エレファントカシマシのデビュー30周年アニバーサリーを締め括るワンマン公演『30th ANNIVERSARY TOUR “THE FIGHTING MAN” FINAL』が、3月17日(土)にさいたまスーパーアリーナで行なわれた。
さいたまスーパーアリーナのBゲート付近には、この日と翌日限定の観覧無料ミュージアム『30th ANNIVERSARY TOUR展』『COME BACK! エレファントカシマシ写真展』が午前11時よりオープン。メンバーを長年撮り続ける岡田貴之による今回のエレカシ初の47都道府県ツアーを振り返るライヴ写真、47都道府県名をそれぞれプリントした“エレカシTシャツ”、各会場で見られたオリジナルスタンプ“ご当地はんこ”、バンドの軌跡を辿る年表などが展示され、ファンたちは列をなして早くも楽しい時間を過ごしていた。開演前になると、アリーナからスタンドまでがびっしり埋まってスタンバイ完了! ご当地Tシャツを着た観客もたくさんいる。
そして、いよいよ開演の時が訪れ、エレカシ30年分のオフショットやアーティスト写真、ジャケット写真、“Re; Start from here, today. with all of you, everybody.”のメッセージなどが次々にサイドビジョンへ投映される中、宮本浩次(Vo&Gu)、石森敏行(Gu)、高緑成治(Ba)、冨永義之(Dr)のメンバー4人が登場して深々とお辞儀。さらに、サポートのヒラマミキオ(Gu)、村山☆潤(Key)、山本拓夫ホーンズ、金原千恵子ストリングスを加えた総勢18名で、瞬く間にプロローグ「3210」へ。続くのはもちろん、渾身の「RAINBOW」だ。いきなり宮本がハンドマイクで絶唱、花道へ駆け出し、ビジョンとステージが七色以上の輝きに染まって、会場は歓喜に揺れまくる。冨永に向かって宮本が“ワン、ツー、スリー、フォー”と合図して始まった「奴隷天国」では、色とりどりのバルーンがアリーナに投下! “死ね”“何やってんだよ、踊れ!”と凄むささくれ立った歌詞に何故だかマッチしていて、ホーン&ストリングスの唸りも笑っちゃうほどすごい。
“ようこそ、エビバデ! 今日は最高の一日にすべく、たくさんのメンバーで、みんなに自慢の曲をお届けしに参りましたエレファントカシマシです!! 30周年のツアー、記念の日がソールドアウトということで、本当にありがとうございます”と、最初のMCで宮本が改めて感謝の言葉を述べる。そして、大切な「悲しみの果て」、“15歳の時に作った”活動初期のナンバー「星の砂」を4人だけで披露。ロックバンドらしい骨太さにガツンと痺れる一方、自分が肩を組んで前に押し出した石森に対して“まだいたの?”と言っちゃう宮本には思わず微笑んでしまう。また、“ハラハラドキドキで毎日過ごしてます。というのも、6月6日にアルバムが出ることが決定してまして。みんなにいい歌届けたいぜ~! ドドドドーン!!!”なんていう突然の発表でもファンを喜ばせた。
中盤以降は宮本の歌にじっくり酔える時間が増えてくる。「夢のかけら」「風に吹かれて」「昔の侍」などはストリングスを活かし、気品あふれるコンサートの様相すら呈していたりと、その佇まいに、静かな説得力に、心が沸々と盛り上がってきて、エレカシの間口の広さを実感。そんな流れでの「さらば青春」、グッとこないわけがない。《僕ら そうさ こうして いつしか大人になってゆくのさ いざゆこう さらば 遠い遠い青春の日々よ》――このラインに想いが錯綜する。やわらかい音色ですべてを包むようなヒラマのアコギ、客席からの“ありがとう!”の声にも涙腺が緩む。
ツアー中に降ってきたという「ベイベー明日は俺の夢」は、上がったばかりの手作り映像(車窓風景ベースのドキュメント)とともにセンチメンタルに届けた。石森がこの曲のためにダブルネックギターを新調したこと、ヒラマと村山を含む6人でツアーを車で移動した思い出を楽しげに話す宮本。歌詞のとおり、エレカシの旅は今日からまだまだ続いていく。素敵な明日を信じて。
ピンスポが当たる宮本のエレキギターから始まった「笑顔の未来へ」、場内がぱぁっと明るくなって桜花繚乱の空間が生まれた「桜の花、舞い上がる道を」でますます輝くエレカシ。「今を歌え」は冨永のスネアが深遠に響く中、何度も生まれ変わってきたバンドの姿をしみじみと伝える。「風と共に」で《行き先は自由》と大きく手を広げる宮本、それを信じて全力で後押しするメンバーが眩しくて仕方ない。彼らはいつも今を生きている。今日が昨日の続きであること、その続きに明日があることを歌いながら。時に空へ、時に風へ、想いを馳せながら。
《胸を張って出かけようぜ》のところで宮本がジャケットを脱ぎ捨てた鉄板「ガストロンジャ―」、宮本と石森が花道に飛び出した「俺たちの明日」に感激して一部が終了。並のバンドならここでとっくに大団円で万々歳なのですが、彼らの場合は当然やり足りません。
髪をおっ立てて再登場した宮本。スーツの襟に“Roll & Spirit”のピンバッジが付いている。二部はホーンセクションが勇ましいスカバンドみたいなハイテンションの「男餓鬼道空っ風」でスタートし、「この世は最高!」では音の隙間に滑り込んでくる高緑のベースに会場が大いに沸く。男気満点の展開に乗せてギラつく「RESTART」へ続けば、ステージからは火柱が上がり、エレカシの燃える生きざまを目の当たりにするのだった。