2016年のロンドンから始まり、世界各地で大騒ぎとなっている「Exhibitionism-ザ・ローリング・ストーンズ展」が3月からアジアでは唯一となる日本についに上陸する。
この企画展が大きな話題と注目を集めている理由は、これがストーンズ自らのプロデュースであるという事と、その豪華な内容と規模の大きさで、楽器や衣装やアートワークなど物凄い数の様々な貴重品の展示から、デビュー当時共同で住んでたアパート部屋の完全再現やミキシング体験スタジオ、更には3Dでのコンサートライブなどなど...と大変な事になっていて、世界中で僕らのようなストーンズファンのみでなく、老若男女の音楽ファンやストーンズを知らない一般の人達までが多数押し寄せており、世界各地でその動員記録を更新し続けているそうだ。
ほぼ40年近くも前からずっとストーンズファンである僕も、この企画展が始まった時から「いつか日本でやってほしい…」と切望していたので、もう今から楽しみで楽しみで仕方ない。
そこで今回は、きっと日本でもこの企画展に沢山訪れるであろうストーンズをあまり知らない音楽ファンや一般の方々に向けて、「ストーンズが史上最強のロックバンドな5つの理由」と題して、僕なりの見方で(私見を交えながら)ストーンズのその魅力と凄さをダイジェストでご紹介したい。ストーンズを知ってる人もツッこみながら是非お読みいただきたい。
その1【 結成57年現役メガ人気バンド 】
まずは何よりその歴史の長さだ。結成されたのは1962年でオリジナルメンバーのミックは現在76歳、キースは75歳、ドラムのチャーリーなんか77歳である(脱退したオリジナルベースのビル・ワイマンはなんと今82歳!)。この歳でいまだ現役のワイルドなロックンロールバンドなのだから本当に信じられない。メンバーも絶対想像してなかっただろうし僕らファンもまさかこんなに長く続くとは思っていなかった。しかも一度も解散していないし、この企画展の最中の4月から新たなライブツアーまで始まるし、さらに今なんと新作のスタジオアルバムのレコーディング準備まで並行してやっている。もう一度言うが本当に信じられない。やはりストーンズが史上最強と言われるまず何よりもの理由はこの「今も活動し続けている」という事だ。
それに加えて凄い事は、今も続くその圧倒的な人気だ。いくらどれだけ長い間バンドが続いていようとも人気が落ちればすぐに忘れ去られていくし、ずっと人気者で話題になってトップに居続けないと史上最強と呼ばれ続ける事もないだろう。
ストーンズはデビューしてすぐに人気バンドとなり、何度かの波や長いブランクもあるが現在までコンスタンスにアルバムやシングルでヒットを飛ばし続けており、ライブの動員数も昔からずっとケタ外れだ。次のツアーも16か所もの巨大スタジアムツアーである。 僕がロックを好きになった40年くらい前からストーンズはすでに「世界最高のロックバンド」と呼ばれていたし、僕の知り限り「落ち目」と言われた事も一度もない。みんなの知っている洋邦の様々なロックバンドやアーティスト達とそれを見比べてみれば、ストーンズがいかに史上最強と呼ばれるに相応しい前人未踏な事をやり続けているのかが分かるだろう。
その2【 歴史的ロック名盤名曲の数々 】
いつも比較されるビートルズがそうであるように、ストーンズも今まで出してきたアルバムやシングルのほとんどがロックの古典の名盤名曲としてロックのみでなく音楽の歴史の中に深く刻み込まれている。特に60年代中期から70年代後期のアルバムは全てが神がかった作品ばかりで、多くのロックファンや音楽評論家達もこの頃のストーンズを「ロックの頂点」と評する人は多い。僕ら中堅世代以降のストーンズファンも、この頃のアルバム群を追体験してストーンズにノメり込んでいった人が多いし、この頃のアルバムが今もリイシューされ続け新たな若いストーンズファンを生み続けているのも必然的な事なのだ。
その楽曲についても、ただの黒人ブルース好きのロンドンの若者たちがどんどんオリジナルへと化けていき、新しい革命的なロックンロールアンセム曲を次々と発明していく系譜は本当にドラマチックで、まさにロックの歴史の中の最高の1ページという感じだ。
今でも「最もロックな曲とは?」と聞かれると、反射的に「サティスファクション」や「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」と答えるロックファンは多い。
要するにストーンズとはそういうバンドなのだ。
その3【 世界一のライブマジック 】
ストーンズの最大の魅力と言うとやはり「ライブ」だ。
ストーンズとは?と聞かれた時にファンがまず真っ先に思い浮かべるのは腰をクネらながら歌い踊るミックと、その横でカッコよくギタープレイをキメるキースの姿だろう。
ストーンズは今さらあえて言うが、実は演奏も歌も上手くはなく(いまだにそうだから凄い)、驚くほどラフだったり、時には信じられない位ハチャメチャだったりもするが、そこにまさしく世界最強と言われる誰もマネできない不思議なバンドマジックとグルーヴが生み出されていて、それがめちゃくちゃカッコよく、魔力のような中毒性があり、ストーンズはスタジオアルバムよりライブアルバムの方が好きだというファンも多い。昔は映像でしか見れなかったライブパフォーマンスもとにかく超アグレッシヴでクレイジーで、そのライブの規模のデカさもずっと客が大騒ぎしてるヤバい会場の雰囲気も何もかもが圧倒的で、今でこそストーンズも何度か来日してくれたので僕らも生でそのライブを体験できたのだが、結成から28年も経ってからの1990年の日本初来日までは、僕らはその数々のライブアルバムやライブビデオ(共に海賊版含む)を見聞きしまくって、まだ見ぬストーンズに対して過剰な程の妄想と幻想を膨らませ続けていた。だから伝説の初来日公演(東京ドーム10日間!)の時、初めて生で見たストーンズに僕ら待ち焦がれたファンは本当に感動し熱狂したのだった。
その4【 セックス、ドラッグ、ロックンロール 】
今やすっかり時代が変わってしまったが、僕らは昔ロックのその不良性や自由でクールな生き様に憧れてロックを聞き、危険な匂いを放つロックバンドに心惹かれていた。
「不良」という言葉や、この「セックス、ドラッグ、ロックンロール」という有名なフレーズも今や死語と化してしまったが、昔のストーンズはまさにそれを体現していた「元祖スキャンダラスバンド」だった。ミックもキースも女性やドラッグやなんやでトラブルばっかり起こしてたし(そのドラッグ問題でずっと来日できなかった)、キースは「今にもクスリで死にそうなミュージシャン」というランキングでず~っと一位だったし、初代リーダーであったブライアン・ジョーンズは実際に謎の死を遂げてしまったし、他にもここにも書けないようなヤバ過ぎる伝説がストーンズには山ほどある。そんなデンジャラスの渦の中でストーンズは死の匂いと凄まじい色気を放ちながら傑作を生み続け圧巻のライブパフォーマンスでずっと勝ち続けてきた。
ロック=不良、不良=ローリング・ストーンズ。結局ストーンズが世界最強のロックバンドと呼ばれ、今も愛される理由の大きな部分を締めるのはストーンズのその「不良でセクシーでクールでクレイジーでとにかくカッコいい!」というバカみたいな単純でフィジカルな答えが一番合ってると思う。
まさにストーンズを象徴する歌詞「It's Only Rock'n Roll (But I Like It) 」“それはただのロックンロール、でもそれが大好きなのさ”そのものなのだ。
その5【 ロックバンドの原型で継承者 】
ストーンズは洋邦問わず、現存するほぼ全てのロックバンドやロックアーティストの原型である。今活躍する若いアーティストがもしストーンズを知らなくても、そのアーティストが見聞きしてきた過去のミュージシャン達は何かしらのストーンズの影響を受けていたりするので、無意識の内にストーンズのDNAは今のロックシーンに脈々と受け継がれているのだ。それは楽曲やライブパフォーマンスだけでなく、ロックビジネスの開拓者としてもストーンズの功績はあまりに大きく、ロックアーティストが世界中のスタジアムをツアーしてまわるという巨大ビジネスの先駆者でもあり、あの世界一有名なベロのバンドロゴマークなどを使ったストーンズというブランディングの確立も有名企業達がこぞって真似したほどの見事なものだ。
そんな世界的成功を納め続けていても、ストーンズは今でも「自分達の一番の役目は大好きなブルースやロックンロールを次世代に継承していく事だ」といつも言っている。きっとそれはストーンズの本当に正直な気持ちだと思うし、だから僕らもそのストーンズの「ロックンロールの魂」の部分を感じ触れる事ができ、今も共鳴し続けていられるのだと思う。
まとめると、結局ストーンズの歴史はそのままロックンロールの歴史みたいなものでもあるので、このストーンズ展にはストーンズの魅力のみならず、結果的にロックンロールの歴史が目一杯詰まったような楽しい企画展になっているという事がわかってくる。だからストーンズを知らない一般の人達もまるでロックンロールの博物館や美術館に行くような気分で世界中で沢山訪れているのだろう。
さあ、オレ何回行こうかな...。