2003年にFUZZY CONTROLのドラマーとしてデビューし、DREAMS COME TRUE、稲葉浩志、吉川晃司、DAITA、スガ シカオ、山本彩、大黒摩季など、数多くのアーティストのサポートも務めるSATOKO。その一方で、絵画や執筆でも才能を発揮しており、2013年には書籍『たった、少しの覚悟で冒険するドラゴン』を光文社より出版。多彩な才能をふりまく彼女が、『11月を守る本』を発表した。12曲が収録されたCDと、絵と物語が楽しめる絵本が一体化したこの作品は、彼女のこれまでの創作活動の集大成とも言えるものだろう。11月には、この作品をひっさげたライブも予定しているSATOKOに、作品に込めた想いを聞いた。
音楽も絵も詩も、すべて一緒な感覚で生まれてきます
──『11月を守る本』は絵本とCDが一緒になっている作品ですが、こういう作品を作ろうと思ったきっかけは?
FUZZY CONTROLが活動休止になった時に、DREAMS COME TRUEのマサさん(中村正人)が“SATOKOは絵本を描いたり、個展をやったりしているんだから、音楽絵本みたいなモノを作ったらいいよ”って、CDが封入された絵本をプレゼントしてくれたんですよ。それで、なるほど、こういうのもアリかなって(笑)。そもそもソロアルバムを作りたいと思ってて。同時に、本もまた出したいなって思ってはいたんで、一緒にやるのもいいなと。
──音楽と絵というのは、自分の中でリンクするものなんですか?
そうですね。自分の中に“ぐわぁ~”っとあるものが外に出てくるという意味では一緒です。絵を描くのも、メロディを作るのも、詩を書くのも、すべて一緒な気がします。自分が生きているとそうなってしまうというか……そもそも、好きでやっているだけだし、あまり分けて考えてはいませんね。音楽も絵も詩も続けているうちに一緒になっちゃった気がします(笑)。
──ソロアルバムを作りたいと思っていたということですが、以前から構想があったんですか?
すでに出来ていた曲があったので、それをいつか形にして出したいなと思っていたんです。それに、これまでにいろいろな人と一緒に演奏してきて、この人は天才だなって思う人がたくさんいるんですよね。そういう人たちと一緒にやったら面白いだろうなって、漠然と考えていて。例えば、UVERworldのTAKUYA∞君は、歌声も素敵なんですけど、話している声も良いんですよ。それで、今回は朗読で参加してもらったんです。ほかにも、こういうビートの曲だったら、DAITAさんはきっとこういう感じのギタープレイをしてくれるはずって思っていたし、KenKenやROLLYさん、浦嶋りんこさんはティム・バートンの映画に出てくるキャラクターのような人たちなので、彼らと一緒にハロウィンの曲をやったら楽しいだろうなとか(笑)。
──では、そういうソロアルバムの構想が発展していって音楽絵本という形になっていったわけですね。
そうなんです。勝手に集約されていった感じなんですよ……最初は6曲くらいの作品にしようと思っていたんですけど、気がついたら12曲になっていたし(笑)。(大黒)摩季ねえさんとか、“聞いたわよ! あなた、レコーディングしているんでしょ? 私、○日だったらできるから”って連絡をくれて(笑)。それで急遽、摩季ねえさんの曲を作ったりしていたら、曲がどんどん増えていって。だったら12ヵ月それぞれをテーマにした曲を、1曲ずつ作ろうと思って、12曲になりました(笑)。
──そもそも、“11月を守る”というコンセプトはどのように生まれたものなのでしょうか?
5~6年前くらいから、なんだか“ただの秋”がないなと思っていたんです。ちょうど10月31日のハロウィンが盛り上がってきて、ハロウィンになるとカップルが過激な衣装を着てイチャイチャしているじゃないですか。それで12月にはクリスマスがあって、以前はツリーの点灯式とか12月に入ってから行われていたのに、最近は11月中にやっていたりして、あれれ、11月を侵害しているのでは?って思ったんですよ。11月ってそれまでは“ただの秋”だったのに。10月はだんだん寒くなっていって“秋が来たな”なんて、ちょっとキュンとするじゃないですか。でも11月はそういうこともなくて“ただの秋”。それが失われるのはなんだか嫌だな、ピンチだ!と思って、“11月を守る会”というものを結成しましたってブログに書いたんですよ。活動内容は“11月には何もしない”ってことなんですけど(笑)。それでお客さんも“私も守ります!”なんて言ってくれて。ただ、それだけのことだったんです。でも、次の年もみんなに“そろそろ11月ですよ、今年も守りましょうね”なんて言われて、ああそうだった、じゃあ秋の味覚を楽しみながらライブをやっちゃおうとか、会員証を作っちゃおうって感じで、ちょっとずつ盛り上がってきていたんですよ。考えてみたら、私、サポートの仕事は忙しくやらせてもらっているんですけど、ソロでやってきたことって“11月を守る会”くらいで。だったら、今回作る本は『11月を守る本』にしようと思ったんです。
──そこでコンセプトが決まって、12ヵ月それぞれの曲を作ったり、ストーリーを作ったりしていったんですか?
ストーリーはすでにありました。私、お話を書くのが好きで、夜な夜な書いているんです。「うんこの話」は、2013年に『たった、少しの覚悟で冒険するドラゴン』という本を出した時に、最初のプレゼンで光文社に提出したものです。逆に「泡と雲」は最近書いた物語ですね。
──では、12ヵ月というコンセプトに基づいて話を作っていったわけではないんですね。
心のままに書いたらこうなったという感じです(笑)。でも面白いもので、自然と辻褄が合っていくものなんですよね。曲で言えば、摩季ねえさんに歌ってもらった曲は、チョコレートがテーマの曲ができて、これ2月だな、完璧!みたいな(笑)。そんな感じで12ヵ月が“そろっちゃった”というか(笑)。麻雀で言うと、この手で上がろうとしていたら、違う手が出来ちゃったみたいな感じかな。私、麻雀やったことがないんで、よくわからないですけど(笑)。