小林克也率いる伝説のバンド、「ザ・ナンバーワン・バンド」、昨年32年ぶりにワンマン・ライブを行ったが、今回は初期作品にゲスト参加していた難波弘之を迎えたスペシャル編成。新旧のオリジナル曲に加え、『ベストヒットUSA』ファンにはたまらない洋楽カバー曲も披露されるという。彼らにこのコンサートについて、そして「ザ・ナンバーワン・バンド」への思いについて訊いた。
「30年前のコンサートに来た人いるのかな?」と訊いたら、東京でも、名古屋でも、広島でも手が挙がった(小林克也)
小林克也(Vo)2018年にアルバムを出して、5本のツアーをやったんです。三十数年ぶりだったんだけど、その時に、「ああ、まんざらでもないな」と思ったんだ。そうじゃなかった?
佐藤輝夫(Gt)そうですね。「この歳になってやっていいのか?」って思ったんですけど、なんとか、できました。
小林それでビルボード東京には「いつでもいいからまたライブやってくださいよ」って言われて、「あ、じゃあ良かったんだ?」と思いました。ライブの時にお客さんに「30年前にコンサートをやった時、来た人いるのかな?」って訊いたら、東京でも、名古屋でも、広島でも手が挙がったんですよ! その時はもう鳥肌が立ちましたね。
佐藤今回のライブは『ベストヒットUSA feat.小林克也&ザ・ナンバーワン・バンド』という企画ですけども。
小林そうだね。12月1日に『ベストヒットUSA DJナイト』をやったでしょ? あの時出てくれたDJ4人、石野卓球、DJ KAORI、TOWA TEI、屋敷豪太、音楽だとかDJのスタイルだとかは違うんだけど、みんなおんなじようにお客さんにウケるんですよ。『ベストヒットUSA』が作ったお客さんという感じがとてもあって。ワイルドなことをやっても、みんな受け入れて楽しんでくれる、だから「ああ、いいお客さんを作ったんだな、『ベストヒットUSA』って」と思いました。
もう相当長いことやっている番組だから、お客さんの世代も広いんですよ。あの日来てくれたのも、30代、40代、50代、60代っぽい人もいて。その人たちがみんな「音楽を好き」という共通項を持っている仲間なんだな、っていう感覚がすごくあった。だから、今度のライブもとても楽しみです。
もう相当長いことやっている番組だから、お客さんの世代も広いんですよ。あの日来てくれたのも、30代、40代、50代、60代っぽい人もいて。その人たちがみんな「音楽を好き」という共通項を持っている仲間なんだな、っていう感覚がすごくあった。だから、今度のライブもとても楽しみです。
琢磨仁(Ba)ザ・ナンバーワン・バンドが、やっていて楽しいのは……克也さんは、もうエネルギーの塊っていうか。発想がすごいですね。歌詞にしても、「よくこんな言葉が出てくるな」っていう驚きの連続です。
成田昭彦(Dr)いくつになってもとんがってる。歌詞の発想とかも、全然若者の感覚だと思います。いつも挑戦的だし。
佐藤柳沢二三男さんは、今回初めてメンバーとして入っていただくんですけども。もともとのオリジナル・メンバーの斎藤誠さんとずっと仲がよくて。で、普段は琢磨さんや成田さんたちと一緒にバンドをやってる人だから、従兄弟がやって来たみたいな感じの存在なんです。
柳沢二三男(Gt)斎藤誠さんに、自分が参加できないスケジュールだから、代わりに行けと言われて(笑)、「光栄です」と。いつもメンバーから「ザ・ナンバーワン・バンド、おもしろい!」っていう話をさんざんきかされていたので。だからすごく楽しみなんです、何がどういうふうになるのか。
克也さんは、現役ロックンローラーの若さ(難波弘之)
難波弘之(Key)とにかく、克也さんも輝夫さんもアイデアの塊だから。普通のミュージシャンとは違うアイデアが出てくる、だからやっていてすごくおもしろいんですよね。一緒にやるのが楽しいだけじゃなくて、すごく触発されるっていうかね。
ザ・ナンバーワン・バンドの前に、1980年に克也さんと僕でYA YA’Sってユニットで、シングルを出したんですけど(「恋はスクラッチ」)、その時の打ち合わせから、やられちゃったのを憶えてます。「こんなのどう? こんなのどう?」って、すごいエネルギーでワーッてしゃべって、それでシングル1枚できちゃう。音楽業界の、冷静な感じの打ち合わせをすれば、普通に音楽は作れるんだけど、そうじゃなくて、打ち合わせでしゃべってる時から、「これは何かとんでもないものができるぞ」っていうワクワク感がすごいあって。
その初めてお会いした時、克也さん、もう40ぐらいで。僕は20代だったんですけど、年上のおじさんって感じでは全然ないんですよ。「若い」っていう言葉って、いろんな意味があるけど、克也さんは、現役ロックンローラーの若さっていうか。鮎川誠さんもそうなんですけど。鮎川さん、ギターを持って立っただけで、鮎川誠になるじゃないですか。音を出す前に、立ち姿がもうロックンロールというかね。それと一緒で、克也さんは、ロックンロールを語ってる時からかっこいいんですよ。
何人かそういう先輩っているんです。ムッシュさん(かまやつ)もそうでした。もうなんか、ロックが歩いて来る感じで。僕はすごい幸せですよね、そういう方と巡り会えて一緒に音楽をできたというのは。で、それから30年以上経って、またこうして一緒にやれるというのは、すごいうれしいです。
ザ・ナンバーワン・バンドの前に、1980年に克也さんと僕でYA YA’Sってユニットで、シングルを出したんですけど(「恋はスクラッチ」)、その時の打ち合わせから、やられちゃったのを憶えてます。「こんなのどう? こんなのどう?」って、すごいエネルギーでワーッてしゃべって、それでシングル1枚できちゃう。音楽業界の、冷静な感じの打ち合わせをすれば、普通に音楽は作れるんだけど、そうじゃなくて、打ち合わせでしゃべってる時から、「これは何かとんでもないものができるぞ」っていうワクワク感がすごいあって。
その初めてお会いした時、克也さん、もう40ぐらいで。僕は20代だったんですけど、年上のおじさんって感じでは全然ないんですよ。「若い」っていう言葉って、いろんな意味があるけど、克也さんは、現役ロックンローラーの若さっていうか。鮎川誠さんもそうなんですけど。鮎川さん、ギターを持って立っただけで、鮎川誠になるじゃないですか。音を出す前に、立ち姿がもうロックンロールというかね。それと一緒で、克也さんは、ロックンロールを語ってる時からかっこいいんですよ。
何人かそういう先輩っているんです。ムッシュさん(かまやつ)もそうでした。もうなんか、ロックが歩いて来る感じで。僕はすごい幸せですよね、そういう方と巡り会えて一緒に音楽をできたというのは。で、それから30年以上経って、またこうして一緒にやれるというのは、すごいうれしいです。
琢磨あと、克也さん、詞のリズムが英語のリズムなんです。切れ味がすごい。いろんな人が英語の歌を歌ってますけど、やっぱりちょっとリズムのノリが違うっていうか、気持ち悪いんですね。でも克也さんの英語って、しゃべる英語がそのまんま歌になってるから、すっごい気持ちいいんです。カバー曲なんかやると露骨にわかりますよ、かっこよさが。歌のリズムの切れ味、英語の、前に行く感じっていうか。ドラムの成田くんと僕で、リズムで支えてるんですけど、歌にぐいぐいひっぱられていく感じ。
成田うん。僕なんかは、英語のカバーとかをバンドでやってても、なんかノリが「こういうんじゃないんだよな」っていつも思ってたんですけど、そういうところが不満に感じないのがすごい。やっぱし、英語って独特のリズム感があるじゃないですか。そのへんを把握してる感じが。僕、ずっとアメリカで、アメリカ人のバックをやってたんですけど、それと同じで、普通にのれるんですよね。克也さんの英語って、南部訛りだって言われたんですよね?
小林そうだね。僕が最初に好きになったビル・ヘイリー&コメッツなんかのロックンロールも、カントリーも、メンフィス・ソウルもブルースも、みんな南部だから。
成田そういう英語って耳から覚えるしかない、理屈じゃないですもんね。そういうのが歌のリズムに表れるんですかね。
小林だから、アメリカ南部に行った時、すげえデジャヴ感があった。
全員(笑)。
小林初めて行ったのに。「ああ、このノリなんだ」と思って。
克也さんはすごいパンクな人(佐藤輝夫)
佐藤克也さん、2018年にリリースした最新アルバム(『鯛~最後の晩餐~』)でも、僕に宿題をくれたのは、「エド・シーラン、いいだろ? ちょっとエド・シーランっぽい曲を作ってよ」って言われて……エド・シーランって、ひとつのリフを延々くり返して、そこにAメロ、Bメロってのっかっていくでしょ。そういう感じで曲を作って、渡して、戻ってきたら「ナムアミダブツ IN 九品仏」ってお経の歌になっていて。
全員(笑)。
佐藤なおかつ、それですむのかと思ったら、「全部オケを抜け」って言われて(笑)。ベースもギターも何もかも抜いて、スッカスカの音になって。せめてもの抵抗で「鐘の音、“♪チ~ン”ってのだけ入れませんか?」って。
小林あの鐘はよかったよね。
佐藤ちゃんと浅草で買って来たんですよ(笑)。だから、すごいパンクな人だよね。僕は、パンクじゃなくてオーソドックスなんですよ。でも、その僕の発想を克也さんに提示すると、パンクになって返ってくるというか、全部壊してくれる。まったく思いもよらないものに変わる、そのコラボレーションのおもしろさっていうのはありますね。
小林だけど、何かを作るって、そういうことだと思うんだよね。たとえば、カバー曲の方がオリジナルよりよかったりするようなことって、あったりするじゃない? だけど、我々の曲は……たとえば「六本木のベンちゃん」にしても「うわさのカム・トゥ・ハワイ」にしても、誰も俺たちを上回ることはできない。そこだけが自慢だよね。