TOKYOてふてふ 1st ONEMAN LIVE〜虚歪〜
2021年3月13日(土)Veats Shibuya
TOKYOてふてふが3月13日(土)、東京・Veats Shibuyaにてグループ初となる記念すべきワンマンライブ<TOKYOてふてふ 1st ONEMAN LIVE〜虚歪〜>を超新人ながらチケットSOLD OUTのなか、大成功させた。TOKYOてふてふはぜんぶ君のせいだ。らが所属するコドモメンタルINC.が手がける新ユニットで、“翔び堕ちル、夢と現実の狭間ノ街並みト”をコンセプトに、現在は楪おうひ、十叶のんの、めありらすと、ちむら詩文、神狩こはく世會、セツナウイネという6人のメンバーで活動している。てふてふ初お披露目のステージは昨年末に行なったレーベルイベント<こどもめんたる〜はっぴょうの拾陸〜年越しSP〜>。そうして今年に入ってからは1月にデビュー曲「innocence soar」、2月に2ndシングル「double」を配信リリースしたものの、まだ本当に歩きだしたばかりのグループだ。そんなてふてふが、コロナ禍で有観客ライブを行なうのも大変な環境下のなか、初ワンマンのチケットを見事完売させたという事実は凄いことで、ニューフェイスながらも彼女たちに対する周囲の期待感が大いに膨れ上がっていることが分かる。
東京という街が激しい大雨、暴風、落雷に見舞われるなかで迎えたTOKYOてふてふの初陣。客電が落ちるとドラム、ベース、ギター、キーボードを担当するメンバーが静かにオンステージ。初ワンマンからいきなりバンドを背負ってというところに注目が集まる。ピアノの不協和音たっぷりの音階を奏でていくなか、6人が舞台に現れ、ライブはドラムのカウントから「innocence soar」で勢いよく開幕。てふてふのライブは、激しめのロックバンドのステージを観ているようなテンション感だった。疾走感たっぷりのロックサウンドが襲いかかるなか、黒×白のコントラストがはっきりとした衣装で歌い踊る6人。てふてふのコレオを担当しているのんのは、頭からひらひら舞い、キレのあるパフォーマンスでダンスアクトを牽引。ツインテールの詩文は限界越えのハイトーンを使って、てふてふの重力に逆らうようなヒリヒリする高音歌唱をパワーヴォイスで引っ張っていく。“生きながらにして死を愛でる”、そんな絶望的心象風景を歌ったこの曲にぴったりの今夜の荒れ模様の東京の空。それでも、私たちは歌い続けると誓うように、6人が初めてユニゾンで“君がいつか見上げる/絶望の証に鳴る/僕の慟哭”と歌うパートで全員が右手を天高く、まっすぐに掲げる姿は希望に満ち溢れていて、観るものをハッとさせる。
この後は続けざまに新曲のオンパレードだ。「phantom pain」はイントロに合わせて、全員が手をヒラヒラさせる振り付けが印象的。詩文のグロウル始まりに全員が慄いた「blind paranoid faith」は、おうひ、こはく世會がウィスパーヴォイスでセリフを語るようにポエトリーリーディングを入れたり。床に全員が寝転ぶサイレントなパートがあったかと思えば、ハードなギターリフに合わせて髪の毛を振り乱しながら全員で激しくヘドヴァンするパートもある。この曲は複雑な曲展開も含め、歌もパフォーマンスもいっときも目が離せないゾクゾク続きのアクトで会場を魅了していった。さらに、腕を天高く突き上げながら歌い出した「for something」は“僕は歩く/下を向いたまま”と歌うフレーズに合わせて、全員が下を向いた状態でボックスステップを踏んだり、歌から始まる「cry more again」では、間奏を爆音で攻めに攻めまくるバンドサウンドに合わせて、メンバーも負けじとステージ上で3:3で両サイドに分かれ、ダンスで華麗に攻防を繰り広げるなど、サウンド、振り付け、歌詞、バンドそれぞれが要所要所で意味のあるシンクロを重ね、てふてふは楽曲の世界観を伝えていく。
ここまでオープニングからロックチューンでアグレッシブに攻めまくったあと、おうひの掛け声から「TOKYOてふてふです」と声を揃え、曲とは真反対のキュートな笑顔で挨拶を届けた6人。ウイネが「TOKYOてふてふは、かわいいところもあるんですよ」と会場に語りかけ、そこから「rainy milk」を披露。この曲はヘヴィなロックチューンが多いてふてふののなかで、唯一甘酸っぱい匂いが場内に広がっていくような穏やかなトーンに彩られた曲調だった。ここまで光と影、コントラストのきいた色彩だったステージもこのときだけ真っ白い柔らかな光に包まれた。メンバーはチャーミングな笑顔を浮かべながら、その陽だまりのなかで楽しそうにペアダンスや、手を繋いで輪の中をくぐり抜けていく可愛らしい踊りで観客を和ませていった。そこから「merry-go-round」へ。和メロを効かせたこの曲のサビで、再びテンポ、テンションを上げると、夢と現実の狭間へと再び堕ちていく。「cross」では冒頭からギターリフにベース、鍵盤が次々とユニゾンで重なり、大音量になったところでメンバーもAメロから限界突破な高音メロをエモーショナルに歌い放つ。この曲の間奏ではそれぞれのキャラに合わせた振りをつけたペアダンスで、踊りでもメンバーの個性をアピール。そうして、6人がクラップを入れてフロアを煽り、エモーショナルな「tokyo tragedy」をカッコよく歌い、踊って会場の熱気を上げていったところで、最後は木漏れ日のような照明が降り注ぐ中、3連のせつないバラード「from lost」で泣いてもいいし泣かなくてもいいんだよというメッセージを観客に寄り添うように歌いかけ、てふてふは静かに本編を締めくくった。
「アンコール、ありがとうございます」といって再びステージに戻ってきたメンバーたち。まずは「こんなにたくさんの方が集まってくれてうれしいです」とリーダーでもあるおうひが、観客に向けて感謝の言葉を伝える。詩文は、これまで2曲しかなかった持ち曲が増え、こうしてワンマンができるようになったことについて「幸せです」と話した。そうして、らすとが「重大発表があります」といい、続けて4月28日(水)に1stフルアルバム『impure』をリリースし、合わせて5月3日(月・祝)東京・Shibuya eggmanを皮切りに全国5都市6公演を行なう初のワンマンツアー<TOKYOてふてふ ONEMAN TOUR ephemeral tour>を行なうことを告げると、場内は大きな拍手に包まれた。「アルバムを出してツアーを回って、最後にはまたこの渋谷に戻ってくるので、みなさん来てくださいね。それでは、最後の最後までTOKYOてふてふ、盛り上がっていきましょう!」とのんのがいい、アンコールは「effect pain spiral」で幕開け。手数多めのドラミングに合わせた6人のクラップ、スピーディーなギターリフで気持ちよく疾走したあと、サビではメンバーがフロントに横並びになって、手をくるくる回しながら客席を煽る。キラーチューンになりそうな爆発力をもったこの曲でぶち上がったあと、この日最後に彼女たちが用意した曲は「double」だった。いまにも泣き出しそうな6人。グッと涙をこらえて、絶望しながらも、この先に希望がなくとも、私たちは歩きだすという決意を歌を通して観客に伝えると、間奏でヴィバルディの「春」が流れるシーンがやってくると、その想いを受け止めた観客たちが指揮者となり、タクトを振るように手で拍子を刻み、メンバーに温かいエールを届けた。こうして、てふてふの初ワンマンライブは、ステージ上もフロアも感動的な気持ちに包まれたなかで終演を迎えた。
この日、嵐のようなTOKYOの空から地上へと翔び堕ち、渋谷の街中にその存在感、傷跡をしっかりと刻みつけたTOKYOてふてふ。彼女たちは、ここから初のワンマンツアーへととび立っていく。TOKYOてふてふがみせるヒリヒリするような夢と現実の狭間を、ぜひ体感してみて欲しい。
SET LIST
01. innocence soar
02. phantom pain
03. blind paranoid faith
04. for something
05. cry more again
06. rainy milk
07. merry-go-round
08. cross
09. tokyo tragedy
10. from lost
ENCORE
01. effect pain spiral
02. double