デビュー20年!傑作『ERA』再構築!そして……感動とサプライズだらけだった中村一義『エドガワQ2017』、完全ロングレポ!

ライブレポート | 2017.02.20 18:00

中村一義

中村一義『エドガワQ2017 〜ERA最構築〜』
2月18日(土)江戸川区総合文化センター大ホール
Report:兵庫慎司
Photo:Shinichi Kawashima/Yusuke Takamura

2014年11月8日、2015年11月28日と、中村一義が地元での江戸川区総合文化センターで行ってきたシリーズ・ライブ『エドガワQ』の3回目。前回は2部構成で、1部は1997年リリースのファースト・アルバム『金字塔』の再現ライブ、今回は『エドガワQ2017 〜ERA最構築〜』と銘打たれ、2000年リリースのサード・アルバム『ERA』を1部で再現する企画。
今年2017年はデビュー20周年、そして今日2月18日は中村一義42歳の誕生日、ということもあってか、開演前のロビーでは、江戸川区の銭湯ゆるキャラ「お湯の富士」がウロウロしていたり、普段湘南エリアで販売を行っているリヤカーの移動式駄菓子屋「駄菓子屋ROCK」が出店していたりして、ちょっとお祭り的なムードが醸されている。

中村一義

まず1部=『ERA』再構築ライブ。『ERA』の再現ではなく、ライブアレンジで楽曲を再構築するというもの。
彼のバンド=海賊のメンバーたち、バンマス町田昌弘(ギター)、三井律郎(ギター、THE YOUTH/LOST IN TIME/la la larks)、TOMOTOMO club(ベース、THE BEACHES/THE JERRY LEE PHANTOM)、マシータ(ドラム)、高野勲(キーボード)、あずままどか(コーラスなど)、ヨースケ@HOME(ギター、コーラスなど)の7名が現れ、持ち場につく。

アルバム『ERA』の冒頭は、1曲目「イーラ」で女性の声で英語で9から1までカウントダウンしていって、「0」の代わりに「ドウゾ」と告げてから2曲目「1,2,3」が始まるが、このライブでもカウントダウンはそのまま(ステージ後方のプロジェクターに数字も映る)。ただし「ドウゾ」のあとにブレイクが入り、ステージ右の花道から中村一義が登場、「よーこそ、爆発空間へ!」ジャケットの帯に書かれていたその言葉を叫んでから、あのイントロのギターが響き、そこにヨースケ@HOMEのハープがかぶさっていって「1,2,3」へ──というスタートだった。Bメロで満員の客席いっぱいに腕が左右に振られ、サビでは恒例の「1,2,123」と指でカウントが掲げられる。
ヨースケがオーディエンスをあおってから突入し、アウトロでは中村が肘枕で寝転んでたみせた「ロザリオ」を経て、「メロウ」ではプロジェクターに水彩アート(オイルアートの水彩絵具バージョンみたいに、真水に色水が一滴ずつ落ちてじわじわ色が混じっていく)のが映し出される。続くインタールード的な「スヌーズ・ラグ」は「GON ver.」では、中村の愛犬・魂の散歩などの様子が映る。

中村一義

画面に一粒ずつピーナッツが置かれていてそれが「PEANUTS」という文字を描く映像とともに「殴られても、潰されても、絶対に歌を止めない」というラインが響いた、初披露の「ピーナッツ」。三井律郎のギターと中村の歌で始まり、サビのたびに「飛び込んで行こうよ」の大シンガロングが響いた「ショートホープ」。

「威風堂々(Part 1)」では海賊旗を掲げて振り回し、アルバムどおり「現実離れした気分でまだいるわけです」というボイスから始まる「威風堂々(Part 2)」は、ひとことひとことをていねいにやさしく強く歌い上げ、「虹の戦士」ではレインボーカラーのインディアンマーク(彼がライブ活動を始めた当初からグッズ等のビジュアルに使っている)がプロジェクターを彩る。

「はじめまして、中村一義です。やっとしゃべれた、がまんするのつらいんだ、俺おしゃべりだから──」と、ここでこの日最初のMC。今日2月18日に42歳になったことを改めて告げ、「『ERA』の曲順でいくと次の曲はお祝いの曲じゃないですか?」で、拍手と歓声が湧く。

海賊のメンバーを紹介してから(アルバムのアートワークと同じようにひとりずつ横顔シルエットがプロジェクターに映る)、ジングル的な「ジュビリー・ジャム」をはさんで、その「お祝いの曲」=「ジュビリー」がスタート。ホールいっぱいに多幸感が広がる。

ヨースケのアコギが響き、プロジェクターに花のモノクロ写真が映り、「見てみなよ、独裁者が叫ぶ革命はエゴさ。」というラインが現在の世界のことを歌っているように聴き手に刺さる「ゲルニカ」(ピカソの『ゲルニカ』をモチーフにしている曲なので当然なのだが)。

1分26秒で「この目に、その目に、この手や、その手に、そうだ、すべてはある。」と歌いきる「グレゴリオ」を経て、「君ノ声」が始まるとステージの照明が一気に明るくなり、サビで今日何度目かのシンガロングが「♪ラ、ラ、ラ…」とホール内に満ちていく。

中村一義

賛美歌もしくはゴスペルのような「ハレルヤ」では、さらなる合唱が響く。曲の後半で、中村、感極まったか、涙しているように見える。続く“バイ・CDJ”のノイズから「ロックンロール」のリフが響き渡る。中村一義の(100sの)ライブで数限りなくプレイされてきたこの曲で、本日いちばんのピーク・タイムを作り、曲の後半のブレイクで「みんな楽しんでくれたかい? 泣きそうだ、ハハッ。デビュー20周年のお誕生日パーティをありがとうございました!」と叫ぶ中村。

そして“21秒の沈黙”(その名のとおり21秒無音。プロジェクターには秒数が映し出される)の後、『ERA』のラスト・チューン「素晴らしき世界」へ。この曲を歌い終えた中村は、アウトロで客席に背を向け、プロジェクターに映る地球と向き合ってエンディングを迎えた。

15分の休憩をはさんで、2部スタート。ペットボトルを片手にステージに戻ってきた中村、「いつもライブハウスだから。1年に1回は(ホールも)やりたいね」「『ハレルヤ』なんて人前で歌うつもりなかった、しかもフルバージョンで。」などと話し、「そんな再現不可能と思われていた曲を今の時代にぴったりにしてくれた海賊のメンバーに大きな拍手を!」と、バンドに感謝の意を示す。
「第二部は新旧取り混ぜて。20周年一発目のライブ、まず初心を忘れないということで、デビュー曲やります!」との言葉に大歓声が挙がる。「犬と猫」だ。余談だが、この曲みたいにボーカルのみで始まる曲の時って、ギターや鍵盤を鳴らしてキーを確かめてから歌い始める人が多いが、中村一義は一切それをせずに、いきなり「♪どう?どう?」と歌い出す。

この日本ロックシーンに残る名曲でオーディエンスを大喜びさせたあと、「ワンリルキスに曲を提供させてもらったことがあるんだけど、この曲をバンマスがいたく気に入って」(中村)「デモがすっごいよかったのよ」(町田)と説明。声優アイドルのワンリルキスのプロデューサーはサニーデイ・サービスの田中貴なので、その縁で依頼があったと思われる。ちなみにレコーディングには町田も参加している。その「ワンリルキス」を、あずままどかをフロントに呼び、ツイン・ボーカルで歌う。正面からアイドル・ポップスなのに中村一義テイストに溢れてもいる絶妙なこの曲にみんな聴き入ったあとは、最新アルバム『海賊盤』のオープニング・チューンである「スカイライン」で一気に会場の温度が上がる。

中村一義

そして、続くファーストアルバムの「永遠なるもの」。それにしても、シンガロングの時は女性の声の方が大きく感じるが、歓声は男性の声の方がより耳に入ってくる気がする。中村一義の歌のキーが高いせいだろうか。ってどうでもいいですね、すみません。

この初期の名曲を最後まで歌い、「おじさんね、今の曲は声が枯れるまでやんないと気がすまないんですよ」とひとこと。そして、「今日は僕の仲間が駆けつけてくれました。ロビーにいたでしょ?」と「お湯の富士」と「駄菓子屋ROCK」を紹介。後者=ギャロはそのままステージに参加。

続いて、海賊のメンバーであるHermann H.&The Pacemakersの平床政治とウルフも登場。そして中村、もうひとりのメンバー、岡本洋平が、病気治療に入っていたことを改めて説明してから、「そして今日……岡本洋平が復活して、ここに帰ってきました!」。
驚きの歓声と拍手が広がる中、岡本洋平が現れる。岡本洋平、「中村一義!」とコール。そして彼がアコースティック・ギターで加わって、海賊フルメンバー・大海賊で「キャノンボール」を演奏──という、おそらくここにいる誰もが予想し得なかった形で、この幸福な時間はしめくくられた。曲のあとに中村の愛犬・魂も登場、町田の号令の下、客席をバックにメンバー&お客さんで恒例の「エドガワQのポーズ」で記念撮影が行われた。

中村一義

ただし。中村一義、去り際に、「今日はアンコールはございません。でもせっかくなんで、もうちょっと遊ぼうぜ。準備があるからちょっと待っててね」

というわけで、少々のインターバルのあと、事前に公式サイトで告知されていた「キャノンボールのMVをこの場でシューティング」が行われた。監督が出てきて段取り等の説明をしたあと、音源に合わせて撮影。自分のパートを離れて人の楽器を弾いている人、楽器置いちゃって踊り狂う人、客席に下りて走っていく人、などなど、かなり自由でフリーキーなことになっていった。

一同が去ったあと、プロジェクターで、20周年記念として中村一義初のセルフカバー・ベストアルバム『最高築』&LIVE DVDが5月24日にリリースされることが発表された。このMV撮影はそのためのものだった、ということです。いずれも、仕上がりが楽しみです。

中村一義

 

中村一義『エドガワQ2017 〜ERA最構築〜』
2月18日(土)江戸川区総合文化センター大ホール
~SET LIST~

<第一部>
01. イーラ
02. 1,2,3
03. ロザリオ
04. メロウ
05. スヌーズ・ラグ
06. ピーナッツ
07. ショートホープ
08. 威風堂々(Part1)
09. 威風堂々(Part2)
10. 虹の戦士
11. ジュビリー・ジャム
12. ジュビリー
13. ゲルニカ
14. グレゴリオ
15. 君ノ声
16. ハレルヤ
17. バイ・CDJ
18. ロックンロール
19. 21秒間の沈黙
20. 素晴らしき世界
<第2部>
21. 犬と猫
22. ワンリルキス
23. スカイライン
24. 永遠なるもの
25. キャノンボール

イベント出演情報

佐野元春 presents 『THIS!オルタナティブ 2017』
2017年3月25日(土)大阪フェスティバルホール

『森、道、市場 2017』
2017年5月14(日)
愛知県蒲郡市ラグーナビーチ(大塚海浜緑地)&遊園地ラグナシア

関連リンク

RELEASE

デビュー20周年記念
初のセルフカバーベストアルバム『最高築』

(Victor Entertainment)
5月24日(水) SALE
※初回限定盤(CD+ブックレット+α)、通常盤(CD)
ライブDVD
『タイトル未定』

(Victor Entertainment)
5月24日(水) SALE
※「エドガワQ2017 〜ERA最構築〜」の模様を収録

配信情報
アルバム『海賊盤』

iTunes、レコチョク 他、各配信サイトにて絶賛配信中