兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第142回[2023年9月前半・フラカンとピーズの日比谷野音、佐野元春、4年ぶりの『UKFC』など5本を観ました]編

コラム | 2023.09.21 19:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブのレポを、半月に一回アップする連載の142回目=2023年9月前半編です。
 今回の個人的トピックは、4年ぶりに本来の形で開催された『UKFC on The Road』を観れて、オフィシャルのレポを書けたこと。毎年の会場だった新木場スタジオコーストは2022年1月でクローズしてしまったが、今年は歌舞伎町のZepp/BLAZE/MARZ、大中小のライブハウス3つを使ったサーキットイベントとして、行われた。
 こんな手があったか。観やすいし、移動しやすいし、すげえいいじゃん、もう来年もこの形で……と、思ったところで気がついた。BLAZE、来年7月いっぱいで閉まるんだった。うーん。

9月2日(土)17:00 フラワーカンパニーズ、ピーズ @ 日比谷野外大音楽堂

 フラワーカンパニーズは昨年、日比谷野音でワンマンを行った。タイトルは「ゾロ目だョ全員集合!〜フラカン33年、野音99年〜」。野音は、来年の100周年が終わったら改修工事でクローズになる予定なので、フラカンが今の野音でワンマンをやれるのはこれが最後、みたいな触れ込みだったのだが、ひょんなことから(どんなことだったのかは知りません)、今年も野音が1日取れてしまった、らしい。
 去年ああ言った手前、またワンマンをやるのはちょっとあれだ。じゃあピーズ先輩を誘って2マンのイベントにすればいいんじゃないか。ということだったのだと思います。
 そんな、それはもう素敵な2マンのレポを、ぴあに書きましたので、ぜひ。
【ライブレポート】結成34年のフラカンと、結成36年のピーズが、設立100年の日比谷野音に響きわたらせた、11年ぶりの「ヨサホイ」!

9月3日(日)18:00 佐野元春 & THE COYOTE BAND @ 東京国際フォーラム ホールA

 6月3日(土)戸田市文化会館から始まった『佐野元春& THE COYOTE BAND 「今、何処TOUR 2023」』の東京公演。追加公演が終わっていないので(10/10、Zepp Sapporo)、詳細に触れるのはやめておくが、とにかく、もう、ずっと幸せな気持ちでいさせてくれた時間だった。
 当然、『今、何処』(2022年7月リリース)の曲が中心で、その一作前の『ENTERTAINMENT』の曲も披露(2022年4月リリース。そう、2022年は2作続けてニューアルバムを出したのだ、この方)。それ以外も、THE COYTE BANDになってからの曲を演奏していく。というセットリストが、いちいちうれしくて、楽しくて、「うわ、この曲きた!」「ああっ、次はこの曲!」などと、いちいち心が騒ぎまくる。
 そんな状態にこっちを陥れている、という事実が、まずすごいと思う、こんなにキャリアの長い、ヒット曲も有名曲もいっぱいあるアーティストなのに。中盤あたりから「このまま最後まで最近の曲で行ってください、懐かしの大ヒット曲とかいりませんから」という気持ちになっていた、すっかり。
 しかし。アンコールで、その「懐かしの大ヒット曲」が連続で投下されると、「きゃあああ!」ってなってしまうのだった、自分が。なんなんだろう。
 まあ、要は、佐野元春は「今もいい」んじゃなくて「今がいい」ということです。昔がよくなかったわけないのに。昔もよかったのに。でも、そう言いたくなる。
 なお、アンコールのMCで、「大滝詠一もPANTAも忌野清志郎も坂本龍一もいない時代。彼らの新しい音楽は聴けないことは寂しいけど、僕はまだ続いています」。
 グッときた。が、「『まだ』って感じ、全然しないです、佐野さん」と、言いたくもなった。

9月8日(金)20:00 木(KI)、DOGA @ 吉祥寺WARP

 木(KI)の2nd EP『Wa』のリリース・パーティー。ゲストはplenty→ソロで活動してきた江沼郁弥の新バンド、DOGAで、今日が3回目のライブ、とのこと(1回目は6月17 日の『YATSUI FESTIVAL』の1日目。レポはこちら ≫YATSUI FESTIVAL! 2023 6/17(土)DAY1レポ )
 DOGAは、ボーカル&ギター江沼郁弥、ベース藤原寛&パーカッション岡山健二の「元andymoriで現在銀杏BOYZコンビ」、サックス/クラリネット/フルートの渡邉恭一、ドラム古市健太の5人組で、この日は全部で9曲を演奏。
 せっかく岡山健二がいるのに、ドラムじゃなくてパーカッションなのが謎だが、古市健太もとてもいいドラムを叩くので、文句はありません。
 その岡山健二、パーカッションだけじゃなく、ステージをウロウロしたり、アジテーションしたり、しゃべったりもする、HAPPY MONDAYSのBezのような存在感。と思いながら観ていたら、10月にDOGAとKI(木)とYO-KINGでツアーを回ることが後半で告知されたのだが、そのツアーには岡山健二、参加しないというのだ。
 本人と江沼が説明したところによると、11月に俳優として『雷に7回撃たれても』という舞台に出演するそうで、その稽古とツアーが重なってしまったのだという。
 「でも東京は出ます (11/13、新代田FEVER)」だそうです。マジか。ドラムを叩く役で、ちょっと芝居もある、みたいなことを言っていた。あと、劇伴も彼が担当している。
 で、木(KI)は、ようやく初めて生でライブを観れたのだが、すごいもんだった。AORやシティポップのテイストがちょっとあるオヤイヅカナルの歌と、フュージョン・ジャズ・プログレ・エレクトロニカなどが結集したみたいな、なんだかもう「ジャンルの坩堝」のようなバンド・サウンドとの出会い。いや、「出会い」って、音楽的中枢を担っているのはオヤイヅカナルだろうから、彼が中心になって出会わせているのだろうが。すごいインパクトだった。
 あと、両者が所属するレーベルの主宰者=庄司信也が、開場時や転換時にDJをしていたが、それも妙に良かった、両者の音楽性となんとなくリンクした選曲で、かつ、僕個人の好みとやたらと合っていて。聴き惚れました、庄司さん。

9月10日(日)14:00 UKFC on the Raod 2023 @ Zepp Shinjuku、Shinjuku BLAZE、Shjinjuku MARZ

 毎年オフィシャルレポを書かせてもらっているUKプロジェクの年イチイベント『UKFC on The Road』。コロナ禍以降、配信オンリーやアコースティック版はあったが、本来の形での開催は、2019年以来4年ぶりになる。
 ライター2人体制で、14アクト中の7アクトを書きました。こちらです。ぜひ。
【ライブレポート・前編】「UKFC on the Road 2023」新宿を舞台に完全復活

9月11日(月)19:00 Analogfish,池間由布子と無労村 @ 下北沢SHELTER

 那覇にあるライブハウスOutputの店長で、昔はここシェルターの店長だった上江洲修の企画イベントで、『I Rashiku Analogfish ×池間由布子ツーマンライブ』というタイトル。
 最初の上江洲さんの挨拶によると、9月11日に行うことが重要、という趣旨だったようだ。あと、先が池間由布子、後がAnalogfishだったのが、急遽出順が逆になった、すみません、ともおっしゃっていた。
 で、アナログ、佐々木健太郎が歌う、僕が知らない歌でスタート。新曲? いや、池間由布子のカバーだそうです。「まぐろは千円」とリピートする歌詞が強く耳にひっかかった。
 それ以降は下岡晃ボーカル曲と健太郎ボーカル曲、だいたい半々くらい。ちょっと前に配信リリースされた新曲「おもいつくかぎりのすべて」、やはり圧倒的。リリース前からライブでやっているが、浴びるたびに身体も脳も固まってしまう。
 ラストの「抱きしめて」では、池間由布子が加わった。下岡晃がボーカルのこの曲、後半でちょっと健太郎がメインで歌うところもあるので、トリプルボーカル状態である。
 後攻の池間由布子は、タメというか、タイム感というか、ノリというか、間というか……とにかく、生きていく上でのリズムが自分独自のものであることが、そのまま音楽として表現になっている、そんなステージ。
 って、なんだそれは。でも観ながら、聴きながら、そういうことを感じた。歌詞の文体も、それをメロディにのせる時も、発声のしかたも、何ひとつ奇をてらっているところはないのに、とてもこの人独自のものだし。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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