Pop Step Zepp Tour 2019
2019年7月22日(月)23日(火) 8月13日(火)14日(水)
Zepp Tokyo
有安杏果のライブハウスツアー「Pop Step Zepp Tour 2019」の全日程が終了した。2019年3月に東京と大阪の2カ所のみで開催された「サクライブ2019 〜Another story〜」でソロのアーティストとしての新たな一歩を踏み出した彼女。ツアータイトルにもあるように、ホップ・ステップの2歩目にあたる本ツアーでは、全国ライブハウスツアーへと規模を拡大させると同時に、アーティストとしての可能性の大きさを存分に感じさせてくれる公演となっていた。
まず、セットリスト。各地2デイズ公演が多かったため、両日ともに足を運ぶ観客のことを考えて、2パターンが準備されていた(※本記事においては以降、A / Bパターンと表記)。それぞれ、オープニングは全く違う楽曲を用意し、新曲を含めて5曲ほどが異なる構成となっていた。全体としてはポップな楽曲が基調となっているが、前者は歌声をじっくりと聴かせるバラードが多く、後者は自然と体が揺れてしまうようなグルーヴ感の強いサウンドが多かった印象。アンコールではそれぞれ曲順が違う上に、本編とはアレンジも変えた、約20分に及ぶ「逆再生メドレー」もあった。
一例を挙げると、Aパターンでは4ビートのジャズだった「遠吠え」がタンゴに変わっており、速いパセージのビバップ「愛されたくて」がロックンロールに、ピアノバラード「虹む涙」はラバーズに、アップテンポのポップナンバー「TRAVEL FANTASISTA」は観客と一緒にタオルをぐるぐる回すスカに、ポップロック「ヒカリの声」はバラードから入り、全員でシンガロンするミュージカル調のスイングジャズへと展開。Bパターンでは、エレピの弾き語りだった「小さな勇気」がセカンドラインとなり、7月の東京公演で「夏といえばこの曲が一番最初に思い浮かびました」と言ってカバーしたフジファブリック「若者のすべて」がサンバに、ピアノバラード「色えんぴつ」がR&Bナンバーヘとなっていた。ビートを含めたアレンジや歌い方を変えることで、それぞれの楽曲に対して、新たな捉え方もできるようになるという発見があったし、1曲単位でもこれだけのポテンシャルが潜んでることを教えてもくれた。また、既存曲だけではなく、初披露の新曲たちも2つのアレンジが施されていたことに驚きを感じた。
本ツアーに向けて、有安はなんと計4曲の新曲を製作した。Aパターンで披露された「Runaway」はグランドピアノが弾むポップロックナンバー。有安はエレキギターをかき鳴らしながら熱唱した。
バラード曲の「ナツオモイ」はアコギを弾きながら胸を締め付けるような切なさで歌い上げ、Bパターンではオントレンドなアーバンソウル〜ファンクナンバー「LAST SCENE」と、間奏で突如ジャズピアノから始まるソロ回しが展開する都会のナイトミュージック的なシティポップ「Do you know」が聞けた。
「恋をテーマに、出会いと別れのシーンを書いた」と語った前者では大人の表情も垣間見せ、後者では待望のダンスを解禁。くるくると周り、鮮やかなステップを踏み、軽やかにジャンプする。7月のMCでは息を切らしながら「久しぶりに歌いながら踊ってみたら……こんな感じです」と苦笑いしていたが、幼い頃からもっとも慣れ親しんできたであろうダンスは伸びやかで自由な表現力があり、どこまででも飛んでいきそうな弾力性も感じた。本編最後の「Catch up」の後半にも少しだけ舞ってみせていたが、彼女のダンスパフォーマンスをもっと見たいと感じた人は多かったのではないかと思う。