──4月8日(土)Zepp DiverCity(TOKYO)にて、Major 1st Single『Judgement』リリースライブを開催するASH DA HERO。この日のライブは、“声出しOK”がアナウンスされてますが、ライブハウスの規制も緩和され、俺たちのライブハウスが戻ってきた感があります。
ASH(Vo)そうですね。先日、『A.V.E.S.T』に出演して、ライブが終わった後も、みんなが口々に「シンドっ……」って言ってて(笑)。声が聴けるライブって、エネルギーや地場が全然違うなと思ったし。宇宙飛行士が宇宙行くために訓練して行く感じというか、しっかり体を作ってから臨まないと、コロナ禍における仕様で臨むと持っていかれるなっていうのは、すごく思いましたね。(ライブレポート:「ASH DA HERO、令和最強のロックバンドが『A.V.E.S.T』で強烈なオリジナリティを魅せる」)
──演者とお客さんがパワーを与え合って、いつも以上の力が出るみたいなことって絶対あると思うけど。その分、負荷もかかると。
ASH(Vo)そうなんです。声援とかあると、すごいアドレナリンが出て、いつも以上にガッといけるんだけど。だからこそ、「これは体力作りを見直さなきゃな」と思ったし。我々は知らず知らずのうちに、コロナ禍に飼いならされてたんだなと思いましたね。
Narukaze(Gt)ワンマンでは大阪でライブをやった時、一日だけ「25%の声出しはOK」っていうのを経験していて。自分は曲を作る時から、ライブを想定しているんで、それだけでも嬉しかったんですけど。今回はやっと曲が完成するんだなと思うと、すごく楽しみですね。
──1stアルバム『Genesis』を作ってる時はコロナ禍だったけど、曲の向こうにあるお客さんの反応やライブの風景を想像して作っていたわけでしょう?
Narukazeはい、そうですね。
Sato(Ba)でも正直、声出し100%の景色なんて、忘れちゃったよ!って気持ちもあって。それを目の前にした時、泣いちゃうんじゃないか?と思ってて。それが「これだよね!」って思う人もいれば、不安のある人もいるかも知れないけど。喜びも不安も含めて、みんなと一緒に味わえたらいいなと思ってます。初めて観てくれる人もたくさんいると思うので、そういう人はしっかりアテンドします(笑)。
WANI(Dr)当たり前だったことが当たり前じゃなくなって、約3年が経ってそれに慣れてしまって。個人的な思いなんですけど、コロナ禍のライブって発表会みたいな感じがあって、ライブだけどライブじゃないみたいな気持ちもどこかあったので。今回、やっと本当の意味でのライブが出来るなという楽しみがすごいありますね。体力を付けなきゃってところでは、いまめちゃくちゃ筋トレやってるんで。ライブで良い感じになったら、上は脱ぎますよ(笑)。
Dhalsim(DJ)僕は個人的なことを言えば、前のバンドでもライブやツアーをやってきたんですけど。コロナとか関係ナシに、お客さんが全然いないライブばかりだったので(笑)。Zeppで声出しアリなんてライブは初めての体験なんですが。前にZeppでライブをやった先輩が、「歓声でのけぞりそうになった」と言ってたのを覚えてて。そんなのを体験してみたいなと思って、ワクワクしてます。
──『A.V.E.S.T』でのライブを観て、Dhalsimくんが後ろからしっかりお客さんを煽って、ノリ方をレクチャーしてっていうのは、初めて観る人の多いライブだと、すごく有効だと思いました。
ASHそれは僕もしっかり見えてますよ。前を向いてるから、物理的には見えてないですけど、「あいつ、やってんな」っていうのは、お客さんの反応を見れば分かるんで。「いま、Satoくんがクラップ煽ってんな」とか、お客さんの目線と動きで分かるんです。サッカーでいうアイコンタクトプレイじゃないけど、「よし、Dhalsimが煽ってくれてるなら、俺は歌に集中するわ」みたいなやりとりが、ステージ上にはあるんで。心の中で「もっと行け!」って思ってます。
──この5人でバンドとして活動を始めて、約1年半。そういう心強さは、ソロの時との大きな違いですね。
ASHバンドの強さみたいな、そのグループの放つオーラみたいなものって全然違うんで、なによりそこですよね。そことオーディエンスの化学反応みたいなものが、ホントにすごくて。Naruくんも言ってたけど、25%でもヤバかったし、WANIさんも言ってたけど、コロナ禍におけるライブって、「これは何か発表会なのか?」みたいな感じがあって。ライブって、“生きる”と書いてLIVEじゃないですか? でもそれって、全くALIVEしてないので。アートの領域から、生きた芸術に変わる瞬間がこのタイミングな気がしています。ライブってそもそも、WANIさんがパーン!と一発叩いた瞬間にワ~!ってなるとか、Satoくんのベースがバーンと鳴った瞬間に白目向いちゃうとか、Naruくんがガーンとギター弾いた瞬間に小学生が「将来、絶対ギターを弾いてやる!」と思うとか。人生変えちゃう体験が出来るのが、ロックバンドのライブだと思うんで……。
NarukazeDhalsimの例も言ってあげて(笑)!
ASHあ、Dhalsimのスクラッチを聴いて、「なにこれ? DJってカッコいい!」とかね(笑)。ロックバンドのライブってそういうもんだと思うんです。俺、初めて外タレのバンドを観た時、何か分かんないけど熱量が伝播して、頭おかしくなっちゃうみたいな経験をして。高校生だったけど、「明日、目の周りを真っ黒にして学校行きてぇ」と思ったり、そういう狂信的なものだったはずだし。それがロックバンドの為せる陶酔作用だと思うし、酔い散らかして欲しいと思って。いまは元来、ロックコンサートとはどういったものだったのか? ライブハウスとはどういう場所だったのか?っていうのを、取り戻しに行く戦いが始まるなって感じです。
──3年って、ライブハウスのあの感覚を忘れかけてしまうくらいの長い年月だったし。例えば、当時中学3年生だった子が高校3年生になってるわけだから。ここから初めて、本当の意味でのライブを体験する人もいるかも知れなかったりして。
ASHそう、これは俺が個人的に思うことなんですけど。「よっしゃ、ライブハウスが戻ってきた!」って人と、ライブってマスクして拍手してサイリウム振ってという固定観念を植え付けられた人が交錯しようとしている中で、新たな問題は絶対生じると思うんです。だから、「互いが互いを知り合えよ」っていうのをすごく思ってて、そういうカルチャーの中に生きてきたやつもいる、モッシュとかダイブを見たことなかったやつもいる。そういうやつらが、互いを知り合えたら、すごく良い空間になっていく気がするので。分かり合うまでいかなくていいけど、知っておくことは超大事だと思います。
──いまから100%のライブを体感する人が、全国に山ほどいるわけで。ライブハウスが最高の場所だと分かって欲しいし、俺たちが初めてライブハウスを体感したあの衝撃をここからたくさんの人が味わうと思うと、すごい希望と可能性を感じますね。Zeppのワンマンでお客さんに見せたいもの、見て欲しいものはありますか?
Narukaze去年、一旦ツアーを終えてから、バンドの音がすごい進化してて。俺はいまそれが一番楽しいし、それを聴いてもらえるのはすごく楽しみですね。いま、Zeppに照準を合わせてやってるところもあるし、もちろんもっと先も目指してるんですけど。自分からしたら、去年と違うバンドくらいの音になってると思うんで。
──その音の進化は、具体的には何が理由だと思います?
Narukaze音作りひとつとってもそうだし、曲に対しての考え方やアプローチもそうだし、本当いろいろなんですけど。得意じゃなかったことを自分のものにするって、すごく大変なことだし。5人が同じ考えって、なかなか大変なことなんですけど。いまは5人が寄り添ってそれが出来てるし、そこにすごいバンド感を感じてますね。
WANI僕は自分自身が結構変わったなと思ってて。バンマスのNaruくんのアドバイスも取り入れてやっていくうちに、バンドとしてのグルーヴがより良くなったり、固まってきたりして。常に進化し続けてる感じがあるし、楽しいを更新し続けられています。
Sato僕もNaruくんに相談したりしながら、自分の中で後回しにしていた課題に取り組めたりしていて、「宿題って大事だな」と思ってます(笑)。そしたら、外から見たら分からないくらいの変化かも知れないけど、演奏中のちょっとしたズレや呼吸がすごいハマるようになったのを感じるし、演奏してて「楽しいな」と思える瞬間も増えたし。いま、すごくやりがいを感じてます。
Dhalsim僕はマニピュレーターも兼ねてるので、バンドを始めた時は繋ぎが分からないし、ボタン一発でライブをぶっ壊しちゃう可能性もあるので、怖さがあったんですけど。ジャストでドンと行った時は、自分の中で「よっしゃ!」って気持ちもあるし。実はライブの流れを陰で作っていくってところで、すごく重要なパートなので。改善の余地は山ほどあるんですけど、どんどん呼吸も合ってきたのを実感出来てるし。当初感じてたプレッシャーは、乗り越えつつあるかな? と思います。
ASHDhalsimは影の司令塔ですから。最近はライブ中、ドヤるようになってきて。俺が水を飲もうと思って後ろ向いてパッと見たら、「飲むのか? 飲まんのか? 飲まんのね!」みたいな顔して。「よし。じゃあ、行ってらっしゃい!」みたいに、調教されてる気分になるのが面白いんです(笑)。
Dhalsim俺がボタン押して走らせたら、曲行くしかないからね。
──あはは。ステージの上でそんな駆け引きがあるんですね(笑)。ASHくんはバンドの変化や進化をどんなところに感じますか?
ASHNaruくんが言ってくれたことが、完全回答だと思うんですけど。自分自身も前回のツアーを回った後、歌もそうだし、マインドセットやメンタルセットの部分もすごく変わったと思うし、次のフェーズに行きたいと思ってて。個人としては、いま65%くらいなんで、もうちょっと上げていかないとなって思ってるし。バンドの音がどんどん進化してるから、「やべぇ!」って焦らされるし、「真ん中で歌うの俺じゃん! 頑張らなきゃ」みたいな気持ちになってるのと。バンドって家族でもないし、仲間みたいなのも超越してるんで。いまは「負けてらんねぇ」ってせめぎ合いと、家に帰ってきたような落ち着きが同居してる感じです。でもなんか、これぞバンドの強みだと思うし、ロックバンドとはこうなんじゃないか?というのを感じている日々です。
──バンドの理想系だと思います。あとはZeppに向けて、65%をどこまで高めていけるか?っていうのが、いまの課題ですね。
ASHそうですね。じゃあ、何をもって100%なのか? 100%超えとはなんなのか?って考えたら、オーディエンスの歓声だったり、みんなの歌声が合わさった瞬間に完全体になるので。まずは4月8日に100%にして、100%を超えることを目指して、そこからみんなで次のフェーズに行くって感じですね。