兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第144回[2023年10 月前半・サザン、エレカシとCaravanの日比谷野音、などの6本を観ました]編

コラム | 2023.10.30 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブのレポをアップしていく連載の144回目です。通常は月二回アップですが、1ヵ月に観た数が15本以上の時は、月三回アップにしていて、2023年10月は16本だったので、そのパターンになりました。
 というわけで、以下、1日から9日までに観た6本です。

10月1日(日)17:00 サザンオールスターズ @ 茅ヶ崎公園野球場

 『サザンオールスターズ「茅ヶ崎ライブ2023」』4デイズの最終日。リアルサウンドにレポを書きました、「茅ヶ崎ライブ」、レポでもない限り現場で観れないので(チケット取れないし、観るだけの関係者招待なんかもほぼないと思う)、依頼があって、ただただうれしかったです。
 リアルサウンドにアップされたレポはこちら。https://realsound.jp/2023/10/post-1453801.html

10月2日(月)18:30 フラワーカンパニーズ×桂雀太×笑福亭笑利、MC:樋口大喜 @ 北とぴあつつじホール

 スペースシャワーが企画している落語と音楽のイベントの4回目『スペシャ寄席 其の四〜フラカン 全開の噺 編〜』。落語とバンドの共演、というだけでなく、ここでしか観れないコラボが生み出されている、とてもいいイベントだった。
 ぴあにレポを書いたので、ぜひ。
https://lp.p.pia.jp/article/news/291655/index.html?detail=true

10月3日(火)19:00 羊文学 @ Zepp Haneda

 「羊文学 Tour 2023”if were an angel,”」全12公演のファイナル=Zepp Haneda2デイズの1日目。このバンドと仕事をしたことはないが、今年の夏はフェスで何度か観て、百発百中で良かったのでワンマンも観たかった、あとマネージャーが古くからの知り合いで、声をかけてくれたので、行きました。行ってよかった。堪能した。
 羊文学のライブを観ていると、そうか、俺は過剰なものにちょっと疲れているのかも、だからこういう淡々とした(ように見えるスタンスの)ものに惹かれるのかも、と思う。すんごいポップでわかりやすいとか、MCが長くて熱いとか、とてもサービスしてくれるとか、そういうものを否定する気持ちは全然ないが、「ちゃんとやります、あとは聴き手に委ねます」というような、羊文学くらいの温度感のパフォーマンスが、今の自分には心地いいんだなあ、と。かといって、「それでもわかる人にはわかるでしょ」ではなくて、「それでわかるはず、伝わるはず」という自信を感じる、というか。
 カネコアヤノのライブにも、それを感じる。あとキャリアとか全然違うけど、GRAPEVINEにも。坂本慎太郎もそうだな。そういえばカネコアヤノと坂本慎太郎、今度対バンあるな(11/30、Zepp Haneda)、あれチケット申し込み忘れたの、大失敗だったな……羊文学から話がそれてしまったが、まあ、そんなようなことを感じながら、楽しみました。

10月6日(金)19:00 怒髪天とフラワーカンパニーズ @ 広島SECOND CRUTCH

 恒例、怒髪天とフラカンのカップリングツアー『ジャンピンク乾杯TOUR』、去年に続き今年も開催、その初日。なんでそんなツアー名なのかご存知なくて、気になる、という方は、検索とかしていただければ幸いです。
 うちは両親とも元気だが高齢なもんで、なるべくまめに故郷の広島に帰るようにしていて、どうせ帰るならなんかのライブとくっつけたい、というので、フラカンが広島に行くたびに帰っている。というわけで、今回も観た。
 先攻怒髪天で後攻フラカン。まず怒髪天、すごいテンションですごい勢い、前半で増子さん、シャウトしようとしたら胸焼けに襲われて、一回曲を止めてやり直すくらいの大熱演。それにあおられたというか「ヤバい、食われる」と思ったんだろうな、フラカンもそれに負けぬ全開のステージでした。
 怒髪天はフラカンの「深夜高速」、フラカンは怒髪天の「歩きつづけるかぎり」をカバー。そしてアンコールは2バンド全員で、カラオケでザ・ドリフターズの「ゴーウェスト」を歌った。今年の『ジャンピング乾杯TOUR』、「〜西にはあるんだ 夢の国ンニキニ〜」という、この曲の歌詞からいただいたサブタイトルが付いているからですね。
 で。これは「観たやつ」というより「自分がやったやつ」なんだけど、そのライブの後、グレートマエカワは、bar edgeという素敵なクラブでのイベント『ステレオジュゲム』に、ゲストDJで出演した。
 このイベント、フラカンが広島に来るのに合わせて、僕の友人の地元の2店「STEREO RECORDS」と「お好み焼ジュゲム」に相談して、その両店の共同開催という形で、行いました。一度、2021年の1月に企画したが、コロナ禍がひどくなって中止にせざるを得なかった、そのリベンジです。
 両店のお客さんやフラカンのファンがいっぱい来てくれて、とてもいいイベントになったし、グレートさんも楽しんでくれたようで、何よりでした。フラカンの小西とローディのQ太郎も遊びに来てくれた。

10月8日(日)17:00 エレファントカシマシ @ 日比谷野外大音楽堂/Streaming+

 エレカシ年イチ恒例の日比谷野音(今回で33回目)。Streaming+での生配信と、全国14館の映画館でのライブ・ビューイングもあり。第一部9曲、第二部10曲、第三部8曲、アンコール3曲、の全30曲。エレカシの(宮本浩次のソロも)ライブは、だいたいいつも、第一部と第二部とアンコール、という形なので、第三部があったのがちょっと新鮮。メンバー4人と、サポートでキーボードの細海魚(やはり野音はこの人)の5人編成で、ギターのサポートメンバーはなし、だったのも、ちょっと新鮮だった。
「もしも願いが叶うなら」や「甘き絶望」「星くずの中のジパング」あたりの「お、ちょっと久々では」という曲も、今年3月に出た「yes.I.do」も、この日がライブ初披露だった新曲「No more cry」も、どれも良かったが、エレカシの日比谷野音となると、アンコールで「星の降るような夜に」をやってくれるのを、何よりも楽しみにしてしまう。
 下手すると「やらなかったらどうしよう」と心配になってしまうほどである。というのは、自分でもよくわからない心理状態だが、今年もアンコールの1曲目でやってくれて、うれしかった。
 作詞作曲とも、ベースの成ちゃん(高緑成治)と宮本の共作、7作目で、エピックソニー&双啓舎時代の最後のアルバムである『東京の空』収録のこの曲の、サビの「歩こうぜ 歩こうぜ」で、宮本の歌に石くん(ギター石森敏行)がハモリをつけるのを聴くと、「ああ、エレカシの野音だなあ」と実感します。

10月9日(月祝)17:30 Caravan @ 日比谷野外大音楽堂

 エレカシの翌日も日比谷野音でCaravan、こちらは14回目だそうです。この日はCaravanの49歳の誕生日で、開演前は小雨が降っていたが、本番が始まると同時に止んだ。そのまま終演まで降らなかったが、帰路について家の最寄り駅で下りたら、けっこう降っていた。強運でした、今年のCaravanの野音は。
 客席中央のサブステージで、ひとり弾き語りで「Feed Back」でスタート、という粋な演出。昔のCaravanの野音も、こんなふうに始まった記憶がある。
 ニューアルバム『1974』が、9月13日にリリースされたばかりだが、その中からは数曲で、キャリア全体から選曲されたセットリストだった。全20曲で、ラストは「Soul Music」。
 どの曲も、というより、どの瞬間もすばらしかった。得難い時間でした、今回も。Caravan、最後に「今までで最高のバースデーになりました、ありがとう」と、オーディエンスにお礼を言った。
 なお、今年で100周年の日比谷野外大音楽堂は、来年9月いっぱいでいったんクローズして建て替えが決まっている。なのでCaravan、今の野音でのライブはこれで最後。と、MCで言った。
 それで気がついたんだけど、前の日のエレカシは、特にそういうことは言わなかった。単に言わなかっただけなのか、それとも、来年も9月までの間に野音が取れる可能性がゼロではない、と踏んでいるのか。どっちなんだろう。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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