兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第119回[2022年11月前半・真心フラカンウルフルズのツアー初日、ガンズ、堂珍嘉邦、等の7本を観ました]編

コラム | 2022.12.05 17:30

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブについて日記形式で何か書いて、月二回アップしていく連載の119回目・2022年11月前半編です。今回は、「1週間の間に、メンバーが重なっている3つのバンドのツアーの初日を観た」という、ちょっとめずらしいことがありました。

11月3日(木・祝)17:30 真心ブラザーズ@EX THEATER ROPPONGI

 ニューアルバム『TODAY』のリリース・ツアーの1本目。このツアー、10本あるのだが、サポートのベースとドラムは、そのうち6本がグレートマエカワ(フラワーカンパニーズ)&サンコンJr.(ウルフルズ)のCRAZY BUFFALOES、4本が岡部晴彦&伊藤大地のLow Down Roulettes。
 というふうに、1本のツアーでサポートが2チーム、ということを、数年前から真心ブラザーズは行っている (3チームの時もあった)。その方がブッキングがラクなのか、よけい大変なのかはケースバイケースな気がするが、やる側にとっても、観る側にとっても、そっちの方がおもしろいのは間違いないだろう、とは思う。
 で。今回、グレートマエカワのフラワーカンパニーズも、サンコンJr.のウルフルズも、ニューアルバムを携えてのリリース・ツアーが始まるタイミングで、フラカンのツアーはこの2日後の水戸ライトハウスからスタート、ウルフルズのツアーは6日後の三郷市文化会館からスタート。しかも真心ブラザーズの桜井秀俊は、ウルフルズのサポート・ギタリストである、つまりお互いサポートし合っているわけで、なので、なんで同じ時期にツアーするかなあ、という状態なのだった。
 ただ、そんな「サポートしつつサポートされつつ」なチーム感も、いい作用を及ぼしているのか、ライブそのものは、初日から絶好調だった。『TODAY』の曲も、どれもライブ映えしているし。
 まだまだ続くツアーなので具体的な内容については書かないが、やっている本人たちもそういう手応えがあったようで、途中のMCでYO-KING、「どこまで絶好調なんだろうね、俺は。桜井もよくついて来るよね。中畑だもん、俺」。
 これ、元巨人の中畑清が現役時代に、何かというと「絶好調!」を連発するので「絶好調男」と呼ばれていたことを差しています。と、一応説明しておきます、昭和の時代の話なので。
 なお、後日、グレートマエカワにきいたところ、その次の11月12日(土)の京都磔磔では、YO-KING、序盤からハイテンションすぎて、桜井が「ちょっと抑えて! それ、最初から飛ばしすぎて途中でバテて元気なくなるパターンのやつだから!」と言うほどだったそうだ。でも、最後までバテずにつっ走ったそうだ。

11月5日(土)17:30 フラワーカンパニーズ@水戸ライトハウス

 というわけで、真心のツアー初日の2日後、フラカンのツアー初日。ニューアルバム『ネイキッド!』収録の11曲をすべてやった、というのは、こんなに長いキャリアのバンドとしてはめずらしいかもしれない。で、それ以外も、おなじみの曲もあれば、「これライブで聴くのいつ以来だろう」みたいなレアな曲もある、うれしいセトリ。
 お客さんみっちり入っているし、声出しNGだったのが「25%までOK」になったということで、後半の某曲で鈴木圭介がオーディエンスにコールを求めてみんなそれに応えるし、終始いい空気だった、とにかく。
 あと、この前の週に出たFLASH(写真週刊誌)の記事の「40代、50代視聴者に聞いた『紅白歌合戦』で見たい歌手」というランキングの男性部門の9位に、なぜかフラワーカンパニーズが入っていた件。鈴木圭介、「この話、こすりすぎちゃってるけど」と言いつつ、この日もMCでネタにする。グレートマエカワが「そんな喜んでるわけじゃないんだよ?」と言うと、圭介も同意するが、グレートに「買ったの?」と訊かれると「買ったよ」と即答。グレート「喜んどるじゃないか! おまえ、お母さんに送ったんじゃないだろうな?」。オーディエンス、大笑いでした。

11月6日 (日)17:00 GUNS N’ ROSES@さいたまスーパーアリーナ

 ガンズ、リアルタイムで聴いてはいたものの、正直、熱心なファンだったかというとそこまでではなかった。なので迷ったが、ガンズ大好きな友人に「今後またすぐ機会があるとは思えないよ、下手したら最後のチャンスかもよ」などと誘われ、「そうね、じゃあ行くか」と、S席15,000円でチケットを買ったのだが。当日、行ってみたところ。
 ステージの真横でした、我々の席。下手(左側)の。どれくらい真横かというと、ステージの両側にあるメンバーを映すビジョン(画面ね)、あれが全然見えないくらいなのです。値段が安い「見切れ席」とかならしょうがないけど、S席でこれはちょっとないんじゃないか? と友人に言うも、すっかり興奮状態の彼は「いや、その分、ステージが近くて肉眼で見えるじゃん」としか言わない。いや、そうだけどさ、でもなんかねえ。
 などと、最初こそぶうたれていたが、3時間にわたって歴代の有名曲が惜しみなく連発されるし(そもそもアルバム数が少ないバンドなので必然的にそうなるんだけど)、スラッシュのギターもダフのベースもアクセルの喉もいい調子だし、結局、大満足で帰ったのだった。
 あ、でも、このガンズのたまアリ、2デイズで、我々が行ったこの日は2日目。オープニング・アクトでBAND MAIDとGRANRODEOが出たが、1日目はLOUDNESSだった。それが発表になったのは、当然ながら、チケットを買ったずいぶん後。BAND MAIDにもGRANRODEOにも何の恨みもないが、LOUDNESSがよかったわあ、どうせなら。というのもありました、1980年代ジャパメタどまんなか世代としては。

11月9日(水)18:30 ウルフルズ@三郷市文化会館

 真心ブラザーズ、フラワーカンパニーズに続いて、ウルフルズのツアー初日も観た。このツアー、ニューアルバム『楽しいお仕事愛好会』のリリース・ツアーであると同時に、ウルフルズのデビュー30周年のツアーでもある。
 このDI:GA ONLINEにレポを書きました。未読の方、ぜひ。
 ≫ DI:GA ONLINE:ウルフルズ、デビュー30周年ツアー初日!「今までにない趣向を凝らした」途轍もなく濃いステージ

11月10日(木)19:00 突然少年、ハシリコミーズ@下北沢シェルター

 突然少年は、この数年で何度も観ているが、ハシリコミーズを観るのは二度目で、この2バンドを一緒に観るのも二度目(その時の『全部書く』はこちら )。で、この日は、この2バンド共催の企画ライブ『kiss』の二回目(一回目は7月27日に大阪・堺FANDANGOで行っている)。
 突然少年、暴風雨のような音を聴き手に浴びせる、馬鹿力とスピードでねじ伏せる、みたいなライブをやるバンドだが、ここ半年ぐらいで、そこに「聴かせる」「リリックを噛み締めさせる」的な要素が加わってきた気がする。つまり、さらに強いライブバンドになっていきつつある。
 ハシリコミーズは、ボーカル&ギター、ベース、ドラムの3ピース、つまり最小限の編成のバンドだし、音がスカスカしたりヘロヘロしたりしているところもあるんだけど、そのスカスカやヘロヘロに、全然頓着していない感じなのがいい。(今んとこ)技術が高いバンドではない、にもかかわらず、ブラック・ミュージックの横ノリな感じが、そこはかとなく漂っているのもいい。
 で、この2バンドが仲がいい、というの、何かとてもよくわかる。これからもちょいちょい一緒にやってほしい。世の中がこんなバンドだらけだったらいいのに、というほど、どちらも個人的にツボなので。

11月11日(金)18:30 Panorama Panama Town、YAJICO GIRL、ユレニワ、Mercy Woodpecker@渋谷Spotify O-Crest/YouTube/LINE LIVE

 MASH A&Rのバンドたち4アクトもしくは5アクトで、全国6ヵ所を回るツアー『Treasure Tour』のファイナルである東京公演。配信もあり。現場に行ってSPICEにレポを書きました。ぜひ。≫ SPICE:パノパナ、YAJICO、ユレニワの3組は『Treasure Tour』と題したツアーで何を見出し見せつけたのか

11月12日(土)18:00 堂珍嘉邦@日本橋三井ホール

 ソロの堂珍嘉邦としては、有観客でライブを行ったのは、実に5年ぶり。ステージの上もステージの下もなんだかもう感無量だったそのライブのレポを、DI:GA ONLINEに書きました。ぜひ。≫ DI:GA ONLINE:堂珍嘉邦がソロ10周年、5年ぶりの有観客ライブの喜びを客席と分かち合った夜

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