~松本 隆 作詞活動47周年記念スペシャル・プロジェクト × 恵比寿ガーデンプレイス23周年記念WEEK~ サッポロ生ビール黒ラベルPresents 風街ガーデンであひませう 2017
2017年10月8日(日) 恵比寿ザ・ガーデンホール
TEXT/森 朋之
PHOTO/旭 里奈(CYANDO)
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作詞家・松本 隆のデビュー47周年を記念したイベント「サッポロ生ビール黒ラベルPresents 風街ガーデンであひませう2017」(恵比寿ザ・ガーデンホール)が10月8日(日)、最終日を迎えた。3日間に渡って行われた同イベントの最終日に出演したのは、ROLLY、中川翔子、安藤裕子、OKAMOTO’S、上中丈弥(THEイナズマ戦隊)、森高千里、田島貴男(ORIGINAL LOVE)、そして、“風街レジェンドGUEST”の太田裕美。際立った個性を備えたアーティストたちによって、松本 隆が紡いできた数々の名曲に新たな息吹が吹き込まれ、会場は豊かな音楽空間へと導かれた。
開演前、観客はロビーに設置された「風街BAR」で「パーフェクト黒ラベル」(サッポロビール)などを楽しんでいる。BGMはもちろん、「A面で恋をして」「すこしだけやさしく」「ルビーの指環」などの松本 隆の作詞による楽曲。ドレスアップした観客も多く、会場は華やかな雰囲気で包まれている。
18時を少し過ぎた頃、「風街ガーデン」最終日がスタート。トップバッターとして登場したのは、ド派手な衣装に身を包んだROLLY。まずは煌びやかなロックンロール・ギターを軸にした「てぃーんず ぶるーす」(原田真二)を披露し、観客のテンションを一気に引き上げる。「今夜、みなさんは最高に幸運なのよ! 言葉の魔術師、日本一の詩人、松本 隆大先生の作品をたっぷり堪能できる夜なんですもの!」という挨拶から「花いちもんめ」(はっぴいえんど)へ。ハードかつポップなギターリフ、ハードロック・テイストのサウンド、シャウトを交えたボーカルで原曲の新たな魅力を見事に引き出していた。
続く中川翔子は、松本 隆・筒美京平の黄金コンビによる2008年のシングル曲「綺麗ア・ラ・モード」から。ひとつひとつのフレーズを丁寧に、可愛らしく描き出すボーカルに大きな拍手が送られた。さらに「この歌詞の舞台はたぶん軽井沢だと推理して、二十歳の夏に本当に軽井沢に行って、この曲を聴いて泣きました」というエピソードとともに「レモネードの夏」(松田聖子)へ。松本 隆作品に対する愛情とリスペクトが真っ直ぐに伝わるステージだった。
安藤裕子は「夏なんです」「氷雨月のスケッチ」「かくれんぼ」をつなげる“はっぴいえんどメドレー”を披露。言葉とメロディが織り成す豊かな郷愁感を体現し、観客を魅了する。音楽監督 鈴木正人(Ba)を中心とした“風街ばんど”の演奏もさらに充実。日本語によるロックの先駆的バンド、はっぴいえんどのグルーヴを受け継ぐようなアンサンブルはまさに圧巻だった。
「自分で曲作りを始めたときに、日本語の響きで歌詞を書くのがすごく難しくて。そのときに出会ったはっぴいえんどの音と言葉の響きに衝撃を受けて。それを参考にさせてもらいました」というMCを挟み、「ないものねだりのI WANT YOU」(C-C-B)。言葉の意味を超えた“響きの気持ち良さ”を現代風のアレンジとともに表現してみせた。
ここからはOKAMOTO’Sのコーナー。メンバー4人がステージに登場、「セクシャルバイオレットNo.1 」(桑名正博)をシンプルかつ骨太なサウンドで披露する。オカモトショウ(Vo)のセクシーな男っぽさを感じるボーカルもインパクト十分だ。ここでショウが上中丈弥(THEイナズマ戦隊)を呼び込み、上中が作曲した「ピーズ細工」をセッションする。この曲は映画「リンダ リンダ リンダ」に登場する劇中バンドの楽曲として制作されたロックナンバー。青春の儚さ、美しさを生々しく映し出す歌詞を、上中、ショウがエモーショナルに響かせた。「じつは(オカモト)レイジ(Dr)が使っているドラムセット、松本 隆さんのものなんです」(ショウ)「“おまえらみたいなもんが使ってんじゃない”と言われないようにがんばりますので、今後もよろしくおねがいします」(ハマ・オカモト/Ba)というトークの後は、はっぴいえんどのロックナンバー「はいからはくち」。70年代の音楽への造詣の深さ、はっぴいえんどと松本 隆に対する尊敬、卓越した演奏センスがひとつになった素晴らしいパフォーマンスだった。
ここからイベントは後半へ。まずは森高千里。黒を基調にしたシックな衣装で登場した彼女が歌ったのは「七夕の夜、君に逢いたい」。松本 隆・細野晴臣によるソングライティング、編曲をTIN PAN ALLEYが担当したこの曲は、1999年に“Chappie”(デザインチーム“groovisions”が制作したキャラクター。楽曲ごとに異なるアーテイストが歌を担当)名義でリリースされた楽曲。森高がこの曲をライブで歌うのは今回が初めていうこともあって、会場からも大きな声援が巻き起こった。90年代とまったく変わらない、キュートな歌声も印象的だった。
フロアを濃密なボーカルで染め上げたのは、田島貴男(ORIGINAL LOVE)。まずは「夜行性」(ORIGINAL LOVE)でブラックミュージック的なサウンドを描き出し、観客の身体を揺らす。「『夜行性』は松本 隆さんに歌詞を書いていただいて。読んでみると散文詩のようなんですけど、歌ってみるとめちゃくちゃ滑らかなんですよね。非常にリズムカルで歌いやすいんです。聞いてみたら“意味よりもリズムを大切にしている”と仰ってました」と松本 隆の歌詞の魅力の一端を紹介し、ラテン風のアレンジで「指切り」(作曲/大瀧詠一)を披露(じつはこの曲、田島がピチカート・ファイヴが加入した際、最初にセッションした楽曲なのだとか)。さらに「昨日は堀込(泰行)くんが歌ったらしいですけど、クドくいきたいと思います」と「砂の女」(鈴木茂)を熱唱。ソウルフルかつダンディーなステージングで会場を沸かせた。
3日間に渡って開催された「風街ガーデンであひませう2017」のファイナルを飾るのは、この日の“風街レジェンドGUEST”太田裕美。赤いブラウスとタータンチェックのスカートという出で立ちでステージに上がった彼女はまず、鍵盤の弾き語りで1974年のデビュー曲「雨だれ」を披露。切なさと憂いを含んだボーカルが広がり、会場全体が豊かな感動で包まれる。「“風街ガーデン”、今日はラストデイ。息子に“お母さん、ラスボスだね”と言われました(笑)」「松本 隆さんの生誕100周年のライブのときに、この歌は誰が歌うのかな?と思うと、楽しみでしょうがありません」というMCから名曲「木綿のハンカチーフ」。遠距離恋愛の恋人同士のストーリーを歌い上げ、会場からは手拍子が起こる。ボサノバ風のアレンジも、彼女のシックな歌声を際立たせていた。
ここで太田は、改めて松本 隆との交流について語った。
「松本さんとは本当に長いおつきあいです。メールというものをはじめて送ったのも、Twitterの最初のフォロワーになってくれたのも松本さんでした。でも、一線は越えてません(笑)。(2階席の松本に向かって)ね、松本さん」
「松本さんと私は“作詞家と歌手”というタッグを組んで、一線どころではない、たくさんの障壁とかルールとか、そういうものを一緒に越えてきたと思います。一緒に戦ってきた戦友でもあると思います」
「その戦友の一人でもある大瀧(詠一)さんが亡くなって、ぽっかり穴が開いてるような、そして、まだすぐそこにいるような。残されたものは、その思いをずっとずっと伝えて…。何年経っても歌は生きていくものだと思うし、歌い継いでいくのが歌手としての使命だなって思います。これからも“風街”のライブがたくさん開かれるといいなという気持ち、みなさんへのお礼の気持ちを込めて、ラストソングになります」
ラストは「さらばシベリア鉄道」。大瀧詠一の代表作「A LONG VACATION」にも収録されたこの曲を彼女は、溢れんばかりの思いを込め、観客のひとりひとりに手渡すように歌った。
いつまでも鳴り止まない拍手とともにイベントはエンディングを迎えた。終演後は砂原良徳のDJによる「CLUB風街」がスタート。松本 隆が手がけた名曲をビール片手に楽しむオーディエンスの姿も多数見られた。ジャンル、年齢を超えたアーティストたちが一堂に介し、松本 隆作品をそれぞれのスタイルで表現した「風街ガーデンであひませう 2017」。松本 隆と才能あふれる作曲家たちによる楽曲を体感できたこのイベントは、日本の音楽シーンのもっとも良質な場所に直結していたと言っていい。奥深い魅力を備えた名曲を幅広いオーディエンスに伝える“風街”プロジェクトがこの先、いつまでも続くことを心から願う。
風街ガーデンであひませう2017:10月8日(日)[DAY3] セットリスト
01. てぃーんず ぶるーす / ROLLY
02. 花いちもんめ / ROLLY
03. 綺麗ア・ラ・モード / 中川翔子
04. レモネードの夏 / 中川翔子
05. はっぴいえんどメドレー / 安藤裕子(夏なんです~氷雨月のスケッチ~かくれんぼ)
06. ないものねだりのI WANT YOU / 安藤裕子
07. セクシャルバイオレットNo.1 / OKAMOTO’S
08. ビーズ細工 / OKAMOTO’with上中丈弥(THEイナズマ戦隊)
09. はいからはくち / OKAMOTO’S
10. 七夕の夜、君に逢いたい / 森高千里
11. 夜行性 / 田島貴男(ORIGINAL LOVE)
12. 指切り / 田島貴男(ORIGINAL LOVE)
13. 砂の女 / 田島貴男(ORIGINAL LOVE)
14. 雨だれ / 太田裕美
15. 木綿のハンカチーフ / 太田裕美
16. さらばシベリア鉄道 / 太田裕美
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