佐野元春、3月13日(土)日本武道館をレポート!

ライブレポート | 2021.03.26 19:30

佐野元春 & THE COYOTE GRAND ROCKESTRA「ヤァ! 40年目の武道館」
2021年3月13日(土)東京・日本武道館

THE COYOTE GRAND ROCKESTRA
佐野元春:Guitar, Vocal/小松シゲル:Drums/深沼元昭, 藤田顕:Guitars/高桑圭:Bass/渡辺シュンスケ:Keys
featuring:Dr.kyOn:Piano, Organ/大井'スパム'洋輔:Percussions/山本拓夫、西村浩二:Brass Section

佐野元春、デビュー40周年を記念しての、東阪コンサートの東京編・3月13日(土)日本武道館(大阪編は4月4日(土)大阪城ホール)。この日は、彼の65歳の誕生日である。
バンドは、佐野元春とTHE COYOTE BANDの7人に、THE HOBO KING BANDのDr.kyOn(キーボード等)、山本拓夫(サックス等)、西村浩二(トランペット)が加わった10人編成の「佐野元春&THE COYOTE GRAND ROCKESTRA」。一席飛ばしで収容人数は本来のキャパの半分以下、マスク必須で歓声NG等、新型コロナウィルス感染症対策ガイドラインに則って開催された。
この記念すべき日に立ち会ったオーディエンスは、声を出せない代わりに拍手や手拍子で大きなリアクションを返しながら、3時間近くのステージを楽しんだ。

で。なんせ大阪がまだなので、ネタバレ自粛で具体的なセットリストには触れられないのだが、この日のこの場で、強く感じたこと。
デビューから40周年のライブだし、緊急事態宣言中に集まっている時点で言うまでもないが、武道館を埋めているのは熱心な長年のファンばかりだし、過去の名曲が盛り上がるのは、わかる。というか、当然そうなる。
「ちょっとライトを明るくして」と客席を明るくして見渡し、「今日、みなさんのことを見ていると、80年代から僕の音楽を聴いてくれている人たちが、たくさんいるような気がします。ということは、僕が40周年ですから、みんなもプラス40。ちょっと80年代に戻ろう」という言葉から突入した、後半のゾーン。
「佐野元春の代表曲」であることを超えて「日本のロックのスタンダード」となっている名曲の数々を、このすばらしいメンバーによる演奏で、生で、日本武道館で聴ける、というのは、本当に幸福だったし、すばらしい体験だった。アリーナも、1階席も、2階席も、死ぬほど盛り上がった。
が、そこだけではない。前半や中盤で披露された、「ここ5年の曲」や「ここ2年の曲」や「去年リリースされたばかりの曲」や「いちばん新しい曲」が、すべてライブのハイライトになっていく、それが今の佐野元春のすごさだ。ありえないと思う、40年もキャリアがあるアーティストで、こういうことって。
俺だけかな、最近の曲、新しい曲が、いちいちこんなにうれしいの。いや、まわりもだ。そのたびにみんな熱狂しているのが、身体の動きやハンドクラップの大きさから伝わってくる。
それらの中の、とある曲を、佐野元春が歌い終えた時、僕の前の席のおじさんふたりは、顔を見合わせて、頷き合っていた。すんごい気持ちがわかった。

と、歓喜しながら観ていて、途中で気がついた。
今から5年前、35周年の東京国際フォーラム ホールAの時は、もうちょっと、「歴史を振り返る」「みんなでお祝いする」みたいなムードが強かったように思う。
そのレポはこちら。
佐野元春 & THE COYOTE GRAND ROCKESTRA「35周年アニバーサリーツアー」FINAL。35曲、圧巻のロックショーをレポート!
で。この40周年ライブは、そんな祝祭の場であることに加えて、この5年の間に佐野元春が、時代に、世の中に、あるいは自分自身に、いかに向き合ってきたか、その結果、どこまで自らを更新したかを、ファンが集まって確かめる、という場にもなっている。そういうふうに感じた。
僕は2015年の『BLOOD MOON』から、佐野元春のギアが何度目かのトップに入ったと思っているのだが(※「僕は」です。人によって解釈は違うと思います)、35周年ライブの時は、そのアルバム、もう出てたよな。その中の曲もやっていたし。
じゃあその後、さらにギアが上がってる、ってことか。マジか。今日で65歳だよ、この人。とんでもねえな。でもそうだ。実際、『BLOOD MOON』にも、2017年の『MANIJU』にも、それ以降にデジタル・リリースされた曲にも、生で、この演奏で聴きたかったけど、今日はやらなかった曲、まだまだいっぱいあるし。
という事実に、改めて驚いたりもした。で、そのことを、とてもうれしく感じた。

なお、先日、詩人の吉増剛造と会って話をしたこと、テレビのドキュメンタリーとして放送されること、神奈川県の海で近い場所で撮影が行われたこと、彼の愛犬ゾーイくんも出演していることが、この日のMCで告げられた。
3月27日(土)22:00からのNHK Eテレ『SWITCHインタビュー 達人達』のようです。楽しみ。

  • 兵庫慎司

    取材・文

    兵庫慎司

    • ツイッター
  • 撮影

    アライテツヤ

SHARE

関連記事

最新記事

もっと見る