Guiano Tour 2026 -The Sky-
2026年3月8日(日)LIQUIDROOM
Guianoがサポートメンバーに続いてステージに現れ、ギターをおもむろにつま弾く。「good morning」のイントロを奏でると、じょじょに海に朝日が昇るようなライティングが施され、押し寄せる波のように会場を音で満たしたところで「せかいのしくみ」へつなぎ、アルバムのオープニングをステージで体現した。ポストパンクとハイパーポップをブレンドした刺激的な演奏と、感情を殴り書きにした躍動感に溢れた言葉、心臓をそのまま差し出すような歌唱がフロアをかき回すと、ミドルテンポの「アイロニー (Romantic)」ではロマンチシズムとエモーションがない交ぜになった演奏で包み込む。一音一音が強い引力を放ち、会場も彼の描く“空”に飲み込まれていった。
今までの自身の活動のすべてを内包してこのステージに立っていることを噛み締めるGuianoは「この曲とともに歩んできた感覚がある」と前置きし、彼がシンガーソングライターとして活動を開始する前に発表した「死んでしまったのだろうか」を歌唱する。その後はギターを持ったままハンドマイクで「I Don't Wanna Know」を歌い、シンガーソングライターとしての活動を本格化させた時期のEP『あの夏の記憶だけ』の頭2曲を続けて披露した。
彼の音楽人生のターニングポイントを、現在の彼がステージで表現する。そんな物語性に没入していると、ギターのアルペジオから彼が高校生の頃に制作した初期曲「ゲジ」を演奏し始めた。当時の彼の痛みが今の彼の歌によって生々しく蘇り、シンプルでピュアなバンドサウンドがそれをより際立たせると、ピアノの導入から「カーテン」へ。塞ぎ込んだ心情をカーテンを閉めることに例えた2017年の楽曲と、窓を開けてカーテンが揺れる描写を取り入れた2025年の楽曲が並んだセットリストは、彼の世界が音楽を介して広がり続けていることを象徴していた。序盤から彼の音楽人生の変遷を凝縮したセクションを体感し、彼がこの日に懸ける生半可ではない意気込みに息を呑む。
次に披露する楽曲が自身の心境の変化に通ずるものである旨を切り出すと、もともと活発で、自分を奮い立たせながら人生を邁進していた友人が心の病に罹り、その友人が会食で希死念慮を明かした際に「死ぬことを選ぶのは選択ではない」と言ってしまったことを後悔したこと、だがそれが自分の信念であることを振り返る。その雨の帰り道がきっかけとなり生まれたのが、インタールードの「the rainy day」の後に披露した「You Think So?」だった。グランドビートに乗る低音のメロラップは穏やかさと緊迫感を併せ持ち、そこから彼のユーモアが発揮された「踊るのが人生!」、フロアと一丸となる読経パートも壮観な「ネハン」、魂の叫びとも言える情熱的なボーカルを響かせた「詞を書く化物」と、彼の人生哲学が綴られた楽曲をたたみ掛ける。表現方法は広がれども彼の貫く信念は変わらないこと、どれだけもがき苦しもうともこの信念が彼を生へと導いてきたことを痛感した。
ここまで自身の音楽へのスタンスを丁寧に確かめながらライブを展開していくと、続いてのセクションではゲストとしてボーカリスト・しほを招き、ツインボーカルで「私はキャンバス」を披露した。10代の頃からの仲という気心知れた者同士だからこそののびのびとしたボーカルで会場を沸かし、その後は間髪入れずに昨年Guianoがしほに提供した、彼女の初オリジナル曲「雫の歌」へなだれ込んだ。歌に対するピュアな感情が綴られた楽曲を両者が肩を並べて全身全霊で歌う姿もさることながら、向かい合わせで歌うシーンはまさに健やかな友情を感じさせる、青春の1シーンのように美しい光景だった。
再び単身ボーカルとなったGuianoは「生活のすべてを音楽に変えて生きることには途轍もなく重い弊害がある」と打ち明ける。歌詞に嘘を書かないため、自分の身の回りの人間にダメージを与えてしまうことへの心苦しさと、それを書かねばならないという自身の美学が拮抗しているが、音楽を辞めるという判断には至らないと同時に、人生のすべてが曲になる恐怖がある旨も語り、「(自分の気持ちを)わかってほしいとは言わないけど、俺の書いている言葉一つひとつの解像度を上げて楽しんでほしい」と告げると、自身の内面を投影した近年の楽曲を立て続けに届けた。
生バンドならではの大胆なアレンジが施された「the twilight」から鋭さと悲哀を纏った「刹那Blue」、苦悩と歓喜がない交ぜになった「クリエイター」、ギターをかき鳴らして泣き叫ぶように歌った「冷たい人間と夏の悪魔」と、彼の抱えた激情がこちらの心に襲い掛かる。そのなかで、彼の音楽の根源にあるものは、大切な人を愛したいという純粋な欲求なのではないかとぼんやりと思った。ただ愛したいだけなのに、愛することには多くの障壁があり、自分の無力感に打ちひしがれ、解決策を模索するもなかなか思うように前へと進めない。自分の醜さや弱さを嫌悪しつつも受容し、己を磨き、逆風に煽られながらも自分の美しいと思うものだけは何が何でも手放さずに、自分に「大丈夫」と言い聞かせて一歩一歩を踏みしめる。そんな足取りが、彼の音楽のように思う。「あなたはmusic」の不器用なほどにまっすぐな音と歌は、彼の意志を気高く響き渡らせた。




「いまこの瞬間を楽しみたくて仕方なくて。いっぱい歌を歌いたくて、みんなに聴いてほしくて、その気持ちがとにかく強すぎて。いつまで経っても俺は子どものままだね」と小さく笑うと、「優しい大人になりたい」で柔らかく包み込み、焦燥感が閃光のように眩しい「藍空、ミラー」、パンキッシュな「WHAT A WORLD!!! 」と観客と心を通わせながらアッパーに走り抜ける。「good night」で壮大なクライマックスをまっとうすると、Guianoはアルバムとツアーを振り返るなかで周りの人間の大切さに気づいたことを明かし、バンドメンバーやファンに感謝を告げる。そして「I Love You (Maybe this time it’s true)」で観客と手を取り合うように、本編のエンドロールを飾った。
アンコールではまず、今秋開催予定の全国5ヶ所を回る「Guiano Split Tour 2026 ―私の心に、あなたがいた―」を発表する。「どんどん夢が叶っていく」と感慨に浸ると、「(次の予定が決まっているから)寂しくないぞ。だから今日を楽しめるように精一杯声を出していこうな」と呼び掛け、「星くずのうた」を披露した。観客は“小さなわたし”を称するGuianoの独り言のような楽曲を、天を仰ぐようにシンガロングし、Guianoはその歌声を一身に浴びて感極まった表情を浮かべる。この関係性が同曲をライブアンセムとして大きく成長させたことを再確認する、晴れやかな一幕だった。
「曲を作るうえでどれだけ深い傷を負ったとしても、みんなが歌ってくれるおかげでどうでもよくなる」「だから俺は音楽をやっていけるし、ここに来れたんだな」と再度感慨に浸る彼は、花譜、DUSTCELL、カンザキイオリといった仲間たちの初の有観客ワンマンをLIQUIDROOMで観たこと、そこに自分がなかなかたどり着けないことが悔しくて帰路のタクシーの車内で号泣したというエピソードを明かす。リハの段階では過去の自分がフロアの下手後方にいるような気がしていたが、いまはもう見えなくなったと述べ、「あいつは成仏したんだね」と憑き物が取れたような表情を浮かべた。
「今回はどうしてもこの曲を最後に歌いたい」「この曲があったから『The Sky』を作ろうと思えたし、『The Sky』がありのままの『The Sky』としてこの世に生まれた」と告げる。「この曲の最後の歌詞は、いつか未来の自分が本心から歌ってくれると信じて書いたもので。それで今日ここに立って、あいつも成仏したということは、新たな旅が始まるってわけ!」と宣言し、「Hold Me Tight (yourself)」でツアーを、そして『The Sky』のフェーズを締めくくる。音を纏いながら自由に歌う姿も、身体を震わせて歌い終えた後に高々とピースサインを掲げる姿も、新しい朝の訪れのように隅々まで澄み渡っていた。
Guianoはこの日、ひとつの到達点を迎えた。それはつまり大空へ羽ばたく準備が整ったということだ。自身の人生を投影した楽曲を、同じ空間でファンと共有してきたことで、彼の音楽と世界はより深く広がり続けている。今秋開催のスプリットツアーでも、様々なアーティストとの競演により彼はさらなる刺激を得るだろう。目の前に立ちはだかる一つひとつの出来事と、人間一人ひとりに、そして自分自身に愚直に向き合う彼ならば、さらに豊かな世界へと歩みを進められるはずだ。
SET LIST
01. good morning
02. せかいのしくみ
03. アイロニー (Romantic)
04. 死んでしまったのだろうか
05. I Don't Wanna Know
06. ゲジ
07. カーテン
08. You Think So?
09. 踊るのが人生!
10. ネハン
11. 詞を書く化物
12. 私はキャンバス(featしほ)
13. 雫の歌(feat しほ)
14. 刹那Blue
15. クリエイター
16. 冷たい人間と夏の悪魔
17. あなたはmusic
18. 優しい大人になりたい
19. 藍空、ミラー
20. WHAT A WORLD!!!
21. good night
22. I love you (Maybe this time it' s true)
ENCORE
23. 星くずのうた
24. Hold Me Tight (yourself)





















