と意気込みを見せると、さっそく夏のファンクラブイベントの開催とTVアニメ『モブから始まる探索英雄譚』OPテーマ「Up Start」を担当することを発表。「たくさん皆さんが楽しめるように準備をしているので、余すことなく天月を楽しんでもらえると思います!」と力強く語った。
そして「僕はこれからも枯れない愛を、ずっと皆さんのそばで歌っていきたいです」と告げ、最後に「花言葉」を歌う。未来への約束を交わすようにメロディを仰ぐ姿に、あらためて彼が新しいスタートを切ったことがうかがえた。15年のキャリアを糧に新しいスタートを切った天月。彼の描く物語がこの先も色鮮やかであることを予感させる、すがすがしい佇まいだった。
SET LIST
01. タイムカプセル
02. 僕らのセカイ系戦争
03. DiVE!!
04. StarMan!!!
05. 恋人募集中(仮)
06. 虹の向こうへ
07. シネマ
08. 世界の真ん中を歩く
09. 海月
10. 小さな恋のうた
11. メルト
12. トラジェクトリー
Encore
En1.メドレー(スターライトキセキ〜かいしんのいちげき!〜コスモノート〜きみだけは。〜スターライトキセキ〜流れ星)
En2.花言葉