兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第15回[9月の巻~前編~]

コラム | 2018.09.26 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのフリーライター兵庫慎司が、自分が観たライブ等を日記形式でひとことレポートする連載、2018年9月前半編です。
まだ夏フェスシーズン終わってないのに意外と少ない15日間で5日でした。ではどうぞ。

9月5日(水) グループ魂 @ 豊洲PIT

ワンマンとしては実に3年ぶりのライブで、事前にオフィシャルサイトでリクエストを募ってその上位20曲を演奏します、という東阪ツアーの東京編。往年の人気歌番組を模して、港カヲルとバイト君がダブルで黒柳徹子に扮し、MCの度に主に破壊を(時々他のメンバーも)セットのソファーに座らせてトークする、という形で進行して行くが、まずいきなり「20曲は無理でした」と謝る。で、20位から11位は画面で発表、10位から1位は生で披露、その合間に10位以内に入っていない曲もやる、という構成。
で、予想外のことがふたつあり、それによって終始いつも以上に爆笑に包まれたステージになった。ひとつめはその20位から1位までの選曲。こういうリクエスト企画って、熱心なファンであればあるほど、いかにも人気が集まりそうな代表曲はどっちみち入るだろうからワザとそこは外してコアな曲に投票する、だから誰もが1位だと思う曲が意外に低かったり「なんでこれが?」って曲が上位に入ったりする──というのはグループ魂に限らずいろんなバンドで起こりがちなことなんですが、極端にそうなったのが今回のこのチャートでした。ユニコーンのトリビュート・アルバムでカバーした「服部」が8位だったり、『紅白歌合戦』出場曲の「君にジュースを買ってあげる❤」がそれより低い10位だったり。ちなみに2位は「ラブラブ♡マンハッタン」、1位は「モテる努力をしないでモテたい」でした。というわけで、ライブでやり慣れていない曲もふんだんに入っているのが大変だったり、「この曲人気あると思っていつもライブでやってたけどそうじゃなかったのか!」とショックを受けたりしたせいか、 破壊、「リクエスト形式、もう二度とやりません!」。あとこの5日後に大阪でも同じライブがあり、既にリクエストは締め切っていたがその大阪用に追加でもう一度募集することも告知した。
で。もうひとつは、バイト君(村杉蝉之介)の天然っぷり。何か振られた時の返しや、MCで進行しようとして全然うまくいかないさまなどなどが、いつの間にか目を見張るほどポンコツ化していて、そのたびにフロアもステージの上も爆笑。暴動さん普段から、メンバーを見て俯いて笑っていることが多いが、この日ほど笑っていたのを見たのは初めてかも。
とにかく、こちらも笑いました。長く書きすぎた、おもしろすぎて。

9月6日(木) 『TRIAD ROCKS Showcase 2018』@ 渋谷・TSUTAYA O-WEST

コロムビアのロック・レーベル、TRIADの新人を紹介するコンベンション的なイベント、ただし業界関係者招待だけじゃなくて普通にチケットを買っての入場も可能なやつ。彼女 IN THE DISPLAY、ももすももす、The Wisely Brothers、Halo at 四畳半の4組が出演。それぞれ違った方向に可能性を秘めていて、それに何より初々しくて(そりゃそうか)とてもよかったが、中でもThe Wisely Brothersのわが道を行く唯我独尊なマイペースっぷりと、Halo at 四畳半のあっという間にでかくなりそうな感触が、強く印象に残った。

9月8日(土) 江沼郁弥 @ 恵比寿LIQUIDROOM

plenty解散から1年、初めてのライブ。歌とギターの江沼、サポートでドラムとシンセ、という3人編成でのステージ。江沼とシンセのメンバーの前にはPCあり、バック・トラック多用。つまりplentyとは全然違うわけであって、江沼のリリックとメロディがこういう音を纏うとこうなるのか! という驚きに満ちているはずなのに、何か、「ああ、最初からこういう感じだったのかも」と感じてしまうくらい自然にハマっていた。これ、すごくスムーズにソロ活動を始められそうだなと思ったら、帰りにもうシングルのEPとCDのセットが先行発売されていたし、ファースト・アルバム『#1』が11月7日に出ることも発表された。

9月11日(火) エレファントカシマシ @ Zepp Nagoya

ニュー・アルバム『Wake Up』のリリース・ツアーの1・2本目だった6月25・26日Zepp NAGOYAが宮本浩次のノドの不調で延期で日程切り直し、それ以外のツアー日程が終わって各地の夏フェスも終わってファイナルがこの2デイズ、ということになりました。で、その2デイズの2日目を観に行って、SPICEのレポを書きました。
こちらです。ぜひ。

9月14日(金) 奥田民生 @ Zepp Tokyo

奥田民生が7月の西日本の豪雨災害を受けて急遽始めた樽募金ツアー『カンタンヒキガタビレ』のファイナル。このツアー、8月27日の広島も観てこの連載の前回のやつにも書いたけど、セットリスト、一部同じでけっこう違いました。ゲストは広島では川西幸一、手島いさむ、浜崎貴司でしたが、さすが東京、そのお三方に加えてスパゴー八熊慎一と寺岡呼人とトータス松本も登場。豪華。川西さんと呼人以外はひとりで弾き語りをやるソロ・コーナーあり。呼人はOTとのユニット「寺田」久々に復活、ということでお客さん大喜び。アンコールは全員で「トキオドライブ」と「デイ・ドリーム・ビリーバー」でした。
完全に余談。広島の時、川西さん、一回目はタイガーマスク、二回目はブラックタイガー(タイガーマスクの宿敵)のマスクを被って登場、すぐ脱ぐんだけどみんな「なんで?」となっていた、が、この東京では理由が明かされました。初日の福岡の入りの時、お客さんがいる中を通らないと楽屋口へ行けない動線で、シークレット・ゲストなのでばれるのはまずいからマスクをかぶって入った、せっかくマスクあるのでステージでも使った、みたいなことだったそうです。どうせなら獣神サンダー・ライガーにすればよかったのに、彼は広島電大附属高校出身だし、と思ったのですが、そんなこと思うのは私だけだろうから気にしないでください。

  • 兵庫慎司

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