安部コウセイの、ふるさとにまつわるエピソード
編集部:安部さんのふるさとにまつわるエピソードを教えてください。
うちの父親(安部慎一)が漫画家で、超頭のおかしいスーパー酒乱で(笑)。家に帰ったら父親が暴れまわっているという家庭環境で育ったんですよね。だから家にいたくないので、チャリンコこいで近所の大浦池(※福岡県田川市)まで行って釣りをしていました。父親がそんな状態だなんて、中学生だと友達に言えないじゃないですか。ひたすら隠していた僕にとっては、大浦池での釣りがかなりの救いになっていましたね。
それで父親の状態が悪いときに、宮川くんといういまでも付き合いのある仲のいい友達とふたりで釣りに行って。そこで初めて勇気を振り絞って、宮川くんに自分の家庭環境を告白したんですよね。夏が終わったくらいの時期で、「まんが日本昔ばなし」みたいなすごい夕日がバキーンと出ていて……すごく鮮明に記憶に残っています。そんなシリアスな話、魚釣りをしながらでないと友達にもできなかったと思う。魚釣りがなかったら俺はだめになっていたと思います。だからいまでも自分にとって魚釣りは大きな存在なんですよね。
真くん(伊東真一/Gt)も僕と宮川くんと同じ中学なんですけど、そのときはグループが違ったんですよね。SPARTA LOCALSを組んで、上京して。地元の友達と東京に出てきて、いまも音楽をやっているのはいいものだなと思います。とはいえもともとただの友達同士だったのが、仕事で関わる時間が長くなると、昔持っていた感覚的なところがずれてきたり、心の距離が離れすぎているなと思うことがあるんです。でも福岡に戻ると、昔の俺と真くんに戻る。そういう意味では故郷は大きな意味を持っていますね。
編集部:夏の終わりの夕暮れ時の情景、なんだかHINTOの音楽にぴたりです。
魚釣りが好きなミュージシャンがたくさんいらっしゃるのも、なんだか頷けるお話でした。
安部さん、ありがとうございました!