兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第162回[2024年5月後半・METROCKやレッチリや10-FEETなどの8本を観ました]編

コラム | 2024.06.14 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、月に二回もしくは三回、自分が観たすべてのライブのレポを書いていく連載の162回目、2024年5月後半編です。大は東京ドームで小は100人入るかどうかの下北沢SPREAD、行ったハコのキャパの差が極端な全8本になりました、今回は。

5月17日(金)19️:00 the telephones @ 下北沢SPREAD

4月7日(日)代官山UNITで発表した(詳しくはこちら 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第159回[2024年4月前半・The Street Sliders×2、凛として時雨とsyrup16gなどの7本を観ました]編 )、10 日連続で新曲を配信リリース→19曲入りフルアルバム『Life Is a D.A.N.C.E.』を配信→その2日後から下北沢SPREADで5日連続ライブ『Disco Punk Night vol.1』を行うthe telephones、その5 デイズの初日がこの日。毎日ゲストDJがブッキングされていて、初日はパソコン音楽クラブのmt.westが、オープンから20時までプレイした。
このSPREADというハコ、the telephonesが3人になって最初にリリースした「Keep on Dancing!!!」のMVで使われていて、それを観ればあきらかだが、ライブハウスというよりクラブである。バーカウンターがあって、DJブースがあって、ステージがなくて、フロアの片側の床にメンバー3人分の機材がベタ置きの状態。50人も入ればいい感じで埋まる、100人来たらもうギュウギュウ、くらいのキャパである。
ステージがない、いわゆる小バコで、the telephonesがライブをやると、どうなるか。メンバーとお客さんたちが、同じ高さの目線で、かつ至近距離で、向かい合うことになるわけです。機材ごと横向きのノブと松本誠治はまだいいが、石毛輝は正面を向いて歌う。
どうでしょう。そりゃあ戸惑うでしょう、お客さんたちも。石毛も、ライブが始まってすぐにそれを察したようで、MCで「(お客さんに)目を合わせると反らされる」と言って笑いを取っていた。
というような、「どうしたらいいんだろう?」「どうふるまうのが正解なんだろう?」というムードのまま進んでいくライブ、というのは、不自然ではあるし、ぎこちないもんでもあったけど、自分は正直、とても新鮮でおもしろかった、その空気感が。
以上、初日編でした。4日後の最終日編に続く。

5月18日(土)11:30 『METROCK2024』東京・1日目 @ 新木場・若洲公園

たぶん7年ぶりくらい、久々に足を運んだMETROCK。午前中に別件があったので、昼過ぎからになってしまったが、以下のアクトを観た。全部観たのも一部観たのも含む。
Saucy Dog→WEST.→04 Limited Sazabys→吉澤嘉代子→[Alexandros]
うわ、これだけか。と、書いてみると思いますね。他にも観たいのいっぱいあったので、悔いが残る。
でも、フォーリミのサウンドチェックでGENが突然クリスタルキング「大都会」のさわりを歌ったのに大笑いしたこと、吉澤嘉代子のバンドが弓木英梨乃・伊賀航・伊澤一葉・伊藤大地・ゴンドウトモヒコという凄腕揃いだと知ったこと、トリの[Alexandros]で川上洋平が、ステージ後方のビジョンに月を映し出して「ムーンソング」をやる前に、「映像の月を持って来たけど、今日は本物の月があります。これが野外のすばらしさです」と言ったのに「ナイス!」と思ったこと、などなど、収穫もいろいろあった日だった。

5月19日(日)18:00 10-FEET @ 横浜アリーナ

『10-FEET ONE-MAN LIVE 2024〜急なワンマンごめんな祭〜』と銘打って行われたライブ。毎年『京都大作戦』の会場になっている京都府宇治市の山城総合運動公園で、2022年11月22日に25周年ツアーのファイナルを行った以外は、これまで、大会場でのワンマンをやらなかった10-FEETにとって、初めてのアリーナ規模での屋内ワンマンである。アリーナ部分はスタンディング仕様。当然ソールドアウト。
なぜやることにしたのかは知らないが、バンドの状況を考えると、あきらかにこれまでやらなかった方がおかしいわけで、つまり「やらない」と決めていた、ということだ。その巨大会場ワンマンを、遂にこの日、やる。
よって、ファンにとってもバンドにとっても、いろいろ感無量だったり、感慨深かったり、涙が滲んだりするステージに、なった……ということは、まったくなかった。
照明が豪華だったことと、ステージ左右に若干の花道的なスペースが伸びていた以外は、いつもどおり。3人のパフォーマンスも、オーディエンスのリアクションも、いつもどおり。そこがとても素敵だった、こっちも気負わずに、虚心に、いい曲・いいパフォーマンスを楽しめて。
でも、考えてみれば、ワンマンこそなかったものの、でっかいフェスのメインステージに立っている10-FEETを、こっちは何度も観ているわけで、そういう意味でも違和感がないんだな、と、観ながら気がついたりもした。
あ、でも、通常のツアーだと対バンがあるので、本編28曲(予定では26曲だったが、22曲目の「第ゼロ感」の後に急遽2曲足した)・アンコール3曲の合計31曲も聴けた、というのは、「いつもどおり」ではなかったかもしれない。いい曲がこんなにいっぱいあるんだなあ、という、とても今さらなことを、改めて実感した。

5月20日(月)19:00 RED HOT CHILI PEPPERS @ 東京ドーム

前回の来日(こちら 兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第126回[2023年2月中盤・サニーデイ、バンプ、マイヘア、レッチリなどの6本を観ました]編 )から、わずか1年3ヵ月というインターバル。つまり、同じワールド・ツアーでもう一回日本に来た、ということだ(ただし招聘元は、前回はLIVE NATION JAPANで今回はH.I.P.)。前回は東京ドーム1日のみだったが、今回は5月18日(土)・20日(月)の2デイズ。
チケット代、決して安くはないので、「同じツアーかあ、どうしようかなあ……」と、来日が決まった時は迷ったが、行ってよかった! 前回と全然違うメニューだったので。後で知ったが、18日(土)とも全然違う選曲で、2日とも演奏したのは17曲中6曲だけだったらしい。
2022年にリリースした2作のアルバムからは4曲で、他は歴代の大名曲が次から次へと演奏される、イントロが鳴るたびにドームが「おおおっ!」とどよめくセットリスト。新作からもうちょっとやってもいいのに、という気もしたが、正直うれしかった、長年聴き続けている大好きな曲をいっぱい聴けて。唯一、「Scar Tissue」が聴けなかったのが残念だったくらい(1日目はやったそうです)。
初期〜中期の、はっちゃけたレッチリも好きだけど、アルバム『Californication』(1999年)で突然枯れてたそがれてからのレッチリも、
自分は大好きであることを、実感したライブでもあった(当時は「ええっ? どうした!?」と思ったけど)。
あと、ドーム公演として考えるとあきらかにシンプルで素朴なステージセットや演出も、メンバー4人それぞれの歳の取り方も、そもそもの個々の演奏力やプレイスタイルやキャラクターも含めて、レッチリって自分にとって、これ以上の存在はいない、究極のバンドなんだなあ、というようなことも、改めて考えたりした。
ただ、コロナ禍前はフジロックやサマーソニックの出演でも普通に来日していたけど、2023年は即完ではなかったが完売、今回は2日とも即完、という状況を鑑みると、今後はフェスで来日するのは、難しいかもしれない。とも思った。

5月21日(火) 19️:00 the telephones @ 下北沢SPREAD

the telephones下北沢SPREAD5デイズという狂った企画の初日=金曜日を観て、土日月と別のライブに行って、最終日にまた観たのがこの日。
二回観てよかった。それも、初日と最終日でよかった。小バコのクラブでステージがないので、メンバーとオーディエンスが超至近距離&目の高さが同じですぐ目が合っちゃう、どうしたらいいの、どう楽しむのが正解なの!? という戸惑いでフロアが包まれたまま終わった(それがおもしろかった)初日とは、まったく違う空気感になっていたので。
すんごい熱狂。終始まさにパーティー、メンバー3人も超満員のオーディエンスも、とにかく楽しそう。バンドも慣れたしお客も慣れたんだと思う、この場所に。で、今日初めて来た人も、そういうあっつい空気が自然にでき上がっているから、素直にそこに身体を委ねることができたんだと思う。
4月7日(日)の代官山UNITに出演するはずだったが、体調不良でキャンセルになった4s4kiが登場、コラボ曲「Pink Gang」を一緒にやる、というサプライズもあった。代官山UNITの3日後に配信リリースされた曲である。
UNITで初お披露目→配信、という段取りだったんだろうな。それが果たせなかったのが気になっていたんだろうな。4s4ki、体調不良と療養のため、UNITだけじゃなくてその時期のライブが根こそぎキャンセルになったけど、その後そんなに長期化せず復帰できてよかったなあ。などと、3人以上に暴れ回りながら歌う彼女を観ながら思った。
あ、オープン時刻からライブ開始までの1時間のDJ、この日はメンバー3人でした。ライブ前はまだいいが、終わった後は大変そうだった、汗を拭く間もなくDJブースへ移動していて。
なお、アンコールで次の企画ライブを発表。『DISCO de さいたま!!! Disco Punk Night vol.2』と銘打って、7月22日(月・祝)HEAVEN’S ROCKさいたま新都心、夜の本気ダンスと対バン、だそうです。

5月23日(木)19:00 THE NEATBEATS、うつみようこ&YOKOLOCO BAND、フラワーカンパニーズ @ 荻窪TOP BEAT CLUB

1年ぶりの、この3バンド@荻窪TOP BEAT CLUBでの企画。『PACKAGE RUNS GREAT in 荻窪〜〜コニッサンの日』というタイトルが付いている。1年前も観に行きました。詳しくはこちら。
兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第135回[2023年5月も数が多いので3回に分けた、その後半編・マカロニえんぴつvsユニコーン、Calmera休止ライブ、電気、バンプなどの6本を観ました]編
その1年前の時は、ヨコロコ→フラカン→THE NEATBEATSの順だったが、今回はTHE NEATBEATS→ヨコロコ→フラカンという順で、さらにTHE NEATBEATSの前に飛び入りゲストあり。
フラカンのミスター小西が頭バンダナとサングラスを装着してCHAGE、THE NEATBEATSのMR.LAWDYがカツラを装着してASKAに扮して「YAH YAH YAH」を熱唱したのだった。
最初は「誰? 何事?」とポカンとしていたオーディエンス、歌が始まると爆笑。CHAGEの小西がリードボーカルで、ASKAのMR.LAWDYがギターを弾く、という謎の役割分担だった。なら扮装も逆にすればよかったのに。と、終演後に小西に言ったら、「土佐(MR.LAWDY)の方が、顔がかわいくてASKAっぽいから」という、よくわからない答えが返ってきた。
トップのTHE NEATBEATS、シャープでソリッドなロックンロールと、爆笑MCの極端なコントラストが、この日もとにかく見事。いつ観てもいつ聴いてもおんなじで、いつ観てもいつ聴いてもかっこいい。ラストの「黒いジャンパー」では、恒例「裏地は赤のチェックだ!」の大合唱。
ヨコロコは、ヴァン・ヘイレン「JUMP」で始まってびっくり(僕は初めて観たが、10年くらい前にもやったことがあるそうだ)。ギターソロの後半のライトハンド奏法のところ、どうするんだ竹安堅一、と思ったら、ちゃんと弾いていて、さらにびっくり。キダ・タロー先生の冥福を祈って、吉本新喜劇のテーマも演奏された。
フラカンは、全体の8割くらいが、最近出したばかりの新曲と未発表の新曲、という、現在回っているツアー『今が旬』とは異なる、とても新鮮なセトリで、観れて得した気分になった。
アンコールは全員登場して「真冬の盆踊り」。土佐のカツラ、ライブのあちこちのタイミングで、いろんな人はかぶっていたが、アンコールでかぶったキュウちゃん(ヨコロコのドラマー、クハラカズユキ)が、いちばんウケていた。

5月26日(日)19:00 からあげ弁当 ゲスト:Bye-Bye-Handの方程式、Sunny Girl @ 渋谷Spotify O-nest

ニューEP『最高更新』の東阪リリース・ライブの東京編(大阪編は6/7(金)心斎橋JANUS)で、ゲスト2組=Bye-Bye-Handの方程式とSunny Girlを経て、トリに登場。
1本のライブの中で「チキン野郎」(1分20秒弱ぐらいの曲)を、何度も演奏する人たちであることは、さすがにもう認知していたが、この日は1曲目で「チキン野郎」を演奏し終えた瞬間に、焼きそば(Vo&G)が「セトリ変えます!」とか叫んで即座にもう一回やる、という展開に。大笑いした。もちろん後半にも同曲をプレイ。
アンコールまで含めて50分くらい、とにかく速いし荒い。力が入りすぎて3人の演奏の噛み合わせが崩れちゃう瞬間もあるし、歌のキーが低くなるたびに焼きそばの歌の音程が怪しくなったりもするが、そういうウィークポイントも気にならないくらいの勢いがある、今のこのバンドには。
ライブハウス・キッズやパンク好きの外側にまで届くんじゃないか、これは。20年くらい前にMONGOL800の曲が、ライブハウスなんて行ったこともない人たちにまで届いたように。なんてことを思わせる普遍性を湛えている気もする、どの曲のメロディも。ライブを観るたびに次が楽しみになるバンド。

5月30日(木)19:00 古市コータロー ゲスト:多数 @ EX THEATER ROPPONGI

THE COLLECTORS古市コータローのソロアルバム『Dance Dance Dance』のリリース・ツアーのファイナルの東京公演で、コータロー60歳の誕生日の当日に行われたライブ。
バンド・メンバーは古市コータロー(Vo&G)/浅田信一(G&Cho)/鈴木淳(B&Cho)/古市健太(Dr)/オヤイヅカナル(Key)/真城めぐみ(Cho)の6人編成。で、この東京公演は、『Dance Dance Dance』に詞曲を提供した人たちも含めて、ゲスト多数。
まず、コータロー&メンバーが登場する前に前説を務めたアイゴン(會田茂一)が、そのまま1曲目にもギターで参加したのを皮切りに、6曲目で西寺郷太、8曲目で佐々木亮介、10曲目で江沼郁弥、11曲目でYO-KING、13曲目で井ノ原快彦が参加。
そして、15曲目が終わったところでコータロー以外の全員がはけると、ウエノコウジとクハラカズユキと神野美伽が登場、コータローとの4人で2曲(ピンキーとキラーズの「恋の季節」と勝新太郎の「座頭市子守唄」)を演奏する。
続く18曲目では、仲井戸麗市が現れてギターソロを弾きまくり、19曲目ではそこにモッズコート&「NICK! NICK! NICK!」Tシャツ姿の大森南朋がメイン・ヴォーカルで加わった。
本編は21曲で終了。アンコールで歌う前にコータロー、「40ん時よりも50ん時よりも全然うれしいわ」と、喜びを言葉にする。アンコールの2曲目ではゲストが全員登場して賑やかなエンディングになったが、コータロー、歌の最後の最後で声を詰まらせて歌えなくなる。いやあ、いい夜でした。
余談。仲間のミュージシャンたちが、いっぱい観に来ていた。フラワーカンパニーズのグレート&竹安、スピッツの田村&﨑山、ゴーイング・アンダーグラウンドの松本素生、SCOOBIE DOのMOBY、やついいちろう等々。アニキのめでたい日だから集まったんだろうけど、平日だったから来れたというのも大きいんだな、と、帰り道に気がつきました。週末は自分のライブがあるし、みなさん。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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