振り返ると、今回は5本とも、とてもレア度の高いライブだった気がしてきた。この日限りのセッション、清水音泉しかやらないラインナップのイベント、レア曲だらけのFCツアー、約半数が新曲の生誕祭ライブ、活動していること自体がレアなバンド(22年ぶり)、という。
10月10日(火)19:00 アナログフィッシュ&中村一義 @ 渋谷WWW
10月10日は「トトの日(魚の日ということですね)」、ということで、毎年この日に何かしらのライブを行っているアナログフィッシュ、今年2023年は中村一義との対バンで、中村一義のバックもアナログフィッシュが務める、という企画。
長野県下伊那郡喬木村の佐々木健太郎の部屋で、健太郎と下岡晃で曲を作って自宅録音を始めたのがこのバンドのスタートで、当時ふたりは(特に健太郎は)、自宅録音で作った音源で世に出たばかりだった中村一義に、力いっぱい影響を受けていた。ということを、昔から公言していた、つまり、念願の共演がこの日だったわけです。
1曲目の「Copy & Paste」から10曲目「はなさない」までが、アナログフィッシュのライブ。出たばかりの「おもいつくかぎりのすべて」は3曲目にプレイ。
で、11曲目から16曲目までが、中村一義が自身の曲をアナログフィッシュの演奏で歌う時間。「ラッタッタ」「ジュビリー」「君ノ声」「最高」「犬と猫」「1.2.3」というセットリスト。
17・18曲目でアナログフィッシュだけになって「荒野」「Lover」で本編を締め、アンコールでこの日リリースされた新曲「Super Loud」をやる。そして中村一義が加わり、「アンセム」「キャノンボール」と、お互いの曲を1曲ずつ。さらにダブルアンコールで、アナログフィッシュが「抱きしめて」を追加。
という、どちらかのファンならとてもうれしいし、両方好きだったりした日にはもうたまらない、という時間だった。いやあ、いいもん観た。という気持ちです。
本日の渋谷WWWもありがとうございました!
Analogfishにとって大事な #トトの日
みなさまのおかげで素晴らしい夜になりました☺️✨
お気をつけてお帰りください🤲🏻#Analogfish #中村一義 pic.twitter.com/QOroBdAJBc— Analogfish / アナログフィッシュ (@Analogfishinfo) October 10, 2023
10月14日(土)14:30『OYZ NO YAON! Re:6〜朱夏の逆襲〜』 @ 大阪城音楽堂
関西のイベンター清水音泉のイベントで、今年で6回目になる『OYZ NO YAON!』。ラインナップは、出演順に書くと、ピーズ/フラワーカンパニーズ/錦鯉/真心ブラザーズ/錦鯉/怒髪天。漫才の錦鯉は出番二回で、真心ブラザーズでもベースを弾いたフラカンのグレートマエカワも、出番二回でした。
・はる(大木温之)の立ち位置が左端の日もセンターの日もある最近のピーズ、この日は左端でした。
・フラカンの「発熱の男」ではるが飛び入り、鈴木圭介と一緒に歌う→ラストの「真冬の盆踊り」ではる&アビさん(安孫子義一)が乱入、圭介と3人でヘッドスライディングなどでステージ前方の床を転げ回る。
・錦鯉、1ステ目から大ウケ。
・真心ブラザーズ、「素晴らしきこの世界」をやった!
・怒髪天、ラストの「オトナノススメ」は増子直純と錦鯉長谷川雅紀のデュエット、他の出演者も全員登場。歌の後半で雅紀さん、なぜか歌いながら涙を流していて、去り際に増子さんに「泣くなよ!」と励まされる。
などが、個人的なハイライトでした。単に観たくて大阪まで行った甲斐があった。もっと詳しいレポを読みたい方は、SPICEに鈴木淳史が書いているのでどうぞ。人が書いたものを勧めてどうする。
≫ 怒髪天、真心ブラザーズ、フラワーカンパニーズ、ピーズ、錦鯉が『OYZ NO YAON!』出演ーーオヤジたちが雨の大阪城野音で繰り広げた素晴らしき世界
10月15日(日)17:00 クリープハイプ @ 東京ガーデンシアター
7都市11公演を回る「太客倶楽部(ファンクラブのこと)10周年ツアー『ふとした』」の東京公演は、10月18日(水)のZepp Hanedaと、この東京ガーデンシアター。ファンクラブのツアーがこのキャパってすごい。
で、ファンクラブのツアーならではのレア曲、多数。長谷川カオナシの歌う曲も多数(本人がMCで「『めっちゃ歌うやん』とそろそろ思われだしてきた頃かなと」と言うほど)。
となると、いわゆるフェスなんかで盛り上がるようなアップテンポな曲よりも、そうじゃないタイプの曲の占める割合が上がるわけで、特に前半から中盤にかけてはそうだった。
が、自分の場合、クリープハイプで思い入れがあるのはそういう曲が多いので、シンプルにうれしかった。もっとも好きな「ナイトオンザプラネット」と「二十九、三十」、どちらもそういう曲だし。あ、どちらもやってくれました。
それから。尾崎世界観のMC、この日も絶好調、というか百発百中。最近、歳のせいか、それ以外も理由があるのか、たぶん両方なんだろうけど、MCが長いライブが、ちょっとしんどくなってきた。くだらないことを言っているやつは平気だけど、熱いやつやシリアスなやつは、ちょっと。なのだが、尾崎のMCはずっと聴いていられるし、「なるほどなあ」「そうだよなあ」と、言葉を正面から受け止めてしまう。
しゃべりのうまさ、語り口の心地よさ、言語能力の高さが、並のミュージシャンのレベルではない、というのはもちろんあるが、それだけではない。「いや、気持ちをそんなに説明しなくても。音楽で伝わるから、みんなわかってくれるから大丈夫だよ」と言いたくならないのだ、尾崎には。なんででしょうね。もうちょっと考えてみます。
10月17日(火)19:00 ワタナベイビー @ 渋谷7th Floor
ホフディランのワタナベイビーが、55歳の誕生日に行った生誕記念ライブ。歌とギターの本人以外は (「ゲスト」とクレジットされていたが、どう考えてもバックメンバーであってゲストではないと思います)ベース:田中貴(サニーデイ・サービス)、ドラム:オータコージ、ユーフォニウム:ゴンドウトモヒコ、ピアノ等:中村竜(空中カメラ)という面々。豪華。
本編18曲・アンコール1曲の全19曲で、なんと、そのうち10曲くらいが新曲。って、「くらい」と付けたのは、だいぶ前に作った曲や、以前に何度か行った「作詞作曲ライブ」(即興で詞曲を作るライブ)の時の曲や、某テレビ番組のプレゼンに出したが落ちた曲なども含む、言わば「音源化はまだ」という意味での新曲が多かったからです。
とはいえ、やり慣れていないし、こっちも聴き慣れていないという意味では、やはり新曲なわけであって、本人はもちろん、おそらくこの日のためだけに10曲のうちのほとんどをゼロから覚えたメンバーたちも、大変だったのでは、と思う。でも、その分、新鮮さと刺激に満ちたステージだった。
今年2月10日に亡くなった信藤三雄に、彼が監督した映画『男はソレを我慢できない』(2006年)の挿入歌である「恋の☆散歩道」を捧げたり(ワタナベイビーはこの映画に出演もしている。主人公の竹中直人の舎弟、という、かなりいい役でした)、「い・け・な・いルージュマジック」のカバーをやったり、という時間もあり。
とにかく、そんな、歳を重ねてなおアグレッシブな姿に、「俺もがんばらねば」と、素直に思わされた。ワタナベイビーと同学年なもんで、私。小沢健二、小山田圭吾、片寄明人、桜井秀俊、チバユウスケ、ヒダカトオル、掟ポルシェ。等も同学年です。
55歳バースデーライブ!もう最高でした。やってよかった。チャレンジしてよかった〜!
皆さま、本当に素晴らしかったです。ありがとう〜 pic.twitter.com/J0LVCTVAAh— ワタナベイビー (@shinwatanababy) October 17, 2023
10月21日(土)18:00 The Street Sliders @ KT Zepp Yokohama
5月3日の日本武道館の終演時に発表された全国ツアーの横浜公演、運良くこの日のチケットが取れて観ることができた。あ、武道館の時は、オフィシャルのレポを書きました。こちらです。
≫ The Street Sliders、22年ぶりに日本武道館再集結&ツアー『ROCK'N'ROLL』開催決定! ライブレポート到着
日本武道館の時とまったく同じセットリストかもしれない、それでも全然いい、と思ったが、どちらも全17曲で、セットリストの大きな流れは同じだが、そのうち4曲が入れ替えられていた。特に「マスターベーション」を生で聴けたのがうれしかったです。4人も心身共にコンディションがとても良さそうで、楽しそうにやっておられたのもうれしかった。
ただ、観ながら、「このツアーが終わったらどうなるんだろう?」ということが気になったが、最終日が終わった時、次のツアーが発表された。3月6日立川ステージガーデンで始まり、4月21日NHKホールで終わる8本。
で、公式サイトによると「鳴り止まない拍手に応え1人でも多くの方が参加出来ることを願い 心からの『Thank You!』を込めて THE STREET SLIDERS 40周年Yearを締めくくる 40th Anniversary FINAL TOUR決定!」だそうで、つまり、少なくとも一旦はこれが最後、ということですよね。
うーん、そうかあ。自分は今回の横浜でチケット運を使い切った気がする、立川もNHKホールも取れる気がしない。じゃあ狙い目は新潟か沖縄かなあ。などと考え中です、これを書いている今。