ニューミュージックを血肉に洋邦の80'sサウンドをクロスオーバーさせた楽曲を多数発信する4人組バンド・GOOD BYE APRIL。2023年11月18日に渋谷PLEASURE PLEASUREで開催される彼らの自主企画イベント「2MAN TOUR “What a Harmony” Vol.3」に、ゲストとしてキンモクセイが出演する。ニューミュージックやAORなどの系譜にあるシティポップという、共通する音楽性を持つ2組による、世代を超えた競演は高い親和性をもって化学反応を作り出すことだろう。
そんなツーマンを記念して、GOOD BYE APRILの倉品 翔(Vo/Gt/Key)と、キンモクセイの伊藤俊吾(Vo/Gt/Key)と佐々木良(Gt)による鼎談を実施。今回のツーマンが実現した経緯や、お互いがシンパシーを感じる箇所、両者の決定的な違いなど、リスペクトに富んだ会話となった。
そんなツーマンを記念して、GOOD BYE APRILの倉品 翔(Vo/Gt/Key)と、キンモクセイの伊藤俊吾(Vo/Gt/Key)と佐々木良(Gt)による鼎談を実施。今回のツーマンが実現した経緯や、お互いがシンパシーを感じる箇所、両者の決定的な違いなど、リスペクトに富んだ会話となった。
──GOOD BYE APRILはどういう着想から全4回にわたる自主企画イベント“What a Harmony”のコンセプトを固めていったのでしょう?
倉品バンドを始めてからの10何年、GOOD BYE APRILはずっとバンドシーンから浮き続けている感覚があったんです。だからワンマンを開催する機会が多かったんですけど、コロナ禍が明けてライブをしていくなかで「もっと自分たちの音楽を広めていきたい。新しい人に出会っていきたい」と思ったんです。それならば競演というかたちがベストだし、コロナ禍を経たからこそ今まで以上に自主企画ライブの意味を濃くする必要があるなと思って。
──コロナ禍を経てライブ活動を仕切り直すにあたって、しっかりと精神性が表れるライブを企画したいと思われたということですね。
倉品そういう意味でも、自分たちが尊敬している方たちとのツーマンがいいのではないかという話に着地しました。ツーマンライブは競演として最もミニマムな形態であり持ち時間も多いので、お互いの濃いところが出やすいとも思うんです。GOOD BYE APRILはコーラスを大事にしてきたバンドですし、「2組」「親和性が高い音楽」という意味も込めて“What a Harmony”というタイトルをつけて、大好きな人たちと一緒にライブをする企画を組みました。Vol.1にはSOMETIME’S、Vol.2にはThe Songbardsという、近い音楽性を感じる同世代のバンドと一緒にライブができて、本当に贅沢で最高な、宝物のような日になりました。それぞれのお客さんがすごく喜んでくださっていることもダイレクトに伝わってきましたね。
──そしてVol.3が、キンモクセイを招いて渋谷PLEASURE PLEASUREで開催されます。どうやらGOOD BYE APRILとキンモクセイは2021年頃から交流がおありだそうで。
佐々木最初の出会いのきっかけが曖昧なんですけど、GOOD BYE APRILの音楽には自分の好きなテイストが満載で、2年くらい前からライブにお邪魔させてもらったり、ラジオで曲を掛けたりしてますね。そういうなかでライブのお誘いを受けたりもしていたんですけど、キンモクセイは2018年に活動再開して以降、あんまり対バンをやれるテンションではなくて。
伊藤もともと2008年に活動休止をしたのは、メンバー同士のバイオリズムが合わなかったというのも大きいんですよね。活動再開することはないだろうなとも思ってた。でも2018年に、メンバーの“心のスケジュール”がばっちり合ったというか。だから久しぶりに集まった新鮮味も手伝って、キンモクセイの活動を楽しく動かすことはできていたんです。でもあらためてどう動かしていこうかを具体的に考えた結果、今年の5月に新体制で動き出すことになって。そのときに「これまでの保守的なキンモクセイではなく、広がりを持たそう。キンモクセイのサウンドの固定観念を崩したい」というタームに入ったんです。
──そのタイミングでGOOD BYE APRILからオファーがあったということですね。
佐々木「今ならやってみてもいいんじゃないか」と思えたんです。でもそれはGOOD BYE APRILだったというのも大きいですね。
伊藤やっぱりせっかく活動再開したなら自分の気持ちに嘘をつきたくないし、嘘をつきながら時間を過ごすのは勿体ないと思うんです。だから自分たちの気持ちに素直に突き動かされた結果、今一緒にライブをやれたならと思ったんですよね。僕らもGOOD BYE APRILと同じで、同世代で切磋琢磨していく仲間がいなくて。ライブハウスのブッキングライブで必ず浮くという状態だったんです。だから近しいものは感じていましたね。
倉品キンモクセイは「ポップスというフィールドで自分たちの世界を切り開く」という道を作ってくれている大先輩なんですよね。僕は20代の頃から、自分がバンドをやっていくことに自信がない時期が多かったんです。目立ちたがりでもなければ、先頭に立って引っ張っていくタイプでもないので。
伊藤好感が持てますね(笑)。
倉品あははは。ガツンと行けないメンタリティの自分がバンドをやっていくことにずっと葛藤があったんです。だからそんな僕にとって我が道を行くキンモクセイは憧れでもあり、「自分の場合はこういうスタンスでバンドをやっていけるかな」と思わせてくれる心の支えでもあるんですよね。
──今お話いただいた段階でも、お2組が音楽性はもちろん様々な共通点をお持ちであることが感じ取れますが、逆にどんなところが決定的に違うと感じますか?
佐々木まず思うのは、キンモクセイが80年代のテイストの曲をやると、“憧れのあの曲のパロディ”みたいになることがあるんです。でもGOOD BYE APRILは天然というか。なんでこの感じが自然に出せるんだろう? 人生2周目なのかな?って。
伊藤キンモクセイは、その頃の流行やムーブメントをリアルタイムで知っているぎりぎりの世代なんですよね。子どもの頃の肌感覚として残っているのもあって、ニューミュージックやAORのテイストの音楽を選ぶんだと思うんです。でも90年代生まれの倉品くんは、純粋にあの頃の時代のサウンドに魅せられている。だから真似事ではなく、自分たちの表現としてちゃんと消化されて出てくるのかなとは感じていて。
佐々木僕らがバンドを結成した頃とかは「なんで今こんな音楽やってんの?」と言われることも多かったけど、若い世代の人たちにはそういう偏見がないですよね。高校生の娘も、TikTokでラッツ&スターの「め組のひと」や、オリジナル・ラブの「接吻」を知って、口ずさんでたりするんですよ。いつリリースされた曲なのかは娘にとっては関係なくて、なんなら誰の曲であるかすら関係ないみたいで。そういうのも面白いなと思います。
──確かに平成生まれの方には、時代やアーティスト関係なくフラットに音楽を聴いている人が多い印象があります。インターネットの普及で、フットワーク軽く昔の音楽を掘れるようにもなったのも一因なのだろうなと。
倉品リアルタイムではないぶん、時代背景をまったく知らないんですよね。それもあってシンプルに“好きな音楽”として気持ちよく80'sの音楽を聴けるんだと思いますし、僕にとって憧れでありファンタジーなんです。GOOD BYE APRILには海辺が舞台の曲が多いんですけど、僕は長野県出身なので、海もファンタジーであり憧れで。そういうものを曲にしたいという自分の感覚が、たまたまシティポップの系譜にはまったのかなとは思っていて。
伊藤やっぱりリアルタイムで当時の音楽を感じていたか感じていなかったかの違いはすごく大きいですよね。倉品さんと僕らとでは、使ってる機材も全然違うだろうし。僕らがバンドを組んだ頃はパソコンで曲を作るという概念がないから、そもそものスタートが違うんじゃないかな。
倉品サウンドメイクはPCありきで作っているところも大きいです。ストリーミングサービスのプレイリストで並んで聴かれることも意識して作っている節もあるので。
伊藤そういうふうに狙いを定められるのは、制作において強いですよね。自分たちが駆け出しの頃は、まずレコード会社に見つけてもらわないとどうにも始まらないという感じだったから、どうやってほかのバンドがやっていないことをやろうか、どうしたら耳に引っかかる曲が作れるかを重視していたところがあったと思います。
──倉品さんはどんなところにGOOD BYE APRILとキンモクセイの差異を感じますか?
倉品僕が描いている違う街の匂いだな、とはずっと思っていますね。先ほど“ファンタジー”の話をしましたけど、その中にも長野出身だからこその原風景や風の吹き方を曲にずっと残したいなとは思っていて。そういう意味でもキンモクセイの音楽には、キンモクセイの音楽や伊藤さんの文学性の高い歌詞にしかない街の雰囲気や匂い、キンモクセイの音楽でしか味わえない世界が色濃く存在していると感じるんです。都会の街の風の匂いがするんですよね。
伊藤それは神奈川の相模原出身なのが影響しているかもしれないです。隣町は東京都なんだけど、相模原は東京じゃない。絶妙な場所なんですよね。海も都心も遠くないし、なんでも潤沢に手が届く場所。そういう意味では風景描写や切り取り方が、僕のほうがリアリティがあって具体的かもしれない。
──やはり表現には、これまでの人生が表れるんですね。
伊藤作っている最中はそんなつもりなかったけど、やっぱり出るものなんですね。その当時は自分たちのカラーや特徴がわからなかったけど、振り返ると客観的に「こういう音楽を作ってたんだな」とわかるというか。だからまた、制作ではちょっと面白いタームに入ってきてるんです。
佐々木最近伊藤は引っ越しの頻度がすごすぎて、多分今までの街の風景や風の匂いからブレ始めてるかもしれない(笑)。
伊藤あははは、地元愛みたいなものはだいぶ前に手放したんですよね。今は地球に過ごしている感覚で書いているので、もうちょっと哲学的なものや人生観を歌いたいなと思っているところがあるかもしれないです。一時期、売り上げのことを気にしながら歌詞を書いていた時期もあって、振り返るとそれにすごく後悔していて。今のキンモクセイが「嘘をつきたくない」という気持ちを大事にしているのは、そういうことも理由になっているんですよね。