ASKAの最新ツアー(2023年4月1日~8月4日全国17公演)のライブ映像作品『ASKA Premium Concert Tour Wonderful World 2023』Blu-ray+Live CD(5月25日東京国際フォーラム ホールA公演収録版)が、9月27日(水)にリリースされる。同作品の発売を記念して、9月19日(火)、全国25か所のユナイテッド・シネマで先行上映の開催が決定。
ASKAまさかの先行上映~ 一夜限りのWonderful World Live「ASKA Premium Concert Tour Wonderful World 2023」と題した上映会では、いち早く映画館の大スクリーンでASKAのライブの全容が再現される。
ASKA ライブレポート
ASKA Travel TV & Lush Music presents
「ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World-2023」
2023年8月4日(金)東京国際フォーラム ホールA
取材・文:長谷川 誠
“歌い切る”“歌い納める”という表現がぴったりなツアーファイナル公演だった。「コンサートは1つの作品」とASKAがMCで語っていたが、その言葉どおり、ツアーで作り上げてきた“作品”を完結させる見事なステージとなった。2023年8月4日の東京国際フォーラム ホールA公演。大自然の映像とインスト曲「Touch the earth」に続いて、海や空を連想させる青いジャケットを身にまとったASKAが登場。エモーショナルなフェイクで「Trip」が始まると、大きな歓声が起こった。幻想的な音楽の旅へと誘うような始まり方が鮮やかだ。ASKAの歌声の伸びやかさ、艶やかさ、力強さは驚異的だ。今もなお“伸びしろ”があるなんて、一体どんな喉をしているのだろうか。気迫あふれる「自分じゃないか」、壮大な歌の世界が広がる「地球という名の都」、強い意志の宿った「憲兵も王様も居ない城」、観客を抱きしめていくような「LOVE SONG」など、バンドとの固い絆が歌の世界をより強固なものにしていると感じた。心地よい風のような爽快さが魅力的な「風の引力」、深遠にして神秘的な「青い海になる」、過去の中にある希望を今の瞬間に蘇らせていくような「C-46」、大歓声の中での「はじまりはいつも雨」、渾身の祈りの歌「しゃぼん」などなど、起伏に富んだ構成で前半終了。休憩中のメンバーとのやりとりをスマホで撮影OKというASKAからの粋な計らいもあった。
後半は、今年3月に開催されたデイヴィッド・フォスターとの共演ライブを再現するようなコーナーからスタート。ゲストボーカルとしてASKAの愛娘でシンガーソングライターの宮﨑薫が登場し、セリーヌ・ディオンの「To Love You More」をソウルフルに熱唱した。音楽への情熱のすべてを注いで歌う姿は、ASKAと重なるところもあると感じた。ASKAもケルティック・ウーマンなどでおなじみの「You Raise Me Up」を丹念な歌声で披露した。音楽を継承することの素晴らしさを実感するコーナーだ。
会場内に明るい空気をもたらした「東京」、アカペラの歌声に大きな歓声が起こった「太陽と埃の中で」、熱いハンドクラップの中での「モーニングムーン」など、会場内が熱狂の渦に包まれた。終盤に演奏された「今がいちばんいい」が説得力を持って響いてきたのは、“今がいちばん”と言える圧巻のステージを展開してきたASKAが歌っているからだろう。陸上競技にたとえるならば、長距離走を短距離走のようにパワー全開で歌い続けるステージ。しかも終盤になってもそのパワーを衰えない。「On Your Mark」での夢の斜面を一気に駆け上がっていくような強靱な歌声にも胸が熱くなった。挑む姿がそのまま歌になっていると感じる瞬間が数多くあった。ツアーを締めくくる最後の曲「I feel so good」は、困難に立ち向い、挑み続ける者に訪れる“救いの歌”のようにも響いてきた。
希望の存在を浮き彫りにする歌が目立っていた。挑むことのかけがえのなさ、音楽の素晴らしさ、世界の美しさ、そして生きることの尊さを再認識させてくれる夜となった。開演前の影アナがASKAだったこと、終演後の閉じた幕の背後で楽しそうに盛り上がるASKAとバンドのメンバーの姿が透けて見えたことなど、ニヤリとさせられる演出も多々あった。愛と希望と勇気とユーモアあふれるファイナル公演。「自分をかきたててくれるミュージシャンとしての喜びを途絶えさせたくないので、来年もツアーをやります」とのASKAの発言もあった。音楽の楽しい旅は続いていく。「今がいちばんいい」の“今”は、今後のステージでも更新されることになるのだろう。