日常の風景から生まれてくるものが大切。ただ、ライブはまさに非日常、その対比が自分でも面白いなと思います
──そういうふうに自分の足取りを振り返ってみて、楽曲に関しては何か気づいたこと、再認識したことはありますか。
楽曲については、「好きだ」「愛してる」というラブソングをずっと歌ってきたし、これからも歌っていくんですけど、でもそれ以前にもっと日常の風景、それにそういう風景のなかから生まれてくるものが大切だなあとあらためて感じています。ただ、ライブという現場はまさに非日常じゃないですか。その対比が自分でも面白いなと思うんですけど。
──『音道』にも入っている「トウキョータワー」という曲は、ちょっとうまくいってないカップルが気分転換に「明日、東京タワーに登ろう」という内容ですが、その後半に♪聞き飽きた雑音の中で耳を押さえるより/痛みさえも抱えながら日々を送ろう♪という一節があります。「トウキョータワー」は20年前にリリースされた曲ですから、その頃からChageさんのなかには、例えばライブで気持ちをリフレッシュして、明日からまた日々を生きていこうというような発想があったということですよね。
そうなんでしょうね。あの曲は、言ってくれたその一節を歌いたいがために作ったような曲ですから。
──それと同じような話になってしまうかもしれませんが、『音道』の1曲目に収められた「終章(エピローグ)」という曲はこれまで♪ありきたりの別れはしたくなかったの♪という歌だとずっと思ってたんです。つまり、あの曲の女性の主人公は“私はありきたりな女じゃないのよ”と思ってるっていう。でも、時間が経つなかで印象が変わってきて、今回の亀田誠治アレンジを聴いて、いよいよそうだなと思ったのは♪涙で幕をおろすような♪別れにはしたくない、つまり泣いて終わるような恋にはしたくないと思ってる歌なんですよね。
これは本当に亀田くんのアレンジが「目から鱗」だったんですけど、“同じ歌詞、同じメロディなのに、この前向きな感じは何?”と思いました。この女性はなんて強いんだ、とさえ思わせられるんですよ。しかも、このアレンジを聴いたMVの監督さんが、女性なんですけど、「私のイメージは絶対、部屋の中じゃないんです。朝陽を浴びた海原のイメージなんです」と言うわけです。だから、下田まで朝陽を撮りに行きましたよ。日の出とともに始まった撮影でした。素晴らしかったですね。あんなキラキラしたMVになったのは、亀田くんと監督さんの感性がばっちり合ったんでしょうね。
──ただ、その大元に曲を作ったChageさんの感性として、「ただ泣いて終わるのではなく、次の日にどこかへ出かけて気分転換して、また新しい日々を生きていこう」という思いがあったからなんじゃないですか。
そうかもしれないですね。とりあえず、この曲ほど数奇な運命を辿った曲はないなと思うんですけど、20代、30代、というふうに、世代ごとにバージョンを残してきた楽曲で、だからいまの僕は“あと10年がんばれば、70代の「終章」が歌えるんだ”と思ってるんです。で、70歳になったときには“あと10年がんばれば、80歳の「終章」が歌えるな”と考えると思うんですよ。これって、よくないですか。そういう思いにしてくれる楽曲なんですよね。
──年齢のことでいうと、新曲「Viva! Happy Birthday!」は、その名の通りのバースデーソングです。
誕生パーティーっていうのも、いまや誰もが楽しむ日常の風景のひとつじゃないですか。だから、王道のバースデーソングを作りたいとは思っていたんですけど、それが自分の60歳の誕生日とリンクして、自分が50代最後のメロディとしてこの曲を書き上げ、60歳になった誕生日の日に歌詞を書いたんです。で、ライブ会場で誕生パーティーをやろうという想定で完成させました。
還暦記念ツアーと言われるたびに、「CRIMSONですよ」と言い直してるんです(笑)
──その新曲を今回のツアーでやらないはずはないと思ってるんですが、その場合、コンサート当日が誕生日の人は何かいいことがあるんじゃないですか。
ありそうですね(笑)。考えてみると、この曲は誕生日以外の人には何も意味のない曲とも言えると思うんですが(笑)、それをライブでやると誕生日じゃない人も「おめでとう!」と言ってあげられて幸せな気持ちになるという。それは、ちょっとどデカいバースデーパーティーという感じになるんじゃないかなと思ってるんですけどね。
──それに、ツアー自体がChageさんの60歳を祝う還暦記念ツアーですからね。
そうなんです。みなさんにお祝いしていただけるという。ただ、還暦記念ツアーじゃなくて「CRIMSON」ツアーなんですよね。還暦と言われるたびに、「CRIMSONですよ」と言い直してるんです(笑)。ステージのカラーも、『音道』のジャケットのCRIMSONレッドを意識した色になると思いますね。
──そして、そのツアー終了後には、すごいゲストを迎えてのスペシャル・ライブも決定しました。
とんでもない顔ぶれですよね(笑)。ここではっきり言っておきたいんですが、このライブは僕のイベントに(根本)要とKANちゃんがお祝いに駆けつけるという建前なんですよ。でも、第1回目の打ち合わせは全然まとまらなかったですね(笑)。
──スターダスト☆レビューの最新アルバムのタイトルも『還暦少年』なんですよね。
そうなんです。要と僕は生まれた年は同じなんですけど、学年は向こうがひとつ上になるんです。だから、その打ち合わせのときに言ってたのが、要が長男で、僕が次男で、KANが末っ子という話なんですが、まあ、まとまらないですよ(笑)。「主役はオレだから」と何回も言ったんですけど、全然聞いてないんですよね。「二人がサプライズでケーキを押して出てきて、僕がフーッとろローソクを吹き消す、みたいなことをやらしてくれよ」と言っても、「そんなこと、するわけないじゃない」と言ってますから。いま、いろんなアイデアがメールで飛び交ってるんですけど、かっちりと何か決めても無駄なので、どうなるかわからないです。とりあえず、当日現場に2人が来てくれることだけは間違いないと思いますし(笑)、お客さんにはとにかく思い切り楽しんでいただきたいと思っています。
PRESENT
直筆サイン入りポスターを3名様に!
※転載禁止
受付は終了しました