TOKYOてふてふ 5都市6公演「ephemeral tour」
2021年6月12日(土)clubasia
リーダーの楪おうひ、サブリーダーの十叶のんの、めありらすと、ちむら詩文、神狩こはく世會、セツナウイネの6人からなるTOKYOてふてふは、ぜんぶ君のせいだ。やKAQRIYOTERROR、星歴13夜などが所属する個性派レーベル、コドモメンタルINC.が今年ニューカマーとして送り出したユニットだ。新人ながら3月に初のワンマンライブ<TOKYOてふてふ 1st ONEMAN LIVE〜虚歪〜>を大成功させ、4月28日には1stフル・アルバム『impure』をリリース。このアルバムを掲げ、初のワンマンツアー<ephemeral tour>実施のため、全国各地へ飛び立っていったTOKYOてふてふ。ここでは、ツアーの締めくくりとなった6月12日、東京・渋谷clubasiaにて行われたファイナル公演の模様をレポートする。
定時をすぎると、SEとともにまずはギター、ベース、ドラムという3ピース編成のバックバンドが定位置につく。TOKYOてふてふはこれまで1st ONEMAN、ツアー、すべてこのバンドセットを率いた編成でライブを行なってきている。暗闇に包まれた舞台、メンバー6人がステージに揃ったところでライブはデビュー曲「innocence soar」で幕開け。全国を巡ったあと、ファイナルの場所へひらりと舞い降りた彼女たちは冒頭からエンジン全開。轟音で疾走するハードなロックサウンドに繊細なピアノが寄り添う音に合わせて、十叶のんのが「今日、最高の1日にするぞ!」と身体をダイナミックに逸らし、フロアに向かって叫ぶと、オーディエンスは早速クラップで呼応。ちむら詩文が泣き叫ぶようなハイトーンヴォイスでこの曲の絶望感と生命を渇望する感情を表現したあと、ラスサビを全員がユニゾンで歌いながら天高く手を伸ばすシーンは、このツアーで蜃気楼(=ファンの呼称)にも定着。ファイナルでは観客全員がメンバーと一緒になって手を伸ばし、会場は早くも一体感ある空気に包まれる。人生いいことばかりじゃないという焦燥感に満ちた「effect pain spiral」は、尋常じゃないパターンで激走するテクニカルなドラムに合わせ、6人がこのツアーの集大成とも思える息のあったキレキレのダンスを披露してファンを圧倒。TOKYOてふてふのライブで、踊るのはメンバーだけではない。続いて和テイストをとりこんだロック「phantom pain」が始まると“ひらひら、ひらひら”というメンバーの掛け声に合わせて、待ってましたとばかりにオーディエンスが楽しそうに手をひらひらさせて体を揺らす。それを見た6人は弾けるような笑顔を浮かべ、観客を一人ずつ指差してアイコンタクトをおくる。そうして、間奏ではこの曲を象徴する華やかな手観音パフォーマンスを全員でタイミングをバッチリ揃えてアクト。TOKYOてふてふのなかでもキーレンジが低めの「for something」は、下を向いて絶望しながら、それでも歩いていくんだという歌詞に綴られた心情を噛み締めながら歌ってオーディエンスの心を鼓舞するなど、観客への目配せ、パフォーマンス、歌唱、どれをとっても初ワンマンのステージからは想像できないほど成長した姿を、オープニングから堂々とした佇まいで見せつけていく。楪おうひが「翔び堕ちル、夢と現実の狭間ノ街並みト」とグループのコンセプトをつぶやいたあと、6人揃って「TOKYOてふてふです」と挨拶したあと、ここからはノンMCでステージを駆け抜ける。
「cross」のキーは全編高音。メンバー各々が踊りながら、限界突破を試みるようなハイトーンを次々と畳み掛けていき、中盤セツナウイネが突然その歌をオクターブ下で歌い出し、それをちむら詩文が感情のすべてを絞り出すような高音でブレイクしていった歌リレーは、6人のディープな魂の叫びが凝縮されていた場面で、会場内はヒリヒリとした緊張感に包まれながらもどんどん熱を帯びていった。次に「merry-go-round」のイントロが鳴り始めると、ステージは照明で夕日のような色に染まる。この曲ではメンバーは舞台中央に集まってサークルを作り、回転しながら一番前に来たメンバーがリードを歌うという歌リレーを展開。狭い舞台上でちょこちょこ回転していくパフォーマンスは、視覚的に彼女たちの可愛さを倍増させ、場内の空気はいつの間にか自然と和らいでいった。そうして閉じた心を開くようなメジャーコードで終わるこの曲に続いて披露されたのは、TOKYOてふてふ唯一のドリーミーなポップチューン「rainy milk」。メンバー同士、目を見つめ合い、手を合わせて踊る振り付けのキュートさも相まって、ここでは6人の笑顔があちこちで咲き乱れる。そうして最後に十叶のんのが“もう少しだけ生きてみる、そう、思える”と歌い終えると、他の5人がかけよってきてむぎゅっと彼女の体に抱きつき、会場はなんともいえない温かい雰囲気に。しかし、ちむら詩文のドスの効いた咆哮を合図に始まった次の「blind paranoid faith」から再びハードなダークてふてふへと移行。ゴリゴリのサウンドをポエティックな語りで歌い繋いでいき、神狩こはく世會の独白の場面がやってくると他の5人は崩れ落ちるようにフロアに倒れこみ、最後は全員髪を振り乱しながら頭をグルグル回すという一連の流れで、TOKYOてふてふの激しく、混沌とした音楽の破壊力はマックスまで高まり、会場のテンションは急上昇。そこに「cry more again」を投下すると、その勢いはさらに加速。続けざまに、誰も予想していなかったゆくえしれずつれづれ(今年解散したコドモメンタルINC.のユニット)の「MISS SINS」のカバーで観客を大いに驚かせ、このブラストビートでオーディエンスの感情を極限まで揺さぶっていった後に持ってきた曲は“泣かなくてもいいんだよ”“どうしたって君は君だから、それを信じて”と、いまいる自分を肯定していくロッカバラード「from lost」だった。みんなの心に明かりを灯すように差し込む柔らかな光がステージとフロアを包み込み、美しく感動的な景色を観客の心に刻みつけ、本編は静かに幕を閉じた。
アンコールはメンバーのMCからスタート。楪おうひが一人ひとりにツアーの感想を求めると、神狩こはく世會は「てふてふが成長できた」と語り、十叶のんのは特別な状況下でのツアー開催であったにも関わらず、こうして東京までたどり着けたことに対して涙を流して喜び「今日、一番カッコいいステージができました」と最後はにこやかな笑顔を浮かべた。各地のステージに立ってみて、セツナウイネは「ステージで踊るのって楽しい」と改めて実感したと伝え、めありらすとは東京までたどり着けるかどうかは、十叶のんのだけではなくメンバー全員が心配していたと明かした上で、TOKYOてふてふという名前だからこそ「東京でライブをやることって大事だし、意味がある」のだと訴えた。ちむら詩文は「感無量」といったあと、涙を浮かべながらこの状況下で「最後までみんなでライブができたこと、本当に、本当に嬉しい」と告げた。
最後に楪おうひが「こんな逆境のなかでも、どんな手を使ってもみんなにTOKYOてふてふを伝えるのが私たちの役目」と話し、それを一緒に叶えてくれた蜃気楼、バンド、スタッフには「ありがとうの気持ちでいっぱいです」と感謝の気持ちを伝えた。このあと、めありらすとから6月30日に発売する1stシングル「tokyo tragedy」が『バズリズム02』(日テレ系)のPOWER PLAYに決定したことがどこよりも早く伝えられると、ファンは大喜び。続けて、楪おうひからは7月18日に初の“生誕祭”を開催することも告げられた。そして、アンコールは記念すべき1stシングル「tokyo tragedy」でアグレッシブにスタート。すると、蜃気楼が一斉に白いサイリウムを光らせるというサプライズで1stツアーを完走したメンバーを祝福。驚きのあまり、涙を浮かべるメンバーたち。次はそんな6人から蜃気楼へのサプライズとして新曲「misery」をプレゼント。そして、最後に「double」を歌い、楪おうひの号令で全員で「ありがとうございました」と一礼してライブは終了。「凄すぎ。なんなの、そのサイリウム。みんなそんな顔してなかったのに。サプライズ上手すぎ」と、めありらすとがファンを讃えるなか、メンバーたちは蜃気楼に手を振ってステージを後にした。
SET LIST
01. innocence soar
02. effect pain spiral
03. phantom pain
04. for something
05. cross
06. merry-go-round
07. ainy milk
08. blind paranoid faith
09. cry more again
10. MISS SINS
11. from lost
ENCORE
01. tokyo tragedy
02. misery
03. double