──吉本さんは、この『BALLAD COAST』の中でどの曲が印象に残っていますか？
吉本この1曲というのはないですけど、「心のリズム飛び散るバタフライ」に関しては、いろいろ歴史がありますね。いっぱい演奏してきましたし、このタイトルでラジオ番組もやっていました。
大田たぶん、一番たくさん演奏している曲じゃないかな。
──バラードって、歌としては難しいですか？
吉本バラードは徳永さんが歌うことが多くて、僕は下ハモに回るんですが、メロディーが非常にトリッキーで難しいです(笑)。ちょっと自分では発想しえないラインに行くので、すごく難しいです。
大田ハーモニーが難しいよね。
──でも、それがdoaの持ち味になっていて。徳永さんはあえてトリッキーなハモリを考えているんですか？
徳永どうなんですかね。たぶん僕の作るメロディが飛び出ているところに対しての下ハモだからなのかもしれないです。ドミソなら、ド～って歌っていれば下ハモも簡単ですけど、個性的なメロディを作るのが好きだから、下ハモも難しくなるんだと思います。自然とそうなりますね。
──バラードなのに起伏の激しいメロディですよね？
徳永そうですね。doaの曲はアコギと3人の声があれば、アップテンポでもバラードでも同じような感じになるんです。テンポが違うだけで、倍で取ったら普通にアップテンポになる曲もあったりして、やってることはあまり変わらないですけどね
──この『BALLAD COAST』で徳永さんの印象に残っている曲というと？
徳永いろいろ印象に残っていますけど、1曲目の「はるかぜ」とか。この曲で知ってくださった方もいるかもしれませんし、結構思っているよりテンポが遅い曲で、歌いこなすのが面白くもあり、難しくもあり。普通のバラードって、もうちょっとテンポが上がっていたりするんですけど、そうじゃない。それが逆に味わいになっていればいいなと思って。ただ、最後のコーラスは、「はるかぜ」というより“なつかぜ”のように暑苦しいですけど(笑)。ライブではあのロングトーンが伸びるかどうか、3人がギリギリになって声を出しているセクションです(笑)。
──確かに、バラードでも熱い歌い方をされていますよね。特にサビに来るとかなりの熱量になっていて。
徳永だいたい暑苦しいです(笑)。3人が歌うので、1人で重ねる曲より3種類の声が集まったほうが厚みが出るので。
──大田さんの印象に残っている曲というと？
大田いろんな年に作った曲が収録されているので、全部が印象的ですけど。歌詞が早くできたのが「愛は太陽のように誰にでもふりそそぐ」という曲です。ものすごくスッと書けた記憶があります。
──イメージが掴みやすかったからですか？
大田そうでしょうね。スッと書ける曲と、ものすごく苦労した曲もあります。「キャンドル」「旅立ちの歌」は苦労しました。
──「キャンドル」のコーラスは今聴いてもすごいですね。
徳永難しいですね。
大田ステイといって、キレイに声を伸ばさないといけないので。やりがいはありますけどね。
──大田さんは歌詞を書かれていますけれど、自身では歌わないですよね。今回の『BALLAD COAST』では、「季節が変わる頃またここで会おう」だけ歌われていて。
大田はい、僕は上ハモの人なので。
徳永もしくはロックンロールな、アップテンポな曲。
大田ロックな曲を歌っていますね。「季節が～」はなぜか僕が歌うことになったんですけど、最初、僕じゃなかったと思う。
吉本たぶん、僕も歌っています。みんな一回は歌ってみるんですよ。そこで、歌声が曲に合う人に“どうぞ、どうぞ”って(笑)。僕も「野の花」を歌いましたけれど、“この曲は僕じゃない。どうぞ、どうぞ”って(笑)。
大田僕も「野の花」を歌ったんですけど、りんごちゃんが大友康平さんの物真似しているようで、ダメだこれはって(笑)。そういえば最近、僕らは徳永君の真似するのが流行っているんです。でもできない、声が良すぎて。
徳永リハーサルスタジオですぐ真似されるんですけど、笑っちゃうからできない。やめてくれって言ってるのに(笑)。歌いだしをいつも真似されるんです。
──こうして仕上がってみると、doaのバラードの魅力が凝縮されて伝わる1枚になりましたね。
徳永これだけバラードを並べて聴いたことって、自分たちでもなかったですから。バラードはアルバムに1～2曲ですからね。なのに、19曲もある(笑)。
──同じバラードでもテンポ感の違いで印象が変わると思いますけど、工夫とかあるんですか？
徳永作る時、テンポが1とか2違うだけで全然違う曲になるんです。テンポが違ったら、サビも刺さらない曲になる。だから、テンポが決まるまで時間がかかるし、逆にテンポが決まると8割できたと言えます。いつも曲を作る時、iPhoneに鼻歌で曲のモチーフを入れていて、それを流しながらテンポを解析して、計算して作り上げるんです。そうしないと、楽器主体でテンポが気持ちいいのと、歌って気持ちいいのと違ったりするんです。あと、リスナーの方が外で聴く状況に一番いいテンポとか、電車に乗りながら聴いてて気持ちいいテンポとか。わりと外のイメージが強いですね。バラードにはセオリーがあって、どのテンポだとどういう感じになるって決まってくるんですけど、それには囚われず、いちいち歌いながらこっちかなって測って作りますね。
