ASH DA HERO LIVE TOUR 2022“Genesis”
2022年10月29日(土) Zepp DiverCity(TOKYO)
ASH DA HEROがソロからバンド編成になったとき、DI:GA ONLINEのインタビューで私はあえて厳しい質問を投げかけた。声も出せない、暴れられないこんな時代、このタイミングにロックバンドになることを選んだASH DA HEROに勝算はあるのかと。
「むしろ勝算しかない」ーー。
(DI:GA ONLINE:ASH DA HERO、ソロからバンドへ進化「みんな見たいだろ?ロックバンドが大暴れするところを」)
そのとき、こちらの目をまっすぐ見ながら即答で返してきたASH(Vo.)。10月29日、メジャー1stアルバム『Genesis』を携え、9月から開催していた1stツアー<ASH DA HERO LIVE TOUR 2022”Genesis“>の最終公演。東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にはそれを証明するような血湧き肉踊る汗まみれの、激アツで希望ある未来しか見えないような素晴らしい絶景が広がっていた。そんな自分たちを鼓舞する意味も込めて、ASHはライブ中何度もこう叫んだのだった。
「俺たちが令和最強のロックバンド、ASH DA HEROだ!」
ものすごいエネルギーでロックンロールのハイウェイを爆走しながらも、いまを生きるものたちの憂いも痛みも嫌なこと全部引き受け、すべてを音楽にのせて、それでも俺ら、諦めないで一緒に見たい景色見るまで突っ走っていこうぜと熱いスクラムを組み、ロックでみんなが共鳴する空間。彼らがこのツアーを通して、このようなパッション溢れる巨大な生命体を会場ごとに生み出してきたのが分かる最終公演だった。
最終公演はバンド単独では初の大舞台。SEはアルバム1曲目の「Genesis」。冒頭からメンバーのシルエットが巨大な紗幕越しに映し出されると、音が生演奏に切り替わる。さっきまでモノクロだった紗幕が赤く染まり、次はそこにスコープが映し出される。センターに狙いを定めた瞬間、ASHのシャウトが場内に地響きをあげて轟き、幕は落下。「New Revolution」でライブが始まると、バンドはこの曲で自らに着火。狼煙を上げたバンドサウンドは、次の「DAIDARA」で今度はフロアに着火。場内はすでに熱狂の海と化し、WANI(Dr.)はサビで首が千切れそうな勢いでヘドバンしながらパワフルなドラムを叩く。 Narukaze(Gt.)がグレッチでロカビリーなリフを響かせる「Avengers」では早くもフロアにジャンプの嵐が巻き起こり、Dhalsim(DJ)のスクラッチが炸裂するイントロから「Merry Go Round」へと展開。ロックバンド界隈随一の切れ味、スキルを誇るASHのラップ、だけど歌メロはキャッチーで、サビは掛け合いまであってアゲ感満載という要素がバランスよく整ったこの曲は、夏フェスや本ツアーを通して彼らのライブには欠かせないキラーチューンへと急成長。間奏ではいまやADHの美肌&スマイル番長となったSato(Ba.)が放つベースのRoundプレイも見どころ。この日も華麗な笑顔とパフォーマンスで観客の視線をさらった「WARAWARA」はそのSatoとASH、Narukazeが揃ってフロントのお立ち台に立ち、オーディエンスは“ぶっとばせー”で全員一丸となってタオルを回しまくり、ハイになるまでお互いのボルテージを高めまくって、ここで前半のピークを作り上げる。ここまで見ていて驚いたのは、ライブハウスでこのツアーを観たときに体感したものと変わらない距離感で、ステージの熱量や息遣いを場内に届けるライブをやっていたことだ。最後尾からステージまでは距離がある。なのに、飛び散る汗が見える。そう感じさせるライブをやっていたのである。
そして、ここまでパーティーソングで散々アゲていったあとは、グルーヴィーなミッドチューンをオーディエンスめがけてぶち込んでいく。「NO WAY」では、ASHが今日イチと言えるものすごいロングトーンでスクリーモを轟かせ、そのあとは、キャッチーなギターリフで体を揺らし、ギリギリのライフを攻めろと歌う「Dead or Alive」へ。“息を吸って目の前を睨む 息を吐いて運命を笑う”と繰り返されるラップが心を打つ「自分革命」という新曲を立て続けにアクトしていった。
MCを通して、ASHから本公演は会場のガイドラインに従い「声出しバツ」公演であることが伝えられる。だがしかし「声がなくても心躍らせるのがロックバンド。ルール守ってみんなで見たい景色にたどり着くのが一番。お前らは心の声出して。俺らエスパーになるから」と、頼もしい発言でファンの気持ちを瞬時にすくい取る。これが彼らの真骨頂。そうして、さあ、ここからは「泣く子も黙るロックンロールショーだ」というASHの歯切れのいいセリフがまた、会場で聞くと気持ちがいいのだ。こんなセリフが似合ってしまうところも、彼らが令和最強のロックバンドたる所以。だが、次にASHが真っ赤なボディのギターをかき鳴らしながら披露した「からっぽの街」は、昭和な懐メロが印象的な曲。ライブではこれを、笑顔を封印したSatoがオールダウンピッキングで男弾きをきめる。ここから、ASH DA HEROの音楽が観客一人ひとりの心にコネクト。「未完成ストーリー」では、曲中ASHが言った「いつだって俺たちはお前たちの心を信じて走ってる」という叫びに、胸の奥をぶち抜かれる。そうして「Gatekeeper」で、その胸はまだ生きたいと叫んでるんだよ、逃げ道はあるんだよと友達のような距離感で語りかけたあと、ASHが告げる。「お前が、君が居場所ないなら、いつでも戻ってこい。居場所用意して待ってるから」と。歌と演奏はラウドなミクスチャー。どの曲も全身全霊の熱演。そのなかで、こうしたフレーズで心の奥底で観客と1対1で寄り添い、揺るぎない連帯を深めていく。これがASH DA HEROのロックショーなのだ。雨の音から始まる「Rain on the roof」をはさみ、心の連帯が深まった後、そのクライマックスとして「レーゾンデートル」で生きるものの憂いや痛み、すべてを抱きしめていった彼ら。
抱きしめたあとは、それを解放して前に進むだけ。まずはDhalsimがDJソロで、場内の空気をかき回していく。椅子から立ち上がり、場内を煽るWANI。そこにASHがエモーショナルなラップを重ねて「エゴイスト」へとなだれ込む。曲中、その場にしゃがんだオーディエンスがASHのカウントに合わせ、世界を打ち抜く勢いで一斉にジャンプするシーンもバッチリきまり、場内の温度はたちまち急上昇。「何観に来たの? コンサート観に来たんじゃないですよね? ロックバンド観に来たんだよな!」とASHがアジテートしまくり、そこから「YELLOW FEVER DANCE」でさらにぶち上がる。ASHとDhalsimが軽やかにタックジャンプを決めて、躍動感あるアクトで“DANCE!”の一斉ジャンプに勢いを加えたと思ったら、次はWANIがドラムソロの場面で、自ら360度回転しながらドラム機材がない場所でもエアドラムを叩くというとんでもないパフォーマンスで場内を沸かせる。その横ではSatoとDhalsimが光るハリネズミヨーヨーで楽しそうにキャッチボールをするという、なんとも楽しいやりとりが繰り広げられ、そこからDhalsim、Sato、Narukazeとソロをリレー。最後に「俺らが令和最強のロックバンド、ASH DA HEROだー!」とASHが絶妙なタイミングで言い放ち、テンションがマックスに高まったところでこの日最大級の一斉ジャンプをして、曲のラストを締めくくった。これだよこれ! 声が出せなくても、こんなにも心でつながりあい、みんなで一つになってぶち上がる。これがロックバンドのライブだ。
「コロナ禍になって、どうなっちまうんだろうって思ったよ。キミたちもそうだろ? だって生きるためには金、住む家、食うものが必要で、音楽は二の次。そんなの分かってる。だけど、思い出してくれよ。音楽が、ロックバンドが消えてしまった街、“なんか違うな”と思ったヤツらの思いが、つないでくれた。ロックバンドを、音楽を守って闘ってくれたのはここに集まってくれた一人ひとりです。ありがとう。キミたちの気持ちを出すライブしてやるから。夜明けは近いぜ。叫べるようになる日は来る」
熱い激白を終えたASHがNarukazeと向かいあい、息を合わせてフリーテンポで歌い出したのは「反抗声明」だった。この日はみんなの心のもやもやを吹き飛ばすように“くそっくらえ”とエモーショナルな叫びを響かせて歌ったASH。そこから弾けるような軽快なサウンドに“諦めることを諦めよう”というメッセージをのせた「Just do it」、“Hey!”で腕を振り上げ、ジャンプしていく「Remember」と抜け感のある爽快なナンバー2曲で思いっきり体と心を解放。そうして「世界をぶん殴れ」では宙を舞うほどの勢いでタオルをぐるぐるぶん回し、圧巻の盛り上がりのなか、ライブはフィニッシュを迎えた。
と思いきや、このあと今後のライブの予定を発表。ここでは12月4日、東京・渋谷ストリームホールで<Circle A presents BABIES NIGHT 2022 -The Unplugged->を開催すること。さらに、12月17日から京都・京都パルスプラザで2日間に渡って開催される<ポルノ超特急2022>の2日目に出演することも告げられた。他にも「伝えたいことあるんだけど、察して。超どデカいニュースがあるから」と付け加えたASHは、いまは夢や希望、やりたいことを「諦めるには都合のいい時代」だといい、それでも「俺たちは揺るがないよ。俺たちこの時代にアホほど、クソ売れたいロックバンドなんすよ! だから、死ぬ気でこの時代、太陽よりもギラギラ輝いてやる」と宣言。そうして新曲「最強のエンドロール」を通して、「この先、最悪のエンドロールが何度チラつこうが、俺たち歌は、夢は終わらないから、一緒に最強のエンドロールを見にいこうぜ」と希望の歌をかき鳴らし、この日のライブを締めくくった。
令和最強のロックバンドは、この荒野の時代、本当に信じられるHEROたち。ASH DA HEROの未来には、巨大な期待しかない。
SET LIST
SE. Genesis
01. New Revolution
02. DAIDARA
03. Avengers
04. Merry Go Round
05. WARAWARA
06. NO WAY
07. Dead or Alive
08. 自分革命 (新曲)
09. からっぽの街
10. 未完成ストーリー
11. Gatekeeper
12. Rain on the roof
13. レーゾンデートル
14. DJ solo〜 エゴイスト
15. YELLOW FEVER DANCE
16. 反抗声明
17. Just do it
18. Remember
19. 世界をぶん殴れ
20. 最強のエンドロール (新曲)
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