2018年5月19日(土) Shibuya WWW X
Way to 2000 「1973回」 ニューロティカ結成34周年記念ワンマンツアー
ニューロティカは今年で結成34年だ。そして“ライブハウスモンスター”ロティカのライブの本数は、今年の10月20日(ボーカルあっちゃんの誕生日でもある)のZepp東京で、なんと通産2000回目を迎える。しかもその記念すべき10月のZEPP公演までに、ロティカにはもうすでに20本以上のライブが決まっている。きっとまだ増えると思う。
どうかしてる。ライブハウスモンスターと言えばカッコいいが、あきらかにライブ中毒バンドだ。しかもギターのジェームス以外の3人はもう50歳を超えたのに、このバンドはいまだにバッキンバッキンの高速パンクバンドなのだ。本当にどうかしてる。
今回のライブレポートは少し視点を変えて、ちょっとライブ以外の部分も見せてもらいながら(写真も撮らせてもらいました)、そのどうかしてるパワーがどうして34年も続けていられるのかを内側の視点からも探りながらレポートする事にした。
この日は早めに入って、お願いしてリハから見せてもらう事にした。
ロティカは実は以前から知ってるバンドでもあるのだが、リハーサルを見せてもらうのは当たり前だが初めてで、こういうユニークなバンドなので、リハでもどっかツッコめる要素があるだろうと、粗探しでもするような気持ちでいたんだが、全然イメージとは違っていた。
4人みんなが音響さんや照明さんやスタッフに音や光の指示を出し、構成や演出もこと細かく説明しながらきちんと進めていく。それは、真面目なバンドのストイックなリハーサル風景だった。
特に3年前に加入した、まだ20代の若さのギターのジェームスが、物怖じもせず一番率先して意見や構成を伝えながら3人をグイグイ引っ張っていたのには驚いた。20歳以上年が離れてる上に、20年以上一緒にやってる3人に対して、これはなかなかできる事ではない。
よく見てると、ロティカの他の3人も、スタッフを含めて相手が若い人でも誰でも、同等に話しやすいような空気感を自然に作っているという事がわかってきた。
リハからして早くもそのどうかしてるパワーが継続できる理由がひとつ分かったような気がした。
演奏のリハをステージのすぐ真横で見せてもらってたんだが、ナボのドラムの激しさと迫力にブッとんでしまった。いつもは客席からだし、ドラマーはいつもステージの一番奥に小さく見えるんだが、真横で見るとドラマーという仕事はがこんなにも激しくて過激な肉体運動なのだという事に気付かされ圧倒された。
ロティカ楽曲の作曲をほとんど手がけるベースのカタルも、自分やメンバーの音やバランスに細かく注意を払いながら、スタッフ全体への気づかいもちゃんとしている。やはりロティカのムードメーカーでありキーマンはカタルなのだというのが見ていても分かる。
そしてボーカルのあっちゃんだが、動き暴れまわる本番とは違い、ほとんど動かずに歌のリハを続けるのだが、真横で見てると、その声量と音圧の凄さから、ボーカリストも物凄いエネルギーが必要だという事がわかる。
ボーカリストはよく短距離ランナーに例えられる。僕らから見ると楽しく歌ってるだけに見えるのだが、実はボーカルというのは体全体の筋肉を使ってほぼ無酸素運動をずっと続けるような過酷なパフォーマンスなのだ。
客席から見てると、よく動きよく声の通る、面白いピエロのメイクしたパンクおじさんではあるのだが、実はこの人は34年間この超過酷なライブ無酸素全力疾走運動を継続できている、世界的に見ても稀有な本当に物凄いアーティストなのだよ。
リハが終わり、開場時間になりお客さんが続々と押し寄せてくる。
ロビーに貼られたライブ2000回に向けての応援メッセージ寄せ書きフラッグに、集まったファンが次々とメッセージを書いている。
集まったファン層は、僕らのようなロティカの昔からのリアルタイムのファンは当然多いが、若いファンが凄く増えていた。若いファン達もみんなロティカのTシャツを着ていながらも、WANIMAとかヤバTとかのグッズも身につけていた。「元祖・明るくて楽しいパンクバンド」、ロティカの噂を新しいロックファン達も嗅ぎつけてきて沢山集まってきているのがわかった。
そして幼い子供連れた親子や、ご年配のお客さんも沢山いた。その中にはあっちゃんの地元の八王子関連のものを身につけた方も多かった。あっちゃんとロティカが八王子を盛り上げようと、地元でのフェスや色んな惜しみない努力をしている事がちゃんと八王子の老若男女の人達に響いていて、そして新たなロティカのファンにもなっているというそのリアルな光景を見て、僕は何だか感動までしてしまった。
そんな様々な年齢層のファン達で超満員に埋め尽くされた中、ライブが始まったのだが、あやしいアナウンスが流れる中、出てきたのはロティカでなく、全身黒ずくめの「ブラックロティカ」というバンドだった。(まあ、あきらかにロティカだが。)
ブラックロティカは客をあおり、いかくしまくりながら、ロティカの一番早いハードコアナンバーをいきなりブチかましてきた。当然フロアは盛り上がりまくる。
それを見ながら、ああロティカらしいなあ、と僕は思っていた。
要するにいまだにサービス精神が過剰なのだ。お客さんが楽しんでくれるのなら何でもするし、その為ならこんなアマチュアバンドもやらないようなフザけたパロディバンドを34周年とか関係なく今でも一生懸命やってしまうバンドなのだ。
ブラックロティカは暴走ハードコア2曲を嵐のようなスピードで披露し、盛り上がるフロアに悪態をつきながらステージを降りた。