自然の流れに身を任せる、そういったことをテーマにしたいと思ったんです
まず、これは声を大にしていいたいんですけど。これらの場所はディスクガレージさんから提案されたものです(きっぱり)。元々私は“自然人間の野生児”なので人工的な場所よりも大自然のなかのパワーが感じられるような場所が好きで。そういうところに行くと体調が悪くても元気になるんですね。そのパワーを借りると、歌も「こんな表現ができるんだ」という歌が歌えたりするので「不思議なところでライブができたらいいね」と軽い感じでは言ってたんですよ。そうしたら「こんな面白いところありました!」とディスクさんが嬉しそうにいろんな場所を提案してきてくださって。それで私もビックリしたんです。「えー、ここで本当にやるの?」って。これが事実です(笑)。
でも、やってみたらお客さんも「今井さんがここでライブするならあそことあそこを観光しよう」みたいな感じで、旅行気分で友達と一緒にいらっしゃる方が多かったので、いまでは「またやって」、「次はどこですか?」というお声も上がるようになりました。
ええ。一番最初にやったのは2012年の沖縄の洞窟、ガンガラーの谷だったと思うんですけど。これも、私はプライベートで沖縄によく行っていたので、軽い気持ちで「沖縄行きたいね」なんて言ってたら、ディスクさんのほうからここを提案されまして。そうしたら、私がライブをやる直前にガンガラーで人骨が発掘されたんですね。その結果、私はここが洞窟から遺跡に認定された直後、初めてライブをやったアーティストになれたんです。当日は、ステージ真横にブルーシートがかけられた発掘現場があるような状態だったんですね。でも、そういうのも相まって、歌ってる最中はいままで感じたことのない生命感、大地のパワーを凄まじく感じて。本当に凄かったんですよ。前日降った雨が鍾乳洞の天井からポタポタ落ちてきて、演奏が終わってシーンとした瞬間にそれが“ポチャーン”って響いたり。
あと、鍾乳洞に反響して戻ってくる声も、いままで自分が聴いたことがないような声だったんですね。私はあまり自分のことが好きになれないから常に努力しなきゃいけないと思ってしまうタイプなんですけど。あのときはそんな私でさえ「自分の声が好きだな」と思うぐらい声が心地よくて。表現力という意味では、客観的に見ても跳ね上がった感覚があったんですね。ただ普通に歌ってるだけでは引き出せないなにかを、地球の力を借りながら一緒に表現できた気がして。ある意味、覚醒した感があったんですよ。そこから、歌うことがより好きになったんです。
はい。ステージで歌うことが恐怖でもあったんです。歌は好きだけど、自分はお金をいただいてライブをする価値がある人間なのかという葛藤もありました。でも、そこで歌って初めて「私は歌うことが好きだ」というのをめちゃくちゃ実感できたんですね。そういう経験をしてしまったんで、私はそうやって、大地の力を借りて自分では見つけられない“自分”を発見できるような会場でやりたいとお伝えしたら、どんどんいろんな場所がでてきてライブをやるようになったんです。
そう理解していただけると嬉しいです。制作は夏前ぐらいから取り掛かったんですね。自粛明けではあったんですけど、いろんな音楽活動が中止になって、私自身音楽の無力感を感じていた部分もあったんです。それでいざ作り始めようってなったとき、私は好きなものを歌うべきだと思ったんです。歌手活動10周年を去年迎えて、ここから今井麻美の音楽活動の第二章が始まる、みたいなイメージが自分のなかにはあって。なので、自分は自然、その流れに身を任せることがどれだけ大事かということをよく考えてるので、そういったことをテーマにしたいと思ったんですよね。