──カップリングの「愛すべきばかちんたちへ」はCHAGE and ASKAの唯一の二人の共作曲で、まさに“遠景”という感じの曲です。
この曲はスタッフからの提案だったんですが、これまでライブでもそんなに歌っていなくて、忘れかけた存在だったんですよ。1曲目のテーマとも合ってるし、よくぞスタッフが見つけてくれたなと思いました。
──作った時のことは覚えていますか?
この頃(80年代初頭)、年間70本以上ライブをやっていて曲作りも大変だったんですが、ビートルズはもっと忙しかったはずなのに、ワールドツアーの時に、ジョンとポールがホテルの缶詰になって、一緒に曲を作ったという逸話を聞いて、だったら俺らも作ろうということになり、どこかの楽屋で二人でギターを弾きながら作ったのを覚えています。当時、ウォークマンの原型となったプレスマンというテープレコーダーが出たばかりで、それをいつも持ち歩いて、二人でギターを弾きながら歌って録った記憶がありますね。
──今回のバージョンも胸に染みきました。
20代の自分たちが少年時代を歌った歌だったんですが、60になろうという時に少年時代を歌う歌になりました。改めて、色褪せないものを作っていたんだなと思いました。
──語りの部分は博多華丸・大吉さんが担当しています。これは?
僕のアイディアなんですよ。僕が言うのは照れがあるし、ひとりでやってもつまらないし。ネイティブな博多弁を話せる方に頼もうと考えた時に、華大さん(博多華丸・大吉)しか思い浮かばなくて、ダメ元でスタッフを通じて、聞いてもらったら、OKが出て、うれしかったですね。二人ともお忙しい方ですから。1テイク、2テイクぐらいでOKで、見事なネイティブな博多弁で入れていただきました。この曲はやはり博多弁じゃなきゃダメなんですよ。“ばかちん”自体が博多弁ですし、今でも博多の人間は愛情を込めて、「ばかちん」と言いますからね。
──懐かしい風景が浮かんでくるようなサウンドも見事です。
アレンジを担当してくれた力石理江さんが原曲を聴いて、「少年の頃の世界に持っていきたい」って言って、子どもたちが学校帰りに野っ原で遊んでいる風景を想像しながら、アレンジしてくれたみたいですよ。だからリコーダーが入ってきたりしている。リコーダーのプロのミュージシャンの方への要請の仕方がおかしかったですね。“下手に吹いてください”って(笑)
──子どもが吹いているというイメージなんですね。
そうなんですよ。「リズムがズレても構わないので、ともかく下手に吹いてください」「わかりました」って。そういうオーダーにもこたえていくところがすごいですよね。
──3曲目には「たった一度の人生ならば」の豊洲PITでのライブ・バージョンが収録されています。
実はアコギの弾き語りでライブで歌っているのはキーを半音下げているんですよ。だからちょっと聞こえ方が違う。同じ歌でも鳴りが変わってくるので、おもしろかったですね。この曲を半音下げて歌ったらどうなるだろうって、実験的にやってみたくなりまして。となると、ギターの弦も半音下げなきゃいけない。ギターの鳴りも変わるし、タッチも変わるし、当然、歌い方も変わってくる。今はもともとのキーで演奏しています。その方がChageっぽいと言えば、Chageっぽくなるので。でも音楽の表現にはいろんな可能性があるなと思っていますね。
──この曲のもともとのタイトルがツアーのタイトルにも使われていて、この曲がツアーの柱のひとつと言えそうですね。
今年の自分の柱ですからね。そのあたりも意識して、活動しています。
今回のツアーメンバーは?