GOOD BYE APRIL 15th TOUR BEYOND the FULL MOON
2025年9月13日(土)渋谷PLEASURE PLEASURE
ゲストミュージシャン:はらかなこ(Key) / 藤田淳之介(Sax/TRI4TH)
今年結成15年目に突入したGOOD BYE APRILが、翌年の結成15周年に向けて企画した東名阪ツアー「15th TOUR BEYOND the FULL MOON」。メジャーデビュー後のライブの定番曲はもちろん、ファンのリクエスト曲、メンバーそれぞれのセレクト曲、未発表の新曲までも披露する、今のGOOD BYE APRILが自身の歴史と未来を誇り高く照らした充実の内容だった。
初日の名古屋公演にはTRI4THの藤田淳之介(Sax)を、大阪公演にははらかなこ(Key)をサポートに迎えた同ツアーは、最終日の東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASUREにて両者を加えた6人編成のステージを届ける。メンバーが一斉に登場し、つのけん(Dr)のビートを皮切りに倉品 翔(Vo/Gt/Key)が観客へクラップを求め、はら、藤田、吉田卓史(Gt)と音を重ねていく。その後もコール&レスポンスを求めるなど時間をたっぷり使ったイントロセッションを届けた。個人的にもこんなライブの幕開けはなかなか体験したことがなかったため非常に新鮮で、ワンマンならではの挑戦であると好意的に受け取っていたところ、ふと舞台下手(しもて)の状況が目に入る。延本文音(Ba)の機材にトラブルが発生しているようだ。
彼女の終演後のSNS投稿によると、リハで過去最大の機材トラブルに見舞われ、それはリハのうちに復旧へとこぎつけたものの本番時にまた別のトラブルが起こったとのことだった。そんな状況でも咄嗟に機転を利かせ、一切の動揺を感じさせずに観客を演奏で楽しませるメンバーの様子はとても頼もしい。倉品が「人生史上一番長いイントロをお届けしています」と笑わせると、観客も棚からぼたもち的な展開に笑顔を見せる。苦境も旨味に転換し、ポジティブなマインドで様々な状況を乗り越えてきたバンドの歴史が滲んでいた。
仕切り直して再びメンバーが登場すると、観客は溌溂としたクラップと歓声で歓迎する。延本のベースも無事にうねりを上げ、イントロダクションから華麗に「Love Letter」へとつないだ。その後も「恋がはじまる」「リップのせいにして」と趣向の異なるラブソングを並べてカラフルな空間を作り出す。次々と鮮やかに景色を変えるドライブのようななめらかなライブ運びは彼らの強みのひとつだが、このセクションではさらに緩急を効かせて1曲1曲にしっかりとスポットを当てていたのが印象的だった。
倉品が本日の公演がソールドアウトした旨を報告すると、会場は大きな拍手に包まれる。15周年という話題をきっかけに、延本は8月の遠征時に機材車のリアガラスが全壊したことと、それに付随するエピソードを笑いを交えながら明かして「15年やっててもこんなに面白いことがまだあるなんて、バンドっていいなあ、楽しいなと思った」と感慨にひたると、倉品も「そういうものを乗り越えて無事今日を迎えることができた」と振り返った。その後は「Highway Coconuts」「ポートレイト・ラヴソング」「君は僕のマゼンタ」と晴れやかな夏のラブソングを届け、インタールードを挟んで倉品がピンボーカルを取った「plastic」へ。落ち着いたサウンドの中で、サックスの音色とピアノソロがロマンチックに華やいだ。
ライブの中盤は「普段演奏する機会がない楽曲」にフォーカスし、まずは会場ごとに募ったリクエストから上位3曲を披露する。名古屋公演はバラードが、大阪公演はテクニカルな楽曲が上位を占めたとのことだが、東京公演は初期から近年まで幅広い楽曲が揃い、3位は2013年リリースの2ndミニアルバムから「パレードが呼んでる」、2位は2016年リリースの1stフルアルバムから「ターナー」、1位は2020年リリースの3rdフルアルバムの表題曲「Xanadu」という結果になった。なかでも初期曲に宿った初々しさは、GOOD BYE APRILが迷いながらも様々な音楽に心をときめかせ、自分たちなりのポップスを追求してきたことを再確認させる。それを丁寧に鳴らす今の彼らの音色は、過去の自分たちに賛辞を贈るようなあたたかな愛情に満ちていた。
その後は「メンバーが今ライブで披露したい楽曲」を4曲連続で披露する。倉品が選んだ「スプートニクの恋人」は、バンドにとって踏ん張りどころだった時期に自分の本質に向き合って制作した楽曲で、あれから年齢を重ねた今演奏したいと思ったという。ピュアかつロマンチックで、物悲しさのなかにぬくもりを感じさせる楽曲世界が、会場を優しく包み込む。吉田がチョイスしたのは、自身が好きだというピアノロックバラード「ブルー・ライト・ブルー」。全員が楽曲に込められた感情や今の自分の心とじっくり向き合うように、感傷的でエモーショナルな演奏を響かせた。
つのけんはサポートメンバーの両名が参加すること、観客が手拍子で参加して一緒に楽しめることを踏まえて「MOONLIGHT MUSIC」を選曲し、ドラムソロからドラムとサックスのアンサンブルを経てギターソロへと入る間奏など、生演奏ならではの迫力で観客を高揚させる。延本は演奏できるシーズンが限られている大好きな楽曲をバンドセットで披露したいという希望から「Bittersweet Christmas」を選び、豊潤な演奏でひと足早く清らかな冬の空気で会場を包み込んだ。
ドラムカウントを合図にライブはラストスパートへ。メジャーデビュー曲「BRAND NEW MEMORY」からメンバー紹介とソロ回しを含むインタールードにつなぎ、情熱的なプレイを繰り広げる「サイレンスで踊りたい」、大人のグルーヴで魅了したブレッド&バターの「ピンク・シャドウ」カバー、「とびきりの海風を皆さんに届けます」という言葉の通りの爽快感と熱量を帯びた「missing summer」と、近年の彼らが培ってきた隆々としたポップネスで会場を躍動させる。
倉品は2017年にこの会場でワンマンライブを開催したことを振り返り、この15年間は自分たちの選択に納得したうえで責任を背負って進んでこれたこと、その足跡に後悔がなく誇りを持てている旨を話し、「それが音楽を続けるうえですごく大事なことであると、足跡が長くなればなるほど感じます。それはこの先も変わりません」と続けた。そして本編ラストに「このツアーの主役と言っても過言ではない」と前置きし、最新シングル曲「リ・メイク」を披露する。隅々までときめきに満ちた音楽は、彼らの未来を切り開くような開放感に溢れていた。
アンコールでは「このツアーでは15年間を振り返りつつも、次のステージを皆さんにお見せしたくて、未発表の新曲を携えて回りました」「新しい一歩を感じてください」と告げ、まだタイトルの決まっていない新曲を披露する。大空や地に足がついた力強さを彷彿とさせるアレンジと、ゴスペルのような豊かなコーラスワーク、大きな愛情に満ちた詞世界と、バンドの人生から生まれたようなリアリティに富んだ楽曲だった。
そして「新しいお知らせ」として、2026年に新たな東名阪ツアー「ONE-MAN TOUR2026『OUR BIOGRAPHY』〜15th Anniversary〜」の開催を発表する。全公演にはらと藤田も参加するとのことで、「次のツアーではさらに一歩、二歩進んだ新しいGOOD BYE APRILを見せる」と意気込みを語ると観客も大きな拍手を送った。
倉品が代表して「僕たちのモットーはとにかく曲に尽くして、皆さんと一緒に年齢を重ねていける楽曲を作ることに尽きます。(GOOD BYE APRILの)本体は僕たちというより音楽なので、皆さんの日常に僕たちの音楽を置いていただいて、栄養にしていただいて。ポップスだからこそ皆さんとライブで大きな音で共有できるし、それにしかない癒しの力があると思うので、これからも皆さんと一緒に素敵な時間を過ごせたらうれしいです」と挨拶をすると、「夜明けの列車に飛び乗って」でツアーを締めくくる。次の物語への道筋を作るような、すがすがしい演奏だった。
ツアーを完走したメンバーは「全部ひっくるめて、忘れられない最高の一夜になりました」と再度感謝を告げ、「ここから新しい情報が続々と届くと思います」と今後の動向に含みを持たせた。15年の歩みだけでなく、15年という歳月を4人で共に過ごしたからこそ到達できた現在位置も、15年という歳月を重ねてもまだまだ未開拓の地があることも証明したツアーファイナル。これまでの足跡の一つひとつが彼らの力になっていること、それが彼らを15年間突き動かし続けていること、それはこの先も変わらないであろうことをあらためて噛み締めた。
SET LIST
01. Love Letter
02. 恋がはじまる
03. リップのせいにして
04. Highway Coconuts
05. ポートレイト・ラヴソング
06. 君は僕のマゼンタ
07. plastic
08. パレードが呼んでる
09. ターナー
10. Xanadu
11. スプートニクの恋人
12. ブルー・ライト・ブルー
13. MOONLIGHT MUSIC
14. Bittersweet Christmas
15. BRAND NEW MEMORY
16. Interlude#1
17. サイレンスで踊りたい
18. ピンク・シャドウ
19. missing summer
20. リ・メイク
ENCORE
01. 新曲
02. 夜明けの列車に飛び乗って




















