春猿火 × ヰ世界情緒、神椿後楽園戦線【DAY-2】「Singularity Live Vol.4」──2人の熱演は共鳴し、未来へと続くステージへ

ライブレポート | 2025.11.14 12:00

KKAMITSUBAKI WARS 2025 神椿後楽園戦線 IN Kanadevia Hall DAY-2
春猿火×ヰ世界情緒 TWO-MAN LIVE「Singularity Live Vol.4」
2025年11月3日(月祝) Kanadevia Hall(TOKYO DOME CITY HALL)

2024年1月の「神椿代々木決戦二〇二四」から始まった、KAMITSUBAKI STUDIOによるリアル会場ライブシリーズ「KAMITSUBAKI WARS」。これまでに都内近郊のライブ会場で所属アーティストが熱演を繰り広げており、今年も「神椿後楽園戦線」がKanadevia Hall(TOKYO DOME CITY HALL)にて2日間にわたり開催された。

DAY-1ではKAMITSUBAKI STUDIO所属のアーティストとクリエイターが一堂に会する「KAMITSUBAKI FES ’25 OUR ONE-DAY WAR」が、DAY-2ではツーマンライブシリーズ「Singularity Live」にて春猿火とヰ世界情緒の共演が実現。「Singularity Live」は理芽とヰ世界情緒によるVol.1、春猿火と幸祜によるVol.2、初の有観客開催となった花譜と理芽によるVol.3に続いて4回目となる。春猿火とヰ世界情緒はV.W.Pやデュエット曲といった音楽活動だけでなく、webラジオ番組「神椿報奏部」でも心を通わせてきた者同士だ。ゆえにこのライブでも様々な活動を通して信頼関係を深めてきた両者だからこそのコンビネーションが発揮されていた。

開演前には「神椿報奏部」出張編が流れ、お題に対してふたりが答えを合わせるというトーク企画が繰り広げられる。30分にわたる和気あいあいとした、テンポのいいラリーが、間近に控えるライブの期待感を上昇させた。オープニングムービーからイントロダクションにつなぐと、ステージの中央に春猿火とヰ世界情緒が登場。ふたりは「盛り上がる準備はできてますか!?」「みんなで最高の思い出作りましょーう!」と呼びかけると、「神椿報奏部」から生まれた「CALL」、アッパーな「愛厭奇縁」と両者名義の楽曲をたたみかける。ふたりは向き合って歌唱したり、動きを合わせたりと息の合ったパフォーマンスを見せ、観客も楽曲に合わせてコールやワイパーをするなど、冒頭から熱量の高い空間が生まれた。

ソロステージセクションの先攻は春猿火。今年2月にリリースした『RULE THE WORLD』収録曲を中心に、最新モードで臨んだ。目まぐるしい展開を見せる「Deep Invite」を巧みに乗りこなしてしなやかに歌い、「まだまだ飛ばしていきますよ! 声聞かせて!」と呼びかけた「SWIPE!」では歌でも佇まいでも女性ならではの凛々しさや可憐さを存分に活かす。華やかなステージングは非常に壮観だ。

春猿火は「緊張するかなと思いきや、最初に情緒さんと2曲歌えたおかげでとても楽しめています」と笑顔を浮かべ、その後は衣装を“銀兜”から“金兜”にカラーチェンジさせてドラマチックでヘヴィなロックナンバー「META」、激情的なロックバラード「回向 -echo-」と楽曲の世界を全身で表現する。音楽に命を注ぐような切実な歌声が、観客の心を大きく揺らした。ライブ初披露となる最新オリジナル曲「(A)letheia」ではミステリアスな歌声で息を呑む緊迫感を作り出し、春猿火の音楽的同位体・羽累が現れると、ともに拡声器を持ってsupercellの「恋は戦争」をカバーする。エモーショナルな春猿火の歌声と、透明感と芯のある羽累の歌声が織りなすハーモニーは、楽曲に燃え盛る恋の炎を立体的に浮かび上がらせた。

ソロステージセクションの後攻、ヰ世界情緒は初期曲からリリース前の新曲まで多彩なセットリストで会場を魅了する。初手「アンビバレント」からダークビューティーとも言うべき魅惑の歌声で聴き手を翻弄し、有観客ライブ初披露となる初期曲「ハイドレンジア」ではファルセットやがなりなどを効果的に用いて情感豊かに歌詞世界とメロディを色付けた。

すると「わたしからサプライズです! 次の曲は新曲です」と告げ、来年1月より放送予定のTVアニメ『魔術師クノンは見えている』OP主題歌「ラケナリアの夢」を本邦初公開した。スピード感のある優雅なサウンドに、彼女のたくましさが前面に出たボーカルが重なり、楽曲に宿るパワーを増幅させる。その後は自身の音楽的同位体・星界を招き入れてピノキオピーの「ノンブレス・オブリージュ」をカバーし、ふたりの歌声で張り裂けそうなほどの悲哀や切迫感を生々しく表現する様は圧巻だった。星界が去ると代表曲のひとつである「ヰ世界の宝石譚」を爽やかな高揚感とともに届け、今年6月にリリースされたバラード「ETERNAL」をライブで初披露する。6曲それぞれでまったく異なる表情を見せ、彼女が多彩な魅力を持つシンガーであることを再確認した。

ライブはクライマックスへと駆け上がる。ステージには再び春猿火とヰ世界情緒の両名が揃い、V.W.Pの派生曲である「生存」を現地にて初披露すると、ヰ世界情緒が「このライブにぴったりの、盛り上がれる曲をふたりで選んで持ってまいりました!」と告げ、柊マグネタイトの「マーシャル・マキシマイザー」、syudouの「キュートなカノジョ」と音楽的同位体・可不ボーカル曲のカバーをたたみかけて会場を沸かす。なかでも観客を驚かせたカバー選曲は宝鐘マリン×こぼ・かなえるの「III」だ。ユーモラスでキュートなラップやボーカルと全身を使ったダンスも会場のテンションを上げ、彼女たちの遊び心が存分に発揮されたアクトだった。

ヰ世界情緒はこのライブに向けての練習期間に春猿火との昔の思い出が蘇ったことを明かし、ライブに慣れていない時期にそれを表に出さないよう努力を続けたこと、そこから時を経てそれぞれがアーティストとして各々の世界を持って歌を届け続けられていることへの感慨に浸ると、「人生においてかけがえのない瞬間を共に過ごすことができているのは本当に幸せなことだなと……。春ちゃんの横顔見ていると思っちゃう」と涙で声を震わせる。春猿火も「隣にじょちょさん(ヰ世界情緒)がいると安心するし、今日まで一緒に頑張ってきた思い出とか、いろんなことが蘇ってきたよ……」と顔を押さえて涙ぐみ、「無事にここにふたりで立てていることが、わたしたちの歌で皆さんが楽しんでくださっている姿が見られることがすごく幸せです」と感謝を告げた。本編のラストは、彼女たちが選んだという「魔女」。同曲には2019年にリリースされた花譜の初期曲から、2023年にV.W.Pが歌唱する「魔女(真)」が生まれたという経緯がある。ふたりの真摯なボーカルは彼女たちの結束だけでなく花譜の歩み、5人でお互いを尊重しながら活動をしてきた歴史も浮かび上がらせるようだった。

「牢獄」でアンコールの幕を開けると、大沼パセリによるふたり名義の新曲「LOVEぃ」をサプライズ披露する。キュートな振り付け、ときめきに満ちたサウンド、胸をくすぐるメロディという、恋の高揚感や焦燥感が詰め込まれたポップソングが会場を包み込んだ。ラストは1曲目に披露した「CALL」を別アレンジにして歌唱する。ふたりはペンライトを振り上げながら観客とともに音楽を楽しみ、笑顔溢れるエンディングを飾った。春猿火は「みんなと思い出が作れてうれしかったです!」とにこやかに語り、ヰ世界情緒は「最高の1日をありがとうございます! またライブでお会いしましょう」と再会を約束し、両者はステージを後にした。

エンドロール後にはこの公演の模様が来年3月にBlu-rayとしてリリースされること、春猿火の自由律シリーズ楽曲のリアレンジや新曲などを加えた完全版となるアルバム『SPICE OF LIFE』が来年2月にリリースされること、ヰ世界情緒の企画原案による育成型アドベンチャーゲーム『Virtual Ties ~ヰ世界情緒夢想曲~』が来年3月にリリースされることなどが新規で発表された。

春猿火とヰ世界情緒はV.W.Pのメンバーとして来年2月28日開催の『KAMITSUBAKI WARS 2026 神椿横浜決戦 IN ぴあアリーナMM DAY-1 V.W.P 4th ONE-MAN LIVE 「現象Ⅳ-反転運命-」』に出演する。同公演はV.W.P主演のTVアニメ『神椿市建設中。』放送以降初のV.W.Pのワンマンライブ。この日は仮想世界から現実世界へ歌の魔法を顕現させ、ファンとの絆を深め、未来への新たな一歩を踏み出すエネルギーを共有する集大成であり、新たな一歩を踏み出すのにふさわしい特別な体験を届けるとのことだ。

「Singularity Live」などで個々の結束も強まり続けているV.W.Pは、さらに一人ひとりの力と5人のチームワークも高めてゆくだろう。それぞれの運命を切り開いてゆく5人の勇姿が観られる日を心待ちにしたい。

SET LIST

01. CALL (春猿火 × ヰ世界情緒)
02. 愛厭奇縁 (春猿火 × ヰ世界情緒)
03. Deep Invite (春猿火)
04. SWIPE! (春猿火)
05. META (春猿火)
06. 回向 -echo- (春猿火)
07. (A)letheia (春猿火)
08. 恋は戦争 (春猿火 × 羽累)
09. アンビバレント (ヰ世界情緒)
10. ハイドレンジア (ヰ世界情緒)
11. ラケナリアの夢 (ヰ世界情緒)
12. ノンブレス・オブリージュ (ヰ世界情緒 × 星界)
13. ヰ世界の宝石譚 (ヰ世界情緒)
14. ETERNAL (ヰ世界情緒)
15. 生存 (春猿火 × ヰ世界情緒)
16. マーシャル・マキシマイザー (春猿火 × ヰ世界情緒)
17. キュートなカノジョ (春猿火 × ヰ世界情緒)
18. III (春猿火 × ヰ世界情緒)
19. 魔女 (春猿火 × ヰ世界情緒)

ENCORE
20. 牢獄 (春猿火 × ヰ世界情緒)
21. LOVEぃ (春猿火 × ヰ世界情緒)
22. CALL (春猿火 × ヰ世界情緒)

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