KAMITSUBAKI WARS 2024 神椿幕張戦線 IN 幕張メッセイベントホール
[DAY-1]V.W.P 2nd ONE-MAN LIVE「現象Ⅱ (再)-魔女拡成-」
2024年11月2日(土)幕張メッセ 幕張イベントホール
初日はバーチャルシンガーユニット・V.W.Pによる『2nd ONE-MAN LIVE「現象II(再)-魔女拡成-」』。「代々木決戦」時のセットリストや演出とリンクさせながら、再演にとどまらない新しい道を切り開く彼女たちの姿を観ることができた。
カウントダウンが終わるとオープニングムービー、5人によるポエトリーが流れ、「僕らで“現象”を巻き起こそう!」という台詞を合図にサポートバンドとKAMITSUBAKI STUDIOのオーケストラプロジェクト・KAMITSUBAKI PHILHARMONIC ORCHESTRA(カミフィル)が一斉に音を鳴らす。すると花譜、理芽、春猿火、ヰ世界情緒、幸祜の音楽的同位体・狐子が一人ずつ自己紹介をしてステージに現れ、「共鳴」でライブをスタートさせた。バンドならではの鋭い突破力、オーケストラならではの優雅で壮大な力強さが融合したサウンドは途轍もない迫力だ。だが頼もしさと可愛らしさが同居した5人のパフォーマンスは、それらを凌駕するほどに盤石であった。
幸祜は持病の療養期間中のため、この日の彼女の代理は狐子が務めた。狐子は幸祜のように果敢に観客へ声を掛けたり煽るなどはできないが、そのぶん安定感と細やかなギミックを持ち合わせた歌声、品のある身のこなしで存在感を印象付ける。4人はムードメーカーである幸祜の不在をカバーするように「輪廻」「秘密」とたくましくしなやかな歌唱と積極的な煽りで観客を盛り上げ、ライブならではの一体感と熱量で瞬く間に観客の心を掴んだ。
ロックバラード「再会」、ドラマチックな「飛翔」と冒頭からクライマックスのような空気で会場を圧倒すると、「定命」でエモーショナルに第1部を締めくくる。するとポエトリーを挟んで第2部のVSステージへ。代々木決戦とは異なる趣のコラボレーションが花開いた。
狐子とタッグを組んだのは、バーチャルとリアル両方の姿を持ち、現実と仮想を越境しながら活動するXtuberユニット・心世紀の御莉姫。リアルの姿で登場した彼女は、歌はもちろんステージパフォーマンスでもダイナミックに表現し、狐子とともに新曲「暴力的イグノランス」を披露した。理芽は明透とともに初の2人での新曲「アイノ最適解」を歌い上げる。スタイリッシュなビジュアル、柔らかさを持った歌声、明るいキャラクターと共通点の多いふたりだからこその軽やかさが観客を魅了した。
ヰ世界情緒は過去に何度もタッグを組んでいるVALISと「ぼくらの逃避行」をパフォーマンス。3Dモデルで織り成す鮮やかなフォーメーションダンスからも、これまでにこのメンバーでステージを重ねてきた軌跡が滲み出ていた。春猿火は獅子志司とコラボ曲「天照ダウン feat. 春猿火」を初披露し、艶やかかつユーモラスなサウンドとボーカルで躍動感を作り出す。花譜はバーチャルシンガーユニット・罪十罰とともに振り付けを交えながら新曲「花十カクメイ前日譚」を小気味よく届けた。
リミックスDJ×VJ×ダンサーチーム・elevenplayによる「V.W.P DISCOTHEQUE」の鮮烈な空間から一転、ピアノとオーケストラの優美な音色に乗せてV.W.Pの4人が登場し、彼女たちの間を埋めるようにV.W.Pの音楽的同位体ユニット・V.I.Pが現れると、9人で「機械の声」を歌唱する。リアルとバーチャルの狭間で活動するV.W.Pと、バーチャルの世界で歌うV.I.Pが邂逅、反射することで、このメンバーでなければ成し得ない切なさやあたたかさ、趣が滲んでいた。4人がそれぞれの同位体と向き合いながら歌うシーンやハーモニーも美しい。V.W.Pの面々がバーチャルシンガーとして生きてきた歩みと、彼女たちの分身であり別アーティストである面々で構成されたV.I.Pの歌声が交差する様子は、KAMITSUBAKI STUDIOのクリエイティビティやメタバースを象徴する一幕だった。
ここからはさらにV.W.Pの真髄へと迫る。ソロ歌唱パートでは5人全員が代々木決戦と同じ曲目を同じ順で歌唱した。ヰ世界情緒の「描き続けた君へ」、理芽の「百年」、幸祜(狐子)の「ゲンフウケイ」、春猿火の「身空歌」、花譜の「邂逅」と、どれも彼女たちのテーマソング的位置づけのものともあり、それぞれのボーカルからどんな逆風にも折れないしなやかさと強い意志が感じられた。狐子の歌からも、幸祜が同曲に込めてきた真摯な思いが滲む。音楽的同位体は人工歌唱ソフトウェアであるものの、その源流はひとりの人間からこぼれた肉声だ。どんなに加工をしようとも声にはその人の魂が宿るものだと感じると同時に、狐子の歌声を紡いだクリエイターの思慮深さも伝わってきた。バーチャルを介在するからこそ伝わる人間的なぬくもりがあるのだと実感するセクションだった。
ライブはとうとう最終章へ。衣装が黒や金色をベースにした八咫烏(解)に変わり、「花束」で会場を晴れやかに彩ると、その後はコール&レスポンスが巻き起こる「同盟」、スリリングで凛とした「天命」、艶のあるロックナンバー「欲望」、ハーモニーもアクセントになっていた「遊戯」、演奏メンバー紹介を交えたエモーショナルな「切札」と各メンバーがセンターを務める楽曲でカラフルなステージを展開する。さらに情感豊かにパワーアップしたパフォーマンスは観客の会場を大いに解放させた。
MCで理芽は「(代々木決戦の)再演と言いつつも、その枠に収まらないライブになったのでは」と手ごたえを語り、春猿火はサウンド面をよりアップグレードさせたカミフィルとバンドメンバーに賛辞を贈る。ヰ世界情緒は同公演がSINKA LIVE SERIESの特別版であること、今後さらに様々な実験を行いながら表現の幅を広げる旨を告げ、花譜も「SINKA LIVE SERIESもV.W.Pのアニメもゲームも、これから先も楽しいことがたくさんあるので、わたしたちと一緒に楽しんでくれたらうれしいです」と呼びかけた。
そして花譜は「V.W.Pはお互いの個性がぶつからずに掛け算されている」とグループ活動の充実を語り、理芽は「“現象II(再)”の“再”は、みんなとの“再会”という意味だと思っている」「(観客の掲げるペンライトの)光や声援が届くたびに音楽をやっていて良かった、みんなと出会えてよかったと感動する」と告げ、観客や視聴者との再会に喜びを示した。花譜も理芽も幸祜の存在の大きさを語ると同時にエールを送り、春猿火も「5人でみんなと会いたい、歌を届けたい」「本当のV.W.Pはこんなもんじゃない」と意欲を燃やし、ヰ世界情緒も「大きな5つの柱によって支えられているのがV.W.Pと実感した」「V.W.Pのライブはわたしたちと皆さんの愛で形作られる唯一無二の場所です。ここにいてくれることが、わたしたちの誇りです」と笑顔を浮かべた。
するとリアルタイムで配信を通じてライブを観ている幸祜から「みんなのMCに号泣したし、みんなが主役なのに(幸祜の話ばかりして)何をしてるんだ!」というメッセージが届いたと明かされると、会場はあたたかい笑い声で包まれる。ステージの5人と会場の面々、配信のコメント欄も画面の外にいる幸祜に手を振り、さらなる再会を誓った。
花譜が「まだまだV.W.Pの物語は続きます。みんなついてきてね!」と言うと、この日の締めくくりにV.W.Pのシンボル的楽曲「魔女(真)」を歌唱する。透明感のある伸びやかな演奏が、5人の持つ清廉で純真無垢なムードをさらに輝かせていた。1月の代々木決戦からさらにメンバーの意思や人間味、V.W.Pというグループとしての強固さが際立つライブとなった「2nd ONE-MAN LIVE「現象II(再)-魔女拡成-」」。いつの日か開催されるであろう「現象Ⅲ」がさらにスケールアップすることを予感させる、軌跡と未来が淀みなく表れた一夜となった。
SET LIST
01.共鳴
02.輪廻
03.秘密
04.再会
05.飛翔
06.定命
07.暴力的イグノランス (狐子 × 御莉姫)
08.アイノ最適解 (理芽 × 明透)
09.ぼくらの逃避行 (ヰ世界情緒 × VALIS)
10.天照ダウン feat. 春猿火 (春猿火 × 獅子志司)
11.花十カクメイ前日譚 (花譜 × 罪十罰)
12.V.W.P DISCOTHEQUE (elevenplay)
13.機械の声 (V.W.P vs V.I.P)
14.描き続けた君へ (ヰ世界情緒)
15.百年 (理芽)
16.ゲンフウケイ (狐子)
17.身空歌 (春猿火)
18.邂逅 (花譜)
19.花束
20.同盟
21.天命
22.欲望
23.遊戯
24.切札
25.魔女(真)