兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:特別編 祝開催期間延長!『ザ・ローリング・ストーンズ展』に行って来た!

コラム | 2019.05.01 11:00

音楽などのライター兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブについてひとことレポしていく連載がこれなのですが、レポするものとしないものを「生か、そうでないか」で分けています。お客の目の前で人が何かやっているのを観る、というものならOK、だから音楽のライブ以外のスポーツや演劇などもレポする。で、生じゃないもの=映画とか美術館とか展覧会とかはレポしない。だからたとえば、音楽であっても「ライブを全国の映画館で生中継」というやつはレポしない。
という線引きにしているのですが、今回初めてそれを破ることにしました。2019年3月15日からTOC五反田メッセで開催されている『Exhibitionismーザ・ローリング・ストーンズ展』、これ、実は何度も行っているほど楽しい、でも生じゃないしここで何か書くのもなあ……と迷っていたんですが、このたび好評につき(ってことですよね)5月連休明けで終わるはずが6月5日まで、開催期間が大幅に延びたので、これはもうおまえも何か書けということなんだろうな、と判断したのでした。

ただし。どういう内容の展覧会なのか、各コーナーはどんなものでどんなふうに楽しめるのか、ということについては、すでにあちこちでいろんな方が取り上げているし、このDI:GA ONLINEでも横山シンスケ氏のコラムで微に入り細に入り書かれているので、そこをくり返すのはやめておきます。
横山氏のコラムのこの回、本当に水も漏らさぬ精度で『ザ・ローリング・ストーンズ展』の各コーナーについて解説されていて、おもしろいし、とても役に立ちます。お勧めです。こちら。
ザ・ローリング・ストーンズ展 ナビ&レポート!【横山シンスケのライブオアダイ】連載:第22回

では僕は何を書きたいのかというとですね。何度行っても、展示を観れば観るほど不思議に思うことについてです。
それは何か。

ローリング・ストーンズ本人たちとそのスタッフたちは、いったいいつから「このバンドは将来世界各国で展覧会を開けるような歴史的な存在になる」ということを、予測していたのか?
ということだ。
なんで貴重な資料がここまでちゃんと揃っているの? なんでこんなにきれいに、お客に見せられる状態で保管されているの? ということが、つくづく理解不能なのだった。
ローリング・ストーンズが、真の意味で、現在のような世界一のロック・バンドになったのは、1989年のアルバム『STEEL WHEELS』と、それを携えての7年ぶりのワールド・ツアーからだと思う(このツアーで1990年2月に初来日した)。
音楽性とか好き嫌いとかの話ではありません。活動年数とかツアーの規模とかの意味、つまり、存在としての巨大さが、今のストーンズのそれになったのは、この時期ではないか、という話です。
「いや、もっと前からだろ」という声もあるかもしれないが、それでも、1970年代の前半や1960年代から巨大だった、とは言えないと思う。それは、ストーンズの規模というよりも、ロックンロールという音楽の規模や、世界のショウ・ビジネスの規模も含めての話になるが。

にもかかわらず。1960年代からきっちり残っているのだ。楽器や衣装はもちろん、1964年の作曲の権利に関する書類とか、ミック・ジャガーとチャーリー・ワッツが書いた、ツアー・ロゴ検討のための手紙とスケッチとかまで。
なんなんだろう。いちいち60年代から「取っとかなきゃこういうの、将来貴重なものになるから」とか思ってそうしていたスタッフがいたんだろうか。
たとえば、ザ・フーでもボブ・ディランでもいいが、これと同じような展覧会を企画することは、不可能だろう。ここまでいろんなものがちゃんと残っていないと思うので。

ミック&キースが住んでいた部屋とか、60年代にストーンズがレコーディングしていたスタジオとか、そういう再現コーナーが楽しいのはもちろんだ。ストーンズの曲の各楽器の音をミキシングでバラバラにして聴けるコーナーは大人気で、平日でも行列ができている。貴重な映像を観られるコーナーも数ヵ所にあるので、そこでじっとしているだけでも相当に楽しい。
が、何よりも、ここまで延々と書いたような、60年代から現在まで続く「ストーンズを記録しようという執念」が、展示に込められているところに、もっとも強くやられてしまう、だから何度も行ってしまうのだと思った、僕の場合。

●このように会場内の数ヵ所でライブ等の貴重映像を観れる。ずっとここにいる人も多数

●キースやロニーはもちろん、ミックやダリル・ジョーンズの愛器も展示されている。1本ずつじっくり観るだけで1時間かかりました

●歴代の衣装コーナー。このように微細な解説文付き

●このあたりが「こんな昔からちゃんと保存してたのか!」と驚いたやつです

●アートワークの展示も楽しい。これは『UNDERCOVER』(1983年)のジャケットの加工前の写真

●大人気、各楽器のミキシングをいじれるコーナー。どの人の後ろに並ぶかで大きく運命が別れます。私は失敗して、40分呆然と待ちました

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