BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark
2019年7月12日@埼玉・メットライフドーム
BUMP OF CHICKENが7月10日にリリースした約3年5カ月振りのニューアルバム『aurora arc』。この表題を付けたあとにメンバー4人で実際にカナダにあるオーロラの街“イエローナイフ”に足を運んだという。新作を通して聴いた際、胸を突き上げるような高揚感を感じた。けれど、ライヴはその何十倍とも言えるポジティヴなエネルギーを放ち、ここに集まった観客を至福の境地に誘っていた。奇跡のオーロラをみんなで分かち合うような、至上の音楽体験がここにはあった。
アルバム『aurora arc』を引っ提げた全国ツアー『BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark』は、バンド初となるメットライフドーム2デイズ(合計7万2千人を動員)を皮切りにスタート。メンバーも口にしていたが、この日は令和になって初ライヴであり、メットライフドームでやること自体も初、そして記念すべきツアー初日。初めて尽くしとなったものの、ライヴ終盤に直井由文(Ba)が“初日は緊張でガタガタなんだけど、もう家だもん、我が家みたい”とこぼすほどアットホームな雰囲気があり、もっと言えば会場が多幸感に満ちあふれていた。
煌びやかなイントロに吸い込まれそうになった「Aurora」ではMVを手掛けた林 響太朗監督によるオイルアートを使用し、柔らかく包み込むようなサウンドと非常にマッチしており、非日常の幻想空間へと連れて行かれるような感覚に陥った。
また、新作の中でも個人的にもフェイバリットソングのひとつである牧歌的なアコギを用いた「月虹」は、曲が始まった瞬間に知り合い同士でハイタッチする様子が目に飛び込み、その光景を見てこちらも幸せな気持ちになってしまった。音源で何度も聴いてる楽曲にもかかわらず、実際の生演奏に触れると、全身の血が沸き立つような勇壮なメロディーラインに興奮を抑えられなかった。さらに「新世界」においてはロッテ『ベイビーアイラブユーだぜ』のCMソングから派生したMVのリアレンジバージョンで披露されたりと、ハッとする場面も多々あり、終始目が離せない。
ショウ自体は過去曲を交えつつ、新作の楽曲群も好リアクションで観客に受け入れられ、昔から追いかけ続けている、あるいは最近聴き始めたばかりという人をも平等に巻き込んでいくサウンドメイキングと演出効果に唸らざるを得なかった。
オーロラがいつか消えてしまうように、音楽も時間の芸術故に必ず終わりがやって来る。だが、その中で忘れられない体験を人生という名の宝箱に何個収められるだろうか。感動、圧倒、肯定感、非現実、ドラマティックなど、言葉にすると陳腐に聞こえてしまうかもしれないが、短時間にこれだけさまざまなエモーションに駆り立てられる場面はそうそうないだろう。その意味でも一曲一曲が尊い記憶として焼き付けられる濃厚なライヴであった。
今回のツアー初日を観終えて、目と心と身体に残像がずっと棲み着き、思い返すたびにニヤニヤしてしまう。言うまでもなく、ツアーは始まったばかりである。これから楽曲がどんなふうに成長を遂げ、次に観るときはどんな体験が待っているのだろうか。それを夢想するだけでワクワクが止まらない。ぜひともライヴ会場に足を運んで、BUMP OF CHICKENが作り上げる未知の音楽体験に触れてほしいものだ。