中村一義 BAND LIVE 2019『十世界』
2019年12月20日(金) Veats Shibuya
2019年12月20日(金)。ニュー・アルバム『十』のリリースを、2020年2月5日に控えた中村一義が、2019年唯一のバンド・セットでのワンマンライブ「中村一義 BAND LIVE 2019 『十世界』」を行った。ただし、この日のMCで本人が「アルバム、今日やっと完成しました!」と言っていたように、『十』のお披露目ライブという位置付けではなく、ベスト・アルバム的な選曲の中で、『十』収録の2曲を初めてバンドで披露する、というセットリストである。
「ライブで一回もやったことない曲からスタートしますよ!」という宣言で始まったのは、100s時代のサード・アルバムである、10年前にリリースされた『世界のフラワーロード』の収録曲「世界の私から」。次はその1枚前の『ALL!!!!!!』から「そうさ世界は」。続く3曲目で早くもデビュー・シングル「犬と猫」が投下され、フロア、「♪どーう?」の大合唱になる。
「あのねえ、クタクタなんですよ(笑)。今日完成したんです、私、中村一義の10枚目のアルバム。ずっとレコーディングしてまして」
という言葉で始まった最初のMCで、2×5=10ということで2月5日にリリースすること、今日のこのライブはニコ生の生配信が入っていること、『十』はファースト・アルバムの『金字塔』と同じようにすべてひとりで作ったこと、などを伝える。
そこから、「威風堂々(Part2)」「素晴らしき世界」「君ノ声」という100s以前の3曲を、今自分がバンドと一緒に人前に立っていることを確かめるかのように、ていねいに、真摯に歌っていく。次の、100s結成のきっかけになった「キャノンボール」では、再び大きなシンガロングがVeats Shibuyaを包む。
最高潮。まだ7曲目なのに本編ラストみたいじゃないか。大丈夫なのか、このあと。とか思っていたら、歌い終わるや否や、「もう汗だく、冬なのに!前半戦終了!」といったんステージを下りる。で、しばしブレイクをとってから、後半戦はギター三井律郎・キーボード高野勲との3人編成によるアコースティック・コーナーからスタート。なるほど、そういう構成か、と、納得した。
そのアコースティック・コーナーで「なかなかライブでやらない、懐かしい曲たちを」と披露された「笑顔」「晴れたり、曇ったり」「ここにいる」の3曲のうち、「笑顔」の歌が高域にさしかるところで、何度か声が出なくなる。オーディエンス、それをカバーするかのように、曲後半の「♪えーがお えーがーおー」でシンガロング。曲終わりで本人、「ごめんね、『笑顔』って曲なのに、泣いちゃって」と、詫びる。
現在の自分を支えるバンド「海賊」のギタリストである岡本洋平Hermann H.& The Pacemakers)がガンを克服したこと、同じくメンバーだったヨースケ@HOMEが6月に亡くなったことについて、次のMCで触れた(「笑顔」で泣いてしまったのは彼のことを思い出したから、とのこと)。そして、自身も口腔カンジダ症を患い、悪化したら歌うことができなくなるかもしれない状態だったこと、音楽をやめてしまおうかとも考えたが、こうして戻って来れたことを明かす。