2023年9月19日(火) ユナイテッド・シネマ豊洲(スクリーンナンバー10)
『ASKAまさかの先行上映~ 一夜限りのWonderful World Live』と題されたライブ映像作品の先行上映会が、Blu-ray+LiveCDリリースに先駆けて、9月19日、全国のユナイテッド・シネマの25会場で行われた。東京のユナイテッド・シネマ豊洲(スクリーンナンバー10)では、上映終了後にASKAが登場して舞台挨拶をするサプライズもあった。“まさかの先行上映”に“まさかの本人登場”という“まさか”の重なる夜となったのだ。
上映会がスタートしたのは19時。ライブ映像が上映される前に、ASKAの事前収録コメント映像が流された。
「自分の作品でありながら、つい自分で身を乗り出して観てしまうシーンもあって。音や視覚だけではなく、ホールに充満した“気”さえも収められるんだなと改めて感じました」
そんな言葉どおり、映像からは歌や演奏とともに、ASKAやメンバーの気迫や情熱、客席の熱気や感動や興奮までもが伝わってきた。
上映されたライブ映像作品は5月25日の東京国際フォーラムホールA公演を収録したものである。生のライブとはまた違う、映像作品ならではの楽しみ方や魅力があることも再確認した。ライブ映像作品を映画館で観る醍醐味の1つは、ディテールまで大画面でじっくり楽しめることだろう。特にうれしいのは、ASKAやメンバーの表情や動作を至近距離から確認できることだ。ステージ上の全員がASKAの歌に集中して心を1つにして演奏していることがわかる。チームの結束力の強さも浮き彫りになるのだ。ASKAが今年3月のデイヴィッド・フォスターとの共演について、コメントする場面がある。
「共演して何がうれしかったか。デイヴィッドが『ASKAのメンバーは素晴らしいね』と言ったこと。鼻が高かったよ」とASKAが話した時のメンバーの表情にもグッときてしまった。ASKAとバンドのメンバーがいかに互いを信頼しているか、そして強い絆で結ばれているかが、映像からも確かに伝わってきた。
見どころだらけの映像作品だ。空、海、山、草原、花などの地球の美しい自然を捉えた映像に続いて、ASKAのフェイクによる始まりのシーンの見事さにも息を飲んだ。ASKAの全身から歌が立ち上がり、会場内に充満していく。ASKAとバンドのメンバーとが一体となって、歌を奏でている。「地球という名の都」「C-46」「青い海になる」などなど、ASKAの歌い手としての現在の表現力の豊かさを堪能。「太陽と埃の中で」や「モーニングムーン」などでは、観客の熱気がスクリーン越しにも確かに伝わってきた。映画館であるにも関わらず、拍手したり、こぶしをあげたりして盛り上がる観客もいた。スクリーンに集中していると、ついここが映画館であることを忘れてしまいそうだ。宮﨑薫がゲストボーカルとして登場し、親子の音楽のリレーが実現する場面もある。「On Your Mark」では生で観た時と同様の感動やカタルシスが訪れる。
これはコンサートという名前の作品でもあるだろう。緩急があり、起承転結があり、ストーリーがある。これは愛と勇気と希望の物語だ。ツアータイトルに“Wonderful world”という言葉があるように、この世界の素晴らしさが描かれている。と同時に、この世界の不条理さや不可解さも明らかになる。ASKAの歌声を聴いていると、挑むことのかけがえのなさ、前に進んでいくことの尊さを実感できる。
上映終了と同時にASKAがスクリーン前のステージに登場。その瞬間に悲鳴にも似た大きな歓声と拍手が起こった。
「幕張でオープニングの舞台挨拶をし、その後、豊洲に移動して楽屋で聴いていました。今回の試みは計画性がありません。瞬間瞬間におもしろそうだと思ったことをやってみたら、そこで違う景色が見えてきて、じゃあ次はこれをやろうというになり、そこでまた違う景色が見えてきたら、次にやりたいことを出てくるのが僕の活動スタイルです。コンサートはコンサートで、映画は映画でありだなと思いました」とASKA。
その言葉どおり、ライブ映像作品を映画館で鑑賞することは特別な体験となった。9月27日リリースのBlu-ray+LiveCDもさまざまな楽しみ方ができる作品となるだろう。部屋でこぶしを挙げて一緒に大声で歌うもよし、室内を真っ暗にしてじっくり鑑賞するもよし。ツアーを観た人、未見の人、どちらにとっても、多くの感動や発見をもたらしてくれるのは間違いないだろう。
舞台挨拶の最後に、「ライブをいっぱいやるから。また会いましょう」とASKAがコメントすると、大きな拍手とともに「ありがとう!」という声がたくさんかかった。まさかの一夜限りの上映。まさかの本人登場。そして、ステージの中にも、感動や熱狂ともにたくさんのサプライズが詰まっていた。どうやらASKAのいるところでは“まさか”の出現率が高くなっていくようだ。2024年もたくさんの“まさか”を楽しめるのは間違いないだろう。