兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第215回[2026年8月前半・ 爆風スランプ35年ぶりの日本武道館、「大人計画 別邸」のプレオープン公演、サマソニの2日目、ホフディランの玉入れライブなどの10本を観ました]編

コラム | 2026.08.26 16:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、半月に一回、生で観たすべてのライブのレポを書く連載の215回目=2026年8月前半編です。GRAPEVINEを二回観たり、すごく久しぶりに新宿MARZに行ったり、爆風スランプの35年ぶりの日本武道館を味わったり、「大人計画 別邸」のプレオープン公演に興奮したり、サマーソニックに1日だけ足を運んだり、ホフディランの「玉入れライブ」に大笑いしたり──という半月でした。

8月2日(日)16:00 GRAPEVINE @ 広島クラブクアトロ

4thアルバム『Circulator』の25周年再現ツアー、1本目が8月1日の岡山CRAZYMAMA KINGDOMで、2本目がこの広島クラブクアトロ。この日は、亀井亨の54歳の誕生日、というので、田中和将、MCで何度もそのことをオーディエンスに告げる。最初に言ったのが1曲目に入る前で、アンコールまでで4〜5回言ったと思う。その何回目かの時に「何歳になられたんでしたっけ」と振られた亀井、「54……あ、10万54歳」。「あ、」が素敵でした。
で、この日のライブで印象的だったことは3つ。ひとつめは、演奏と歌が、ツアー2本目なのに、もうか!というくらい仕上がっていたこと。初日を経て、だったからかもしれないが、ご本人たちも「うまくやれた!」という手応えがあったんじゃないか、と思うほどの、ごっついグルーヴだった。『Circulator』の中の多くの曲は、普段ライブで全然やっていないにもかかわらず。
で、ふたつめは、そんな『Circulator』の曲たちが、オーディエンスにウケるのは当然だが(このアルバムのツアーだから来た、という人もいるだろうし)、最新アルバム『あのみちから遠くはなれて』からの曲も、同じくらいウケていたこと。やっぱりあのアルバムって、近年のGRAPEVINEの中でも、特にいいんだな、ということを、改めて実感した。
それから3つ目は、動員である。満員。広島という「七大都市なのにツアーで飛ばされがち」な街の特性を鑑みるに、広島のクアトロって、ホールでやるバンドには狭すぎる、でもライブハウスでやるバンドには大きすぎる、というサイズだと僕は思っているのだが、この日は「こんなに!?」というくらい入っていた。GRAPEVINEの人気の根強さはわかっているつもりだけど、このキャリアのバンドで広島でここまで入る、というのは、「根強い」だけではなくて「増えている」ということだと思う、おそらく。

8月4日(火)19:30 アフロ ゲスト:今井らいぱち@ 新宿MARZ

7月29日に出たばかりの、ソロとしてのファースト・アルバム『無職覚醒』のリリース・ツアーの1本目。アフロがそうであるように「ひとりでやっている人」という縛りで、全公演、シンガーソングライターやお笑い芸人や落語家などのゲストがブッキングされていて、この日は今井らいぱちと、DJ君嶋麻里江がアフロと共演した。
君嶋麻里江はライブ前・転換中・ライブ後の三回プレイ。今井らいぱちは、もちろん例の、2026年のR-1グランプリで優勝した、アフロを元にしたネタをやって大ウケした。
彼の登場前に、アフロが前説を務めたが、例の「俺はゆるさない」の件をみんな知っているので話が早いというか、お客さんにとっても今井らいぱちにとっても「観やすい」「やりやすい」空気が、その前説から形成されていた、と感じた。
って、一応書いた方がいいか。ニコニコ動画の自身の番組『サテライト!(仮)curated』の中で、そのR-1の優勝ネタを観たアフロは「すばらしいじゃん!」と絶賛するも、「ここで俺が公認を出すことって、おもしろいかな?」と。らいぱちにギフトをしたい、と思ったら、今ここで「R-1、ようやくみれた 俺はゆるさない」とSNSに投稿した方が、観てもらえる結果になるのではないか──と、その場で投稿。狙いどおりSNS上が大騒ぎになった、という件である。
で、アフロは、ツアー1本目なので詳細に書くのはやめるが、『無職覚醒』の曲だけでなく、「あ、これも!?」という曲も、いろいろありなのがうれしい。前からライブでやっていたしYouTubeにMVもアップしているが、メジャー・リリースの際にレコード会社からストップがかかってアルバムに入れられなかった、というあの曲も歌った。

8月9日(日)11:30 全日本プロレス @ 後楽園ホール

全日本プロレスのJr.ヘビー級のトップを決める『ゼンニチJr.フェスティバル2026』の開幕戦の日で、全8試合のうち6試合が、そのリーグ戦。結果は以下。名前の横の◯×が勝敗です。
×田村男児 vs 青木優也◯
×小藤将太 vs “ミスター斉藤”土井成樹◯
×矢野安崇 vs 立花誠吾◯
×大森北斗 vs 望月成晃◯
◯ライジングHAYATO vs レオン・デ・オロ×
×MUSASHI vs 吉岡世起◯
というわけで、そのリーグに参加できないヘビー級の選手たちは、以下の2試合にまとめて出場しました。
第3試合 ◯斉藤ジュン・斉藤レイ・鈴木秀樹・本田竜輝 vs 青柳優馬・芦野祥太郎・綾部蓮・羆嵐×
第6試合 ◯宮原健斗・諏訪魔 vs 安齊勇馬・潮﨑豪×
休憩なしで8試合、というめずらしい進行の日だった。いつもは休憩ありで、6試合か7試合なので。この日の後楽園ホール、夜はプロレスリング・ノアの興行が入っていたからだと思う。
なお、開幕戦の日なので、第一試合の前に、出場選手たち12人全員がリングに上がって開会式が行なわれたのだが、その前にもうひとつあった。PWF会長で全日本プロレスと縁の深い、というか、昭和の馬場全日本を支えた大人気タッグ=ザ・ファンクスのドリー・ファンク・Jr.が、8月5日に85歳で亡くなったので、その追悼式が催されたのだ。この日の出場選手全員がリングを囲み、渕正信と大隅良雄PWF会長代理がリングに上がって、10カウントと黙祷が行なわれた。会場ロビーには献花台も設けられた。

8月9日(日)18:00 家主 ゲスト:フラワーカンパニーズ @ 渋谷クラブクアトロ

広島・東京・仙台・大阪・名古屋・東京の6本のツアー『YANUSHI LIVE TOUR 2026』、その日によってゲストがあったりワンマンだったりするが、2本目の渋谷クラブクアトロは、フラワーカンパニーズと対バン。
フラカンは、「恋をしましょう」で始まり「終わらないツアー」で終わる11曲。二回はさんだMCは簡潔にして、とにかく曲をいっぱいやろう、という感じだった。正解だと思います。4曲目「終身刑」で、鈴木圭介、「ちょっとだけ声を聴かせてほしいです」と、「ぶっとばせびゅんびゅん」と歌う→お客さんが「フーッ!」と歓声を挙げる、というのを、みんなで練習した上で実行。あれで、フラカンに詳しくない家主ファンも、かなり巻き込んだと思う。あと、6曲目と7曲目に「深夜高速」と「ハイエース」を続けてやったのと、最後の2曲が「NUDE CORE ROCK’N’ROLL」と「終わらないツアー」だったのが、うれしかった。
家主は、ツアーの途中なのでセトリは書かないでおくが、田中ヤコブ(vo&g)にとって、念願の対バンだったようで、1曲目に入る前に「ほんとに感無量です。生きていてよかった、そんな夜は、今日だったりするんでしょうね」と言って、拍手を浴びた。そういえば、2025年の『ARABAKI ROCK FEST.』での、ザ・コレクターズとフラワーカンパニーズの合体ライブで、最後の曲に田中ヤコブが参加してギターを弾きまくるのを観たことがある。
で、本編+アンコール、1時間25分弱くらいにわたって、田中ヤコブのギター、爆発しまくり。ギターがこんなに弾きまくるロック・バンド、今どきめずらしいと思う。新しいギターを買ったそうで(ギブソンSGのオールド)、それも関係あったのかもしれない。ご存知のように、家主、フロント3人がリードボーカルをとるバンドだが、そもそもそれも、田中ヤコブがギターを弾きまくりたいから、自分が歌わない曲を作りたいんじゃないの?と思う。
嘘です。そんなことはありません、自分が書いた曲は自分が歌うシステムだからです。これまで観たライブでは、そんなふうに思ったこと、なかったし。つまり、それほどまでに、この日の田中ヤコブは弾きまくっていた、ということだと思う。なお終演後、フラカンは4人は、それぞれ口々に「かっこいいね!」「すごいね!」「新しいギター・ヒーローだね!」と絶賛しておられました。
そんな家主の、このツアーのファイナルは、10月9日(金)LINE CUBE SHIBUYA、ワンマン。

8月11日(火祝)18:00 爆風スランプ @ 日本武道館

2024年に26年ぶりに再始動してから2年、35年ぶりの日本武道館ワンマン。「大きな玉ねぎの下で」というヒット曲があるように、あと「嗚呼!武道館」という曲もあるように、日本武道館は、このバンドとこのバンドのファンにとって、聖地と言うべき特別な場所なので、とても感動的な日になりました。
リアルサウンドにレポを書きました。アップされたら貼ります。

8月12日(水)19:00 阿刀大志と岸田哲平、ゲスト:馬場雄介 @ 銀座MUSIC&BARまじかな

ライター兼カメラマンの阿刀大志と、ライブカメラマン岸田哲平が、ライブ写真界の大先輩である中嶌英雄さんのお店、銀座のMUSIC&BARまじかなで行なっているトークイベント『阿刀と岸田のハッピーアワー』の3回目。
毎回カメラマン仲間をゲストに招いて、その人が写真家を志すまでのライフ・ストーリーや、現在の仕事などについて訊く、という趣旨で、今回のゲストは馬場雄介。古着屋→アパレルを経て33歳の時にカメラマンになった、というキャリアだそうで、とても興味深く聴きました。現在は東京で仕事をしつつ、地元函館でもウェブメディア「IN & OUT ハコダテとヒト」で活動をしている、という話も含めて。
さて。このイベントに行ったの、一回目以来だったのですが、その時にこの連載に書いた「岸田哲平、『自分が知っている人・知っていることは、みんなも知っている』という前提でしかしゃべれない問題」( ≫兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第209回[2026年5月前半・JAPAN JAM、OTODAMA、電気、『昭和四十年廣島産』、などの7本を観ました]編 )は、今回も治っていませんでした。最初はそのあたりに気をつけながらしゃべっていた、ように見えたが、15分と保たなかった。
哲平さんには、とりあえず、日常的に、ラジオを聴く習慣をつけてほしいです。

8月13日(木)16:30 大人計画 別邸プレオープン公演 朗読劇『海辺の“読”裁者』@ 中野水性

松尾スズキが新たに組織した、20代の役者が中心の「大人計画 別邸」が、演劇の公演の前に行なった、プレオープン公演の朗読劇。おもしろかったし、「そうか!」と思ったし、それはもうワクワクしたので、noteを書きました。
大人計画 別邸 プレオープン公演『朗読劇 海辺の“読”裁者』が、衝撃的におもしろかった

8月14日(金)18:00 GRAPEVINE、THE GROOVERS @ 渋谷クラブクアトロ

GRAPEVINEのサポート・ベース、金戸覚の還暦を祝うシリーズ・ライブ『金やん還暦サマーファイトシリーズ』が全部で4本あって、2本目と3本目がGRAPEVINE。この日のTHE GROOVERSとの対バンと、誕生日である8月25日にリキッドルームで行うThe Birthdayとの対バンである。
先に出たTHE GROOVERSは「Groovaholic」で始まり「最後の煙草に火を点ける」で終わる全8曲。6曲目の「無敵の日々」で、藤井一彦曰く「今日ね、なんでも金やんの言うこときかなきゃならない。どうしても観たいからやってくれ、って言われたんで」というわけで、田中和将が加わり、ツインボーカル&ツインギター状態になる。
観れてよかった、ありがとう金戸さん、と言いたくなるすさまじさ、歌もギターも。サビではオーディエンスみんな大合唱で、藤井一彦「さすがバインファン!」。田中、曲に入る前に、「好きすぎて。光栄でございます」藤井一彦「こんなとこで言うの、もったいないんで、ハッシュタグ付けて言って」。
で、GRAPEVINEは「FLY」「ねずみ浄土」「1977」「天使ちゃん」「ドスとF」「光について」「CORE」「超える」、アンコールで「COME ON」「my love,my guys」という。もう嬉死レベルの(そんな言葉ないけど)セットリスト。パフォーマンス自体も最高。アンコールの2曲は、藤井一彦が加わってギターを弾きまくる。「my love,my guys」の後半でおなじみになっている、ロックのスタンダード的な某超有名曲の歌詞をみんなで歌うところでは、藤井一彦も声を揃えた。そうか、藤井一彦とステージに立つなら、この曲をやりたかったんだろうな、と、それを聴きながら思った。

8月15日(土)11:00 SUMMER SONIC 2026(東京)の2日目 @ ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ

今年のサマソニは3日間開催。DAVID BYRNEと電気グルーヴが目当てで、2日目だけチケットを買いました。昔だったらもっと雑に毎日行っていたし、今年も3日目のJAMIROQUAIが観たくて迷ったが、チケット代+各手数料で22,485円、じゃあ2日だと……と考えると、腰が引けてしまう生活水準なのが情けない。
この日観たのは以下。全部観たのも一部観たのも含みます。
VIAGRA BOYS→PRETTY BLEAK→JON SPENCER→羊文学→Cornelius→電気グルーヴ→DAVID BYRNE
マリンスタジアムに一度も行かず、MOUNTAIN STAGEにずっといて、時々隣のSONIC STAGEに行く、という、それフェスの参加のしかたとしてどうなの?と、自分でも思う過ごし方でした。
ジョンスペの健在さに唸ったり(ベーシストもドラマーもいいんだ、また)、羊文学のとんでもない動員力に「ここまでか!」とビビったり、そして新曲を聴けて得した気持ちになったり、電気のセトリがいつもの「フェスの時の感じ」とちょっと違ったので喜んでいたら、最後にゲストで日出郎が登場して、「こないだのリキッドルーム22周年のライブに日出郎が出たのって(7月13日)、「リキッドだけのサプライズ」じゃなかったのか!」とびっくりしたり。
で、DAVID BYRNE、最高だった。終わったあと、一部SNSで賛否両論みたいなことになっていたが、これがロックであろうがなかろうがどうでもいい、というか、べつにロックじゃなくたっていい。このスタイルを発明して、実行して、さらに日々それを進化させているという事実に、まず感動するし。富も名声も、もう充分すぎるくらいあるはずの74歳が、今でもあんなにクリエイティビティに満ちていることにも。というようなことを、考えた。

8月16日(日)15:00 ホフディラン @ 代官山UNIT

ホフディラン、デビュー30周年シリーズの第二弾(第一弾はこちら)で、小宮山雄飛53歳の誕生日(の2日後)、ということで、『ホフディラン30th企画 小宮山雄飛大誕生祭ライブ ここへきて、まさかの玉入れやるよ』というタイトルのワンマン。
入場時に、お客さん全員に玉が5個配られ、その5個のうちの1個にナンバーが振ってある(で、カゴに入ると帰りに雄飛からのプレゼントがもらえる)。ライブの途中で「玉入れタイム」が始まったら、その5個を投げてください、落ちている玉を拾って投げてもいいです、終わったらもう一度玉を配ります──というような説明が、前もってされる。
その「玉入れタイム」の時は、フロアの中央にカゴが用意され、「玉入れソング お手元に玉をご用意ください」という文字が画面に出る。で、曲が始まり、間奏で画面の文字が「玉入れタイム発動中!」になったら、玉入れスタート。間奏明けで歌になるといったんストップ、そしてアウトロでまた「玉入れタイム発動中!」になったらスタート──という段取りである。
で、ライブの中盤の「LOW POWER」で最初にそれが行なわれたら、すごいことになった。色とりどりの玉が宙を飛び交うさまが、「あはは、何やってんだ」という大笑いな光景である、というだけでなく、お客さん、みんながみんな投げることに夢中で、トランス状態になっていて、その異常な空気が代官山UNITに充満しているさまが、なんかもうカオスで、ヤバいのだ。
「玉入れソング」が終わると、ワタナベイビー、「すごい盛り上がりだった。すみません、見くびってました、玉入れ」。で、雄飛がカゴから玉を出しながら数えたら、なんと132個。数え終わるまでにすごい時間がかかって、「こんなことにこんな時間使っていいのか」(雄飛)「この時間に『サガラミドリさん』1曲ぐらいは確実にできたと思います」(ワタナベイビー)というわけで、二回目以降は数えるのは省略、かつ、カゴのサイズが小さくなった。
という「玉入れタイム」、終わる度にその次の曲の間にお客さんに玉を配り直して、このあと本編後半で一回、アンコールで一回、ダブル・アンコールで一回、つまり計四回実行され、そのたびにトランスでカオスでヤバい状態になった。
おんもしろかった!最初にきいた時は「はあ?」としか思わなかったが、ありだわ、これ。バンドのライブであんな空気を味わったこと、ないもん。ゾクゾクした。と、ワタナベイビーに送ったら、「恒例行事にできるかな。毎年は厳しいですかね?」と返事が来た。「できると思います!」と返しました。
あと、このライブ、7月12日の30周年ライブの時に募ったリクエスト曲のうち、その日にやれなかった曲をやるライブでもあり、そのリクエストのお手紙は、7月12日に初登場した「DJ WATANABABY」が読み上げ──というふうに、玉入れ以外にも、企画が盛り込まれてもいました。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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