兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第130回[2023年4月は数が多いので3回に分けたやつの1回目・エレファントカシマシ名古屋2デイズ、などの5本を観ました]編

コラム | 2023.05.15 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライターである兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブ(基本的に生・たまに配信)について月二回ペースで何か書く、ただしその月に観た数が15本を超える場合は月三回に分けてアップする連載の第130回目で、2023年4月は15本なので月三回、その一回目です。
 が、これを書いているのがもう5月14日、という、この連載史上ないくらいの遅れっぷりです、現在。4月5月と、このDI:GA ONLINEのインタビューやライブレポの仕事がえらく多くなり、それらを優先して、「締切とかは自分次第」なこの連載を後回しにしてしまっていました。すみません。以上、お詫びと言い訳でした。ではどうぞ。

4月1日(土)18:00 エレファントカシマシ @名古屋ガイシホール

 エレファントカシマシのデビュー35周年のアリーナツアー、横浜2本・東京3本・名古屋2本・大阪2本の全9本のうち、他のライブレポ仕事等がない日はできるだけ行こう、と決めた結果、5本観れた。この日はその3本目。
 このツアー、宮本浩次は、「次はバラードを聴いてください」などと言って、「珍奇男」なんかの全然バラードじゃない曲をやる、ということをよくやっている。この日も同曲を歌う前に「魂震える、素敵なバラードを」と紹介した。
 それから、25曲目の「俺たちの明日」で、石森敏行のサングラスをむしり取って自分がかける、ということをやったのは、ここまでで自分が観た3本の中では、この日が初めてだったように思う。で、その状態でステージ上をあちこち行きながらしばし歌った後、石くんのところに走って戻ってサングラスをかけてあげていた。
 あと、21曲目の「桜の花、舞い上がる道を」で、花道から下りて歩き回りながら歌うさまが観れたのもうれしかった。

4月2日(日)17:00 エレファントカシマシ @名古屋ガイシホール

 日本ガイシホール2デイズの2日目で、自分が観たこのツアーの4本目。2デイズの場合、音響や演出や段取り等、この会場における全体の進行を、1日目の本番で経験できることによって、2日目の方が良くなるバンドもいるし、1日目でノド等を消耗するため、2日目の方が弱くなる、という場合もある。
 エレファントカシマシの場合は、宮本浩次のソロの時も含めて、前者になることが極めて多い。ということを、これまで観て来た2デイズで知っていた。このガイシホール2デイズも、まさにそのパターンで、1日目よりもさらに2日目が良かった。
 宮本、ほんと、自由自在。特に「俺たちの明日」のあたり、歌いながらステージの右端、左端、奥など、行かないエリアがないくらいのすさまじい運動量で動き回る。以前、キタダマキ(2021年〜2022年の宮本浩次全都道府県ツアー『縦横無尽』のベーシスト)にインタビューした時、宮本のステージングについて「あれだけ走り回って息が切れてないのも、不思議じゃないですか」と言っていたのを思い出した。確かに。なんでだろう。

4月6日(木)19:00 Bug Holic vs 大柴広己(もじゃ)
ゲスト:Bamboo @下北沢CLUB Que

 Bug Holicの下北沢CLUB Queの2デイズ、2日目はワンマンで1日目は大柴広己との対バン、ゲストでBambooも出る、という企画。1日目の方を観た。
 Bambooはボーカル&ギター(女性)とギター・ベース・ドラム(の3人は男性でドラムはサポート)の、普段からBug Holicと親しいバンド。現在40歳・キャリア17年のシンガーソングライターである大柴広己は、Bug Holicのプロデューサーがかつて手掛けていたアーティスト。という縁であることを、頭から最後まで観て知った。
 最初にBambooが「溌剌」という言葉そのものみたいな、勢いに満ちたステージを見せ、次に大柴広己が、「達者にも程があるおもしろMC」と「一声一声ひとことひとことを聴き手に突き刺すような歌」のギャップがすごい弾き語りを聴かせる。
 トリのBug Holicは、結成したのがコロナ禍だったのでライブができなかった→音源の配信を先にやって、その存在がある程度広まったところでようやくライブを始める、という、ちょっとトリッキーな始まり方をしたバンドなので、最初はライブに不慣れだった。というのが大きいと思うが、数ヵ月おきにライブを観るたびに、加速度的に良くなっている。それぞれのメンバーが、ステージにおける輝き方を体得していくさまが、リアルタイムでわかる、というか。
 アンコールでは、大柴広己とBambooのボーカルちなみを呼び込んでセッション。ステージの上の7人以上に、フロアのお客さんたちがうれしそうなのが、何かとてもいい光景だった。

4月7日(金)18:30 ヤバイTシャツ屋さん @LINE CUBE SHIBUYA

 1月7日松山からスタートした、11本の全国ホールツアーのファイナル。ツアーのまんなかあたりの3月1日に、ニューアルバム『Tank-top Flower for Friends』がリリースされた。「アルバムを出してから、それを携えて全国ツアー」という通常の形が、コロナ禍の状況下ではとりにくかったから、こうなったのだと思われる。
 さらに言うと、基本的に座席ありのホールではライブをやらなかったヤバTがホールツアーを組んだのも、コロナ禍だからだろうし、結果、このツアーの2本目の新潟からお客さんが声を出すことが解禁になり、3本目の栃木からは大声を出してもよくなったが、それもどうなるかわからない時期にスケジュールを切ったのだろう。
 というような、いろんな不確定要素を抱えて挑んだツアーが、すばらしいものになった、その喜びがぶちまけられているような、ステージの上も下も終始すさまじいテンションの最終日だった。モッシュやクラウドサーフ以外はコロナ禍前と同じライブをやれるようになったことが、こんなに楽しいのか! という思いが、メンバー3人からもオーディエンスからも放たれっぱなし。
 後半でこやまたくやは、「めちゃくちゃ最高! 楽しすぎる! なんの不安もない、この先の未来に!」と叫んだ。まぎれもなく本心だろうが、そう叫んだことで逆に、この3年の間、不安の中で闘ってきたことが伝わってきて、なんとも言えない気持ちになりました。

4月9日(日)17:00 フラワーカンパニーズ @松本ALECX

 ニューアルバム『ネイキッド!』のリリースツアー『いつだってネイキッド’22/’23』、結成33周年なので全33本、の27本目。フラカンがALECXに来たのは6年ぶりだそうで、ツアー先の街の散策が趣味であるギター竹安堅一が、弘法山古墳の桜の美しさを語ったり、ボーカル鈴木圭介は6年前に立ち寄って買い物をした松本パルコが2025年に閉店することを知って悲しんだりしていた、MCで。
 なお、フラワーカンパニーズの愛車のハイエースの走行距離が、このライブが終わって東京まで帰る途中で60万キロを超えるそうで、どうせなら松本で60万キロを迎えて今日のこのライブのMCで言いたい、と、ベース&リーダーのグレートマエカワ、昼間にクルマで市内をウロウロ走ったが、60万キロには全然届かなかった、とのこと。で、ライブ後の帰り道で60万キロに達した直後に、インスタのストーリーでそのことを報告しておられました。新しいハイエースは購入ずみで、9月頃納車だそうです。
 あと、このツアー、ニューアルバムのリリースツアーなのに、観るたびにどんどんセットリストが変わっていく、という楽しさもある。このあとの小田原と静岡も行きたかったが、予定を合わせられなくて残念だった。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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