LIVE 2023 “Now What Can I see ? ~Drunk Garden~”
2023年11月18日(土)19日(日)日本橋三井ホール
※ライブレポートは18日に実施
2023年11月18日(土)19日(日)に、日本橋三井ホールにて、堂珍嘉邦が『LIVE 2023 “Now What Can I see ? ~Drunk Garden~” 』を行った。この時期にこの場所で、堂珍がワンマンを行うのは、1年ぶり・4回目。1年前の公演は(レポはこちら)、2CD+Blu-rayという形で作品化され、11月17日にリリースになったばかりである。
以下、その初日=18日(土)の模様のレポをお届けする。
バンドは、Dr.kyOn(Keyboards,Backing Vocal)、木暮晋也(Guitar,Backing Vocal)、真城めぐみ(Backing Vocal,Percussion)、砂山淳一(Bass)、山下あすか(Percussion,Backing Vocal)、という昨年と同じ5人に、サックス/フルートでゴセッキーこと後関好宏が加わった6人編成。彼は今年4月6日&11日の、ビルボード横浜からの参加である。
菊地成孔のDC/PRGや、在日ファンクや、WUJA BIN BIN等、数々のバンドやセッションで活躍してきたゴセッキーのプレイによって、当然、バンドの音は変わったが、それだけに留まらない。
アコーディオンを含む多彩なアプローチでサウンドを豊かにしていく、バンマスDr.kyOn。シンセベースやコントラバス(弓で弾くこともある)もプレイする砂山淳一。パーカッションとドラムを織り交ぜる山下あすか。といったメンバーたちの演奏で、サウンド・プロダクトが全体にオーガニックな方向にシフトしていきつつある、そんなふうに感じられた。堂珍のボーカルも、どの曲においてもエフェクト等の加工は最小限で、まっすぐに、美しく、こちらに届いてくる。
1曲目の「Reload」の最後に、Dr.kyOnの奏でる鍵盤の音が長く尾を引いてから消えた、その瞬間、堂珍の弾くリフから次の「Damaged Cupid」が始まる。というふうに、堂珍自身のエレキギター/アコースティック・ギターが、曲のポイントになる瞬間が何度もあったのにも、耳を惹きつけられた。
本編13曲・アンコール2曲の、計15曲のセットリストのうち、1年前のここでも演奏されたのは、7曲。
レゲエ・アレンジされたCHEMISTRYの「BACK TOGETHER AGAIN」と並んだことで、バック・ビート感がより心地よく強調された「いかれたBABY」(フィッシュマンズ)。「永久にずっとやりたいなというぐらい好きな曲」という紹介から歌われた「CHEEKY」(Spiral Life)。本編ラストに演奏され、日本橋三井ホールにハンドクラップの音を響かせた「SPARKLE」(山下達郎)の3曲が、去年も今年もプレイされたカバー曲である。
余談だが、ギターの木暮晋也は、1990年代も現在も、フィッシュマンズのサポートメンバーなので、「いかれたBABY」は、ある意味、本家と一緒にやっている、ということになる。
「CHEEKY」は、Dr.kyOnのアコーディオンとゴセッキーのフルートと真城めぐみのコーラスと堂珍の歌、その4つが混じって響き合うさまが、見事だった。
堂珍が「最後の曲、聴いてくださいね」と告げると、オーディエンスから「えー!?」と抗議の声が挙がる。それに対して絶妙のタイミングで「一応最後の曲ね」と返してから「SPARKLE」に入ったのには、見事すぎて笑った。0コンマ何秒ズレてもダメ、くらいの絶妙さだったので。
また、真城めぐみとデュエットする「星たちの距離」(オリジナルはCHEMISTRYのファースト・アルバムでケイコ・リーとデュエット)は、去年は客前で歌ったのが初だったので、真城めぐみが「なかなかね、緊迫しますね」などと言っていたが、今年はスッと自然に曲に入り、美しいハーモニーを聴かせた。
そして。それ以外の6曲が、今年新たに披露された。
1曲目に配置された、ファースト・ソロアルバム『OUT THE BOX』(2013年)からの「Reload」。前述の、レゲエ・アレンジされた「BACK TOGETHER AGAIN」。「『改めてスポットライトを当ててみようコーナー』でございます。気がついたら(CHEMISTRYでは)ずいぶんやってないなと。こっちでやっちゃえと」という前置きから歌われた「雨上がりの虹のように」。ビルボード横浜でも歌われたSPANOVAのカバー「魂は木の葉のように」などが、そうである。
特筆すべきは、まっさらな新曲を1曲、初公開したこと。「こうやってライブから発信して、もっともっとなじんできたら、レコーディングして……みたいな感じでいます。タイトル言っとこうかな。「BETWEEN SLEEP AND AWAKE」、聴いてください」と、演奏されたその曲は、4つ打ちにメロウなメロディが乗り、ゴセッキーのサックスが響く、軽やかなダンス・チューン。すばらしい。「なじんできたら」とか言ってないで、さっさと録ってほしい。
なお、終演後に制作スタッフにきいたところ、1990年代後半から活動を続ける関西在住のトラックメーカー、speedometer.こと髙山純に依頼した曲だそうである。
マジか。インタビューしたことあります、私、25年くらい前に。でも、こんな曲も書ける人だとは、知らなかった。
堂珍嘉邦の新しい方向性を示している曲なのかもしれない。というか、この日のライブ全体が、そういうものだった、という気もするが。1年前のここでのライブがソロ10年間の集大成で、今回が新しいスタート、という。
それから。前日の11月17日が、堂珍の誕生日だったので、それに関するMCも、何度かはさまれた。「45歳になってから初めてのライブなんですけど、お祝いのコメントをたくさんいただいて、ずっと幸せな気持ちに包まれながら今日を過ごしています」と、お礼を言ったり。
アンコールのMCでは、こんな話も出た。曰く、林家ペー氏は毎日「今日は××の誕生日、おめでとうございます」とポストするのを日課にしている。11月17日に、自分もポストされていて、意外だった。でも名前が間違っていて、「堂珍嘉郎」になっていた──。
オーディエンス、大笑い&拍手。以降、「嘉郎、いっちゃうよ?」などと言いながら、「Euphoria」と大胆にリアレンジされた「She Knows Why」の2曲を、オーディエンスにプレゼントした堂珍であった。
なお、「She Knows Why」は、CHEMISTRY名義で2012年1月にリリースした、CHEMISTRY・川畑要・堂珍嘉邦の曲を5曲ずつ収録したアルバムの曲。つまり、正式にソロデビューするよりも前に作った、もっとも初期の曲で、この日のライブを締めた、ということである。
今回のこの『LIVE 2023 “Now What Can I see? ~Drunk Garden ”』日本橋三井ホール2デイズとセットで、『LIVE 2023 “Now What Can I see? ~Holly Garden ”』2デイズも行われる。12月15日(金)16日(土)、会場は有楽町I’M A SHOW。ストリングスのメンバーが加わった、特別編成での開催となる。
SET LIST ※11月18日(土)公演
01. Reload
02. Damaged Cupid
03. BACK TOGETHER AGAIN(CHEMISTRY Cover)
04. いかれたBABY(フィッシュマンズ Cover)
05. 雨上がりの虹のように(CHEMISTRY Cover)
06. CHEEKY(Spiral Life Cover)
07. My Angel
08. 星たちの距離(w/真城めぐみ)
09. BETWEEN SLEEP AND AWAKE(新曲)
10. 魂は木の葉のように(SPANOVA Cover)
11. ALL MY LOVE
12. 悲しみシャワー
13. SPARKLE(山下達郎 Cover)
Encore
En1. Euphoria
En2. She Knows Why