DUSTCELL LIVE 2022「PREPARATION」
2022年11月17日(木) TOKYO DOME CITY HALL
DUSTCELLが過去最高のキャパシティとなったワンマンでのホール公演『DUSTCELL LIVE 2022「PREPARATION」』をTOKYO DOME CITY HALLで行なった。
オープニングは、DUSTCELLではおなじみとなった透過LEDモニター越しに、メンバーであるEMA(Vo.)とMisumi(Composer)のシルエットがあらわれ、ユニットのロゴが浮かび上がった。
1曲目は、DUSTCELLにとって思い入れの深い初期チューン「CULT」からスタート。多重人格を題材とした映画『ファイト・クラブ』にインスパイアされ制作。投稿後わずか3週間で100万再生を突破したキラーチューンだ。バキバキのトラックがホール空間に響き渡る。そう、DUSTCELLのユニークさとはクラブカルチャーやK-POP、R&B、ヒップホップを経由したJ-POPであることだ。ゆえに尖ったエッジーさを持つサウンド、言葉がリスナーの胸を打つ。ユニット名DUSTCELLが、DUST(ゴミ、埃)とCELL(細胞)を合わせた造語であることも世界観の創出へとつながるキーワードだ。アートワークでの退廃的なデストピア感、歌詞における疎外感や挫折を描いたリリックは、誰もが心の奥底に抱えている行き場のない闇を受け止めてくれる存在となるのだ。
本日の第一声はEMAによる「いいねえ、DUSTCELL来たぞ!!!」とシャウト。
最新ミニアルバム『Hypnotize』からドープな空気感漂わせながらもサビで突き抜けるポップセンスが垣間見れる「不成者」、そしてMisumiのソロ曲である「オルターエゴ」に湧くオーディエンス。2019年に活動開始。たった数年で、作品リリースとライブを重ねてきたことで、こんなにも多くのオーディエンスによる信頼を勝ち取ってきたことが感慨深い。
続く、キャッチーかつキュートなトラックメイクが印象的な「PAIN」、メロウにたゆたうように歌う「bibouroku」、キラキラと90’sライクかつメロディアスな展開が心を鷲掴みする「izqnqi」、そして静かなる内に秘めた心情を歌い上げる7曲目「albino」まで、前半は初のバンド編成でアッパーな演奏を堪能させてくれた新境地なライブパフォーマンス。オーディエンスは楽曲の世界観ごとにペンライトのカラーをチェンジしながら、参加型として一体感増していくフロア。
「今日はバンドメンバーありということで、これまでのライブと変わったと思うんですけど、どうですか?」と観客に語りかけるEMA。Misumiはホール空間を見渡し「新鮮だね。めっちゃ上に人がいる!」と、テンション高い様子が伝わってきた。
そして、バンドメンバーが一旦退場。「火焔」からは、駆け抜けるようにEMAとMisumiによる2人で扇情的にパフォーマンスするパートへ。サビでエモーショナルにスパークする「DERO」、跳ねるビートがアッパーな「堕落生活」、シリアスに攻めまくる「Mad Hatter」など、トラップやブレイクビーツなどダンサブルなビートの効いた展開を楽しませてくれる。ここで15曲目にはEMAのソロ曲である「NOT CRYING」を披露。シャボン玉がフロアに解き放たれ、幻想的な雰囲気にオーディエンスが湧く。サウンドに溶け合うように、照明に照らされた瞬きが美しい。
ここで、バンドメンバーがステージへ戻ってきた。世界最大のストリーミングサービスSpotifyでも人気の「足りない」、そして「蜜蜂」によって、R&Bライクな耳心地の良いドラマティックなナンバーで濃密な高揚感へと空気が変わっていくフロア。Misumiによるシャウトがオーディエンスを煽る「漂泊者」、そしてラストへ向けてアッパーな「ORIGINAL」、ボカロ文化圏から生み出された作品の魅力をDUSTCELLというヒューマンなフィルターを介在しながら進化させたダークなポップチューン「アネモネ」、トドメは疾走する跳ねるビートが気持ちのいい解放感でいっぱいのギターチューン「STIGMA」で一体感にあふれたTOKYO DOME CITY HALL。
DUSTCELLらしさである、ポジティビティ感じるサウンドに内省的に自分と向き合ったメッセージが重なるのがエモい。中毒性高いフレーズの応酬、今にも泣き出しそうなEMAの歌声に、DUSTCELLならではの次世代ポップチューンの快楽ポイントの高さを感じた一夜だ。
鳴り止まないアンコール。オーディエンスの熱意に応え、ビートの効いた展開で盛り上がる「命の行方」、ポエトリーなテイストで感情をアップリフトする「独白」をプレイ。
この日のために新曲を用意してきたことを明かすEMA。そして、今日のライブや楽曲に込めた心情を語りはじめた。「みんなが『DUSTCELLの曲に救われてる』と言ってくれてるの、僕たち知ってる。1人ひとりの人生をがんばってここに集まってくれたんだと思うと、すごいやる気が出るし、いつもライブでみんなからエネルギーをもらってます。生きていくのって、つらいことばっかりじゃん。でもこうやってライブという場で歌わせていただくと『あ〜、音楽やっててよかったなあ』って。DUSTCELLをやっていてよかったなって心から思います」。
こうしてラストには、発売が未定だというDUSTCELL新境地となる新曲「過去の蜃気楼」を届け、大団円を迎えるステージ。その後、会場モニターでは、緊急発表としてファンクラブの開設、2ndミニアルバム発売、そして全国をめぐるライブツアーの開催が発表された。