インタビュー/三宅正一
──『OLIVE』がリリースされて、リスナーからいろんな反応があると思うんですけど、どう受け止めていますか?
両方あって。ものすごくありがたいというのが1つ。ずっと応援してくれている人たちもそうだし、新たに出会えたリスナーも数多くいるという現象に喜びを感じつつも、まだまだ届いていないという悔しさがあるのも事実で。ほら、今日まさにチャンス・ザ・ラッパーがグラミー賞を獲ったのが日本でもニュースになったりしているのを見ると、俺をもうちょっと評価しろよって思うんですよね(笑)
──僕もここに向かう直前までグラミー賞の生中継を観ていて。ストリーミングのみでCDを売らないチャンス・ザ・ラッパーが最優秀新人賞、最優秀ラップアルバム賞、最優秀ラップパフォーマンス賞の3冠を獲ったという事実は、SKY-HI氏も思うところがあるだろうなと感じていて。
そうなんですよね。すごくうれしいんだけど……複雑なところもあるみたいな。
かねてから日本の音楽文化はガラパゴス化していると言われてるから、ワールドトレンドと分断されているところがあるかもしれないけど。でも俺が音楽専門誌のインタビューとかで名前を出しているのはチャンス・ザ・ラッパーやアンダーソン・パークで。そんなコアな人たちの話はしてないんですよね。それこそグラミーにノミネートされるような話しかしてない。
──ブルーノ・マーズ然りね。
そうそう。でも、そういうアーティストと俺を絡めて話してもらえることは少なくて。
なんて言うんですかね?すげえオシャレな服を着ていても誰も気づいてくれないみたいなもどかしさがあるんですよね。
──でも、SKY-HI氏がチャイルディッシュ・ガンビーノについて語ってる記事とか意義深いし、後々いろんな裏付けとして効いてくると思うんですよね。
うれしい。あの記事は業界視聴率がハンパなく高くて。それこそ、星野源の説得力みたいな(笑)
──まさにそう。
星野源も我々からしたら、そもそもブラックミュージックオタクで、下ネタとかも喋っちゃうシンガーソングライターであり俳優という認識で。今みたいに爆発的に売れたときに誰も僻まないのってそういうことだと思うんですよね。『彼は俺らのクラスメートだから!』っていう(笑)
オシャレな服を着ていても、その本質的な部分はまだ伝わらないんだろうなという悔しさはまだまだあります。昔のクレさん(KREVA)も言ってましたけど、『それを聴くなら、俺を聴けよ』みたいな(笑)
──SKY-HI氏の音楽表現が右肩上がりに幅広い層のリスナーのみならず同業者からもリスペクトを集めているのもまた事実で。だから、すごくいい状況だと思っていて。
そう。だから、やっぱり両方の思いがあるんですよね。動員、セールス、評価。本当に何1つ悪くなってないから。でも、オシャレな服を着ていても、その本質的な部分はまだ伝わらないんだろうなという悔しさはまだまだあります。昔のクレさん(KREVA)も言ってましたけど、『それを聴くなら、俺を聴けよ』みたいな(笑)
──だからこそ、より火が点いてる部分もあるだろうし。
そう。だからがんばらないと!
──パフォーマンスを観れば一発で驚きと納得を与えられるだろうし。
そうですね。そういう意味ではすごくやり甲斐のある時代でもあって。音楽バブル、CDバブルみたいな流れで持ち上げられることもないし。自分がやった分しかリターンがない。オッズが1.2倍くらいの馬しか並んでないみたいな。
──大穴はいないという。
そうそう。大穴はほぼいない。でも、Suchmosの売れ方とかはひさしぶりに200倍を見た感じでしたけど。
──確かに。Suchmosが売れたことで勇気づけられる人たちもたくさんいるだろうし、もう音楽で嘘がつけない時代になったと覚悟してる人もいると思う。そういう意味では、すごくシビアだけど、いい時代だと思うんですよね。SKY-HI氏もこの時代の躍動すべきアーティストだと思うし。
そうっすね。あとは、RADWIMPSの『前前前世』とか星野源の『恋』の売れ方、タイアップとタイアップするみたいな大きな揺り戻しを感じている部分もあって。売れるべくして売れている曲だと思うし。
──もちろん、楽曲の内容がいいのは大前提で、メジャーの醍醐味を謳歌している売れ方だと思う。
売れ方の多様性があるのはすごくいいですよね。1万枚から3万枚でも売れたという認識をされることがスタンダードになってきたゆえに何をもって売れたとするかという概念も細分化されているから。フラットに攻められる時代だと思うんですよね。
──だからこそ、ライブの現場の1本1本もより重要になっていることも切に感じていると思うんですけど。
まさにそうですね。