Base Ball Bear Tour「日比谷ノンフィクションⅥ~光源~」
2017年9月30日(土)日比谷野外大音楽堂
TEXT:兵庫慎司
Photo by Viola Kam (V’z Twinkle)
2017年6月から2018年2月まで続くツアー「光源」の途中で行われた、通算6回目の日比谷野外大音楽堂ワンマン『日比谷ノンフィクションⅥ~光源~』。
レギュラーのサポート・ギター弓木英梨乃(KIRINJI)以外にも、キーボードでRyu(Ryu Matsuyama)・トランペット高橋紘一(SANABAGUN)・サックス谷本大河(SANABAGUN)が曲によって加わる、という特別編成。
最初の2曲「すべては君のせいで」「(LIKE A)TRANSFER GIRL」は、フルメンバー7人で華々しくプレイされる。小出祐介 (Vo,Gt)、「のっけからこんな編成ですみません、全体的にBase Ball Bearです」とあいさつ。
そして、メンバーをひとりずついじりながら紹介していくが、最後にキーボードのRyuが緊張しているのをいじったあと、「でも……ちょっとあれかな? 俺もあがってんのかな?」と本音を漏らし、超満員の客席に笑いが広がる。
3曲目「Low way」からホーン隊と鍵盤がはけ、従来の4人編成でのステージに。5曲目「恋する感覚」では弓木英梨乃が歌い、関根史織(Ba,Cho)も曲後半でリード・ボーカルをとる。
続く「GIRL FRIEND」ではコールが起こり、「LOVE MATHEMATICS」ではイントロが始まると同時に歓声が挙がる。
「やっぱりねえ、晴れちゃうんですよねえ。神様、ありがとうございます」
と、この『日比谷ノンフィクション』は6回目で7公演目(一度2デイズの時があった)だが一度も雨が降っていないことに感謝する小出。
ホーン隊ふたりがステージに戻り、さらにゲストで呂布が登場。今年のライムスターのフェス『人間交差点』(5月14日/お台場野外特設会場)にこの編成で出演し、打ち上げで「絶対もう1回やりましょう」という話になり、ここでこうして実現したとのこと。 軽やかで強靭なファンク・チューン「スクランブル」で、オーディエンスをさらに踊らせる。なお、Base Ball Bearと呂布が初めて一緒に演奏したのもここ日比谷野外大音楽堂だったという。
小出ひとりで弾き語りの「White Room」と「恋愛白書」をはさんで後半へ。
4人+Ryuで2曲。小出がスタンドマイクで歌い、後半の間奏でギターを持ってソロを弓木英梨乃から引き継いだ「寛解」と、王道ギター・バンドなミドル・チューン「リアリティーズ」。
「ベタで申し訳ないんだけど、音楽ってめっちゃおもしろいな。みなさんに音楽以外で伝えたいことがあれば、俺めっちゃ楽しいっす、それだけです。まあ、充実してるんですね」
と、小出。
「私もそうです 先週『中津川THE SOLAR BUDOKAN 2017』(9月23日/中津川公園内特設ステージ)で初めて3人だけでライブやって、めちゃ緊張したけどすごい充実感あった」
と、関根。
その中津川から帰る時、駅のホームのベンチに3人並んで座ってルマンドアイスを食べた、長いこと一緒にやってるけどそんなことしたの初めて、だそうです。
これまで、「音を奏でる」「音と戯れる」と言うのが恥ずかしかったけど、中津川から今日までの2週間でその入口に立てた気がした、そんな気持ちがメンバーで一致した、という話から、「そんな一致の始まりをみなさんに見せることができて、それがまさに『ノンフィクション』なんじゃないかな。それでは一致した我々の気持ちを聴いてください。これからもこういうものを追い求めていきたいなと思います」と続ける小出。
4人で「レモンスカッシュ感覚」「SHINE」、イントロで堀之内大介(Dr,Cho)が絶叫MCを聴かせた「逆バタフライ・エフェクト」を畳み掛け、「CRAZY FOR YOUの季節」では客席から今日いちばんのハンドクラップとシンガロングが巻き起こる。
続く「Darling」のダンス・ビートで、今度は今日いちばんのダンスの渦で日比谷野音が埋まり、本編が終了。曲後半で小出は長尺のギター・ソロをキメた。
「まずみなさんの気持ちの前に、楽しかった、俺らは。さっき言ったみたいに、今日が一致の始まりですから。次の『日比谷ノンフィクション』の時にはより一致したBase Ball Bearを見せられると思います」
という言葉から、小出、アンコールを始める。2月9日にZepp Tokyoでツアーの追加公演を行うことを告げてから、サポート・メンバーとゲスト呂布も登場。
そして「このメンツが揃ったら、あいつも呼びたいなと。俺にとってのディーヴァです」と、チャットモンチー福岡晃子を呼び込み、「5年半ぶりのあの曲を」と「クチビルディテクティブ」を披露する。予期せぬサプライズに湧くオーディエンスの前で、ハンドマイクの小出、何度も福岡晃子と見つめ合いながらハモリを聴かせていく。
最後は4人になって、16ビートのファンク・チューン「十字架You and I」で、このスペシャル・ライブをしめくくった。
バンドが今とてもいい状態を迎えていること、ご存知のようにいろんな出来事があったけどそれらをクリアしてきたことがバンドの筋肉になっていること、それで『光源』というアルバムを作ることができ、今のようなライブをやれるようになったことが、一瞬一瞬から伝わってくる、すっごく充実したライブだった。
ステージの上も下も終始多幸感に包まれていた。ただ、狂ったようなハイパーな多幸感じゃなくて、言ってみれば「この音楽が鳴っている間、その分日常が楽しくなる」くらいの、地に足の着いた多幸感であるところも、らしくてよかった。
というわけで、大満足のライブだったのだが、プラスもうひとつ、強く感じたこと。
R&Bやファンクやソウルのエッセンスを取り入れている、あるいはそのままやっているロック・バンド、今、とても多い。流行りと言ってもいい。数年前からの、速くて激しい四つ打ちで踊らせまくり歌わせまくるブームがちょっと落ち着いて、そちらの方に流れが移って来ている、という捉え方もできる。
で。Base Ball Bearはかなり早い時期からそれをやってきたバンドなわけで、そんな人たちならではの威風堂々感というか、格の違いみたいなものを、まざまざと見せつけるライブだった、という気も、とてもしたのだった。
本人たちにそんなつもりはないと思う。思うが、どの曲もそのような、決して一朝一夕ではなし得ない、鍛え上げられた力強さで鳴っていた。
ある日突然ブレイクしたり、いきなり化けたりしたことがないバンドだ。延々とじわじわとレベルアップを目指して続けてきたバンドだ。それがこんなところまで来たんだなあ、ということを、19曲の間で何度も感じたのだった。すばらしい時間だった。
今日が到達点になるんじゃないかと思ってここ数週間過ごしていたが、演奏しながら今日こそが次への新たな一歩目なのだと気が付いて本当に楽しい気持ちでいっぱいだった──。
終演後に小出はそうツイートしていた。話したわけじゃないので実際どうかは知らないが、「あれ? なんか俺ら、やりたいことなんでもやれるようになってるじゃん。これからやれることすっごい広がってるじゃん」ということに、気がついたのではないか、と推測する。
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