──今作は格段に歌詞とサウンドの密着性が高くなっている印象があったので、『Xanadu』は夏を通り抜けていくような鮮やかさがあったんですよね。季節が巡っていく香りというか。
延本ああ、なるほど。たしかに夏曲が多いですよね。わたしは夏がそんなに好きじゃなくて、出来る限り過ごしたくないんですけど(笑)、たぶん80'sの夏に憧れてるんでしょうね。アイドルが歌ってる夏曲――フレッシュなキャンディボイスが乗るあの感じが本当に大好きなんです。
倉品やっぱりいつの時代もシティポップは夏との相性がいいんだよね。僕らは曲先なので、曲のムードに触発されて夏の歌詞になってるところも大きいかも。
──「人魚の鱗」のコテコテ感は様式美と言いますか。贅沢なイントロはかなりバブリーです。
延本80年代のアニメの主題歌は全部シティポップだったじゃないですか。そのオープニングとエンディングの気持ちですね。杏里さんみたいなイケてるカリスマボーカリストさんが歌うくらいの気持ちで書きました。
倉品「人魚の鱗」に限らず、イントロとアウトロは敢えて長く取りましたね。最近の自分のモードです(笑)。長いけど、意味のある長さなんですよね。
──ああ、たしかに。
倉品一見余分に見えるようなものなんだけど、それが意味を持って存在していると深みとなるので、何回も聴ける。飽きないものになるんです。音にちゃんと意味を込めることができるようになってきたからこそ、長いイントロやアウトロが成立するようになってきたのかもしれないです。
吉田「Xanadu」のイントロのギターは、最初倉品が作ったデモで唯一の生き残りなんですけど、ああいうのはGOOD BYE APRILでやってこなかったから新鮮で。「急になにしてんの?」って感じのイントロではあるんですけど(笑)。
倉品大げさすぎてね(笑)。俺も笑いながら作ってた(笑)。
吉田正直ちょっとダサいんすよね(笑)。でもダサかっこいいものにはなってるから、ほかのギターフレーズはこれとちぐはぐにならないようなものを心がけて。レコーディングも楽しかったですね。
──80'sに振り切った曲たちが多いなかだと、倉品さんワールド満載の「水蒸気」と「ぜいたく」もスパイスになっていますし、また新しい魅力を放ちますよね。ボーカリストの心の奥にある心情が綴られた曲があると、聴く側としても落ち着きますし。
倉品アルバムとしてまとめるにあたって、ないパーツをデモから引っ張ってきて仕上げたのが「水蒸気」と「ぜいたく」です。ほかの曲と色が違うけど、馴染んで浮かない2曲ですね。自分の気持ちを歌詞にするのは苦手だと思っていたけれど、結果的に自分の気持ちが反映されたものになった、というアウトプットがちょっとだけできるようになってきたのかな、とこの2曲を完成させて思いました。
延本曲を書いてる人が書く歌詞のいいところは、音とのリンク性だと思うんです。だから頑張って歌詞を書くと、曲とのバランスが崩れちゃう。「水蒸気」と「ぜいたく」と「ARMS」は仮歌詞が乗っていたので「これでいいんじゃない?」と言ったんですけど、そのあとらっしー(倉品)は「ぜいたく」と「ARMS」の歌詞を書き直してたんですよ。それが全然良くなくて!
全員あははは!
延本らっしーは気負わず気軽に書いたほうが、いい歌詞が書けるんだろうなと思いますね。
倉品やっぱりこのバンドにおいて歌詞は、言葉を作るのが好きな延本がやるべきテリトリーだと思うんです。だから僕が歌詞を書く場合は、ちゃんと自分の気持ちが反映されたものを書くのが自分の役目というか、自分がこのバンドでやるべき作詞かなと。それでこそ意味のあるものができるんだろうなと思ってますね。
友達には「1stアルバムみたいやな」って言われました(吉田)
「集大成」って言葉は一度も頭によぎらなかったよね(つのけん)
──そうですね。10周年というアニバーサリーイヤーに、集大成的な作品を作らないところに、GOOD BYE APRILらしさを感じました。
吉田たしかに。10周年だからこのテーマに行き着いたわけでもないし、友達には「10周年のタイミングで出すアルバムというより、1stアルバムみたいやな」って言われました。
つのけん「集大成」って言葉は一度も頭によぎらなかったよね。
──1曲1曲で濃いドラマが広がっているのに、ラストの「Xanadu」はさくっと終わる感じも小気味よくて。また新しい物語が広がっていくんだろうなと思うエピローグでした。
倉品最後はこういう、肩の力が抜けるような曲で締めくくりたかったんですよね。結果的にそれが10周年のアルバムのラストに相応しいものになったと思います。
──だいたいのことが意図していない、「結果的に」なんですよね。それが面白いです。
倉品ほんと今年はいろんな偶然が重なって、いろんな歯車がバチッとはまった感覚があるんですよね。
延本6ヶ月リリースと制作と配信ライブを並行して走り続けて――それこそ「plastic」は「選曲する前に曲ができてない!どんな曲にする?」ってところから作った曲なんです。どの曲を連続配信曲にするかも決めてないし、アルバムの全貌も見えてないし、そんななかでアルバム曲を決めていかなければいけなくて。だからこそ頭でっかちになって曲を選ばず、流れに身を任せていくように曲が決まっていって……それで9曲揃って、最後に1曲足りないから「Xanadu」の原型を大改造して、へとへとになって妥協寸前のなか「Xanadu」を完成させて。すべてのピースが揃った感覚があったんです。だから、自分が作ったとは思えないんですよ。
──制作前の延本さんのご希望通り、延本さんが自分たちの曲にびっくりできて良かった。
延本本当に神のお導きみたい。壊した先に、自分の知らない自分の作った曲がありました(笑)。
PRESENT
直筆サイン入りポスターを1名様に!
※転載禁止
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