怪唱×怪談 ホラーライブ『おどろ』
2023年8月20日(日) 渋谷PLEASURE PLEASURE
【歌い手】ピコ / +α/あるふぁきゅん。 / 神谷玲 / 赤飯(オメでたい頭でなにより)
【語り手】ありがとうぁみ / 國澤一誠 / ごまだんご / 安井摩耶 (50音順)
赤ピコとして東京、愛知、大阪と3都市をめぐるワンマンライブツアー<赤ピコ東名阪ツアー2023>を開催したピコ。そのツアーの幕開けとなった8月20日、東京・渋谷PLEASURE PLEASUREの公演の夜公演のみ、ピコが念願の<ピコ 怪唱×怪談 ホラーライブ『おどろ』>と題したホラーライブなるものを初開催!ピコ、+α/あるふぁきゅん。、神谷玲、赤飯の歌い手チームと、怪談師のありがとうぁみ、國澤一誠、ごまだんご、さらにそこにゲストの安井摩耶も加わった語り手チーム。このキャストが勢揃いして、いったいどんなホラーなライブを繰り広げていったのか。魔除けのお札で封印された扉。その扉の奥で本当に起こった日本で一番怖い夜。その禁断の真夏の夜の悪夢を、実録レポート……。
会場に入ると、そこは昼公演とは雰囲気が激変。お香や線香の匂いが漂っている場内。壁、扉のあちこちには魔除けのお札がこれでもかと貼られていて、ピコーツチケットの特典引換を告げる案内状はビリビリに破られ、血糊がべったりとついている。さらに、本公演のチケットを見ると、通常は記載されていない「本公演後に起きた心霊現象につきましては、一切責任を負いません」という注意喚起の文言まで加わっていた! 始まる前からムード満点、恐ろしすぎる…。恐怖心と戦いながら、扉をそっと開ける。BGMで薄っすらと聴こえてくるホラー、オカルト映画や心霊現象、超常現象を扱ったTV番組の音楽が、ひたひたと恐怖心を煽っていく。そして、ステージセットに目を向けてみると、昼公演のバンドセットはすべて消え失せている。黒い布をバックに、舞台上にはシダレヤナギ、灯篭、竹の縁台。上手にはめくり台があり、そこには毛筆で「おどろ」という演目が書かれている。お化け屋敷を思わせるような演出に、お客さんはペンラも封印。華やいだ雰囲気は一切なしで、静かに着席して開演を待っている。空いている席には「人ならざる者が着席してるかも」というピコの昼公演の言葉が脳裏をよぎる…。
定刻、BGMが止まり、照明が真っ暗になったかと思うと場内はシーンと静まり返り、空調の音だけが響く会場の緊張感がいっきに高まる。ステージには白装束の幽霊になった安井摩耶がしずしず、しずしずと現れる。これが、本当に怖い。うろたえること数秒。めくり台をゆっくりとめくるとそこに「歌い手 ピコ」の文字があり、これを幽霊がいまにも消え入りそうな声で読み上げる。そうして、和装姿のピコがオンステージ。歌い出したのは「カウントダウン」だった。ドロドロとした情念を振りまくような歌に、客席はNOペンラ、NO歓声状態でフリーズ。そうして再び幽霊姿の安井が登壇。「音楽と怪談はこの世とあの世をつなぐもの」と震えるような声でゆっくりと告げると、本日の出演者である歌い手チームのピコ、赤飯、神谷玲、+α/あるふぁきゅん。、怪談師の語り手チームのありがとうぁみ、國澤一誠、ごまだんごがステージに勢揃い。それぞれ自己紹介をしたあと、1人だけステージに残ったピコが「ピコからみなさんの安全祈願を込めて一発入魂!」といって「拝啓ドッペルゲンガー」を勢いよく投げ込む。ピコとともに観客は全身をフル稼働させ、元気に頭を振りまくって自分のなかの恐怖心を吹き飛ばしていく。歌い手チームがステージ上の竹の縁台に仲良く揃って座るなか、次は怪談師のありがとうぁみによる「非常階段の男」の語りが始まった。
「30代の男性のお話なんですけどね」と、着物姿で誰かにそっと語りかけるようにマンションの非常階段で起きた怪談を話し出す。ライトや効果音はなく、語りのみでじわりじわりと恐怖感を“想像”させていくところがすごい。聴き終えた歌い手チームは、まだ怪談の内容を引きずる中、次に歌う神谷玲にみんなで「がんばれ!」とエールを送り、ステージへと送り出す。赤飯が「大丈夫!」と肩に手を置いて励ます様子を見た+α/あるふぁきゅん。がすかさず「え、ボーイズラブ?」といって場内がホッと和んだところで、神谷が2023年上半期大人気だった「酔いどれ知らず」を浴衣に下駄という出で立ちで、大熱唱。「本日はKOOLさんの代役でやってきました」と伝え、次に歌う「ヴァニタス」をコールすると、客席から“キャー!”という歓声が上がる。イントロから怪しい不協和音が場内に忍び寄る。色気のある低音でオペラのようなBメロをなぞり、重低音がバーストするなかの“ヴァニタス”の連呼。圧巻のステージに「怪談を聴いたあとの“ヴァニタス”、カッコいい!」と思わずピコが叫ぶ。このあと、めくり係の幽霊が出てきて、次の演目である「赤飯」を読み上げる。「怖い曲を歌えといわれたんで、この曲、人前で歌ったことがないんだけど」と前置きをして「ヴァニタス」に続いて、ハチの「結ンデ開イテ羅刹ト骸」を歌唱! とたんにリリックから闇感がたっぷり溢れ出す。狂気じみた雰囲気の底知れぬ不安感を、他人事として無感情で歌っていく姿はさすが! これで観客をグッと曲の世界に引き寄せ、怖さをそそりながらも、“結局皆様他人事”のコール&レスポンスパートはバッチリきめてみせた。
そうして、次は芸人から怪談師になった國澤一誠が登壇。電車のなかの空いている席にまつわる「その電車には乗ってはいけない」の怪談を披露。この怪談を受けて、ピコが「電車のなかでずっと空いてる席があったら座らないようにしましょう」と伝え、再び赤飯のステージへ。「お盆といえば先祖があの世から戻ってくるんだっけ? ということで、おばけつながりでハロウィンの曲をやります」といって歌いだしたのは、ハチの「Mrs.Pumpkinの滑稽な夢」。ダークファンタジーなこの曲を、楽しそうにステップを踏みながら歌唱していたかと思ったら、曲中、ステージという棺を飛び出し、赤飯はいきなり客席へと降臨。フロアの通路を闊歩しながら、オーディエンスに解けない楽しい魔法をかけていった。
続いては、怪談系のYouTuberとして人気のごまだんごが登壇。歌い手チームが側で聴き守るなか、「僕の視聴者さんから聞いた話なんですけどね」といって「Siri」の怪談をスマホの画面を開いて読み上げる。怪談のなかにレコーディングスタジオが出てきて、歌い手チームはごまだんごが話し終えたあと、そこに食いつきまくる。このとき、歌い手のなかでも人一倍興奮しまくっていたピコは「俺、ごまだんごさん、大好きなんですよ! 入院してた頃の唯一の楽しみがYouTubeで。凄い見てました。親も大好きなんです」と告白。その告白を受け、ごまだんごが「それでは、私が広島に母と住んでるときに、実際に体験した話を」といって「三角折り」というまさに実録の怪談ネタをプレゼント。そうして、このあとは怪談のなかに出てきたトイレットペーパーを三角折りにするかしないかという話題で、歌い手チームが客席を巻き込んで盛り上がり、続いてはなんと、語り手チームを呼び込み、本物がいる前で赤飯が語り手となり「夢から付いてきた」という怪談を語り出した。自身が体験した話というだけあって、感情がこもった語り口調は本格的。さらにこのあとは、ピコも語り手となり「僕の実体験です」といって「泣き声」を披露するという予想外のサプライズで、観客を違う意味で驚かせていった。語り手チームはそれぞれ2人のトークを絶賛。ごまだんごから「2人ともめっちゃおもしろかったです」と褒められると、ピコは喜びをあらわにしながら「俺、この話投稿しようかな」と大はしゃぎ。
そうして、このあとは+α/あるふぁきゅん。のライブへ。血糊がついた白いワンピースに裸足。髪の毛で顔の全面を隠し、片手にビデオテープを持った姿は“貞子”を思わせる。そうして、自身のアルバム『#わたし以外、全員、幸せそうに見える。』からジャジーなソウルにのせて“もういいかい まだだよ”と歌う「かくれんぼ」をアクト。髪の毛を揺らしながら“シャバダバダー”のコーラスでじわじわと熱をあげ、“この命くれてやる”をナイフのように言葉を突き刺していく歌声で、観客の胸をグサリ。そうして、エンジェリックボイスからソウルフルな熱唱まで、彼女の歌唱力と変幻自在の歌声すべて使い、迫力満点のパフォーマンスで「再生」を観客にぶちこんでいった。
続いて登壇したのは、語り手のありがとうぁみ。「外で待ってて」という怪談を動きを交えながら話し、聴き手の想像力をさらにかき立てて怖さを倍増させていったあとは、この日の語り手のトリとして國澤一誠が登場。「僕が一番鳥肌が立った話を」といって、とっておきの怖い話「プロジェクター」で怪談の最後を締めくくった。
そうして、この後はこの日のキャスト全員がステージに集結。ピコに本公演の感想を聞かれ、語り手チームはごまだんごが「お客さんがすごく真剣に聴いて下さったので話しやすかったです」、ありがとうぁみが「楽しすぎて一生懸命しゃべりました」、國澤一誠が「みんな優しくて楽しめました」とそれぞれ返答。歌い手チームは赤飯が「プロの方の前でガチで話して褒めてもらえて嬉しかった! 新ネタ考えます」、神谷玲は「怪談を聞いた後に歌うというのが新鮮でした」、+α/あるふぁきゅん。は、前々からピコから「怖いイベントをやりたい」と相談されていたことを伝えた上で「やるときは声をかけて下さいといってたら、本当に声をかけてくれました。ありがとう」と話した。また、めくり係として登場していた安井摩耶は「ホラーとか苦手なので怪談を聞いてるときは全身鳥肌でした。今日帰ったら全身にお清めの塩を揉み込みます」と伝えたところで、最後にピコが「念願のホラーナイト、感無量です」と感謝の言葉を述べ、頭を下げた。そうして、みんなでお化けのポーズで記念写真を撮り、歌い手チーム全員でピコの最新曲「人間賛歌」を大合唱して、この日の演目はフィニッシュ。ピコが「第2回やるーっ!!」という言葉を残して、ホラーライブは幕を閉じた。電車の空席、トイレットペーパーの三角折りなど、来場者は終演後も様々な恐怖の余韻を感じながらそれぞれ帰途についた。
あー、怖かった……。
でも、こんなイベント、いままで観たことがない。2回目、大いに期待して待っていたい。
あれ、記念写真に変なものが写り込んでる??? まさか……。
SET LIST
OP ACT.カウントダウン(ピコ)
怪唱01. 拝啓ドッペルゲンガー(ピコ)
怪談01.「非常階段の男」(ありがとうぁみ)
怪唱02. 酔いどれ知らず(神谷玲)
怪唱03.ヴァニタス(神谷玲)
怪唱04. 結ンデ開イテ羅刹ト骸(赤飯)
怪談02.「その電車には乗ってはいけない」(國澤一誠)
怪唱05. Mrs.Pumpkinの滑稽な夢(赤飯)
怪談03.「Siri」(ごまだんご)
怪談04.「三角折り」(ごまだんご)
怪談05.「夢から付いてきた」(赤飯)
怪談06.「泣き声」(ピコ)
怪唱06. かくれんぼ( +α/あるふぁきゅん。)
怪唱07. 再生( +α/あるふぁきゅん。)
怪談07.「外で待ってて」(ありがとうぁみ)
怪談08.「プロジェクター」(國澤一誠)
怪唱08. 人間讃歌(歌い手ゲスト全員)