Versailles【Chateau de Versailles】
2017年2月14日(火) 日本武道館
Text:東條祥恵
Photo:KEIKO TANABE / TAKAAKI HENMI
2017年2月14日、バレンタインデー。日米首脳会談同行から帰国したばかりの安倍昭恵夫人までもが、お祝いに駆けつけたVersailles初の日本武道館公演となる<Chateau de Versailles>が開催された。
ついに、この日がやってきた。
2016年8月7日、千葉県・舞浜アンフィシアターにて活動休止から完全復活を遂げた薔薇の末裔たち。
その復活公演で、開催日程を発表してから約半年。Versailles10周年のアニバーサリーイヤー突入とともに、いまは亡きメンバー・JASMINE YOU(Ba.)と思い描いた”あの夢”を叶える、その大切な日がついにやってきた。
武道館の入り口から楽屋口の通路に至るまで、そこには高貴な香り漂う様々なスタンド花が並んでいた。その花のほとんどがVersaillesのシンボルである真紅の薔薇。ここに東京じゅうの花屋さんの薔薇が全集まったんじゃないかと思うぐらいのものすごい量だ。なかでも、蝶の形をしたものや電飾やラインストーンまで散りばめてシャトーを模ったものなど、Versaillesの世界観をスケール感たっぷりにフラワーアレンジメントで事細かに表現した個性的な作品は、まるでアートを見ているような圧巻の仕上がりっぷり。
Versailles初武道館をみんなで盛り上げようという大きな愛と期待が、そんなところからも伝わってきた。場内に入ると、ステージには2階建てのセットが登場。薔薇の蔦が絡まった手すり。ステンドグラスの映像を映し出すバックの巨大LED。舞台中央にはレッドカーペットが敷かれ、武道館はまるでヨーロッパの大聖堂のような雰囲気。
開演時間を少し押して暗転。舞台でトーチが揺れるなか、「Prelude」に合わせて黒装束姿で蠟燭を手にしたクワイヤが粛々と舞台に登場。総勢80名という大所帯のクワイヤがセットの上下の花道に散って並ぶなか、LEDの下からはゴージャスな衣装を華麗に纏ったメンバーがYUKI(Dr.)、MASASHI(Ba.)、TERU(Gt.)、HIZAKI(Gt.)、KAMIJO(Vo.)の順番で優雅に登場。
これからヨーロッパの中世の貴族を描いたオペラでも始まるんじゃないかという厳かなムードに包まれた舞台で、突如ファイヤーボールがバンバン上がり始めると、KAMIJOが公演タイトルをコール。ライブは「Aristocrat’s Symphony」のシンフォニックなバンドアンサンブルと80人のクアイヤが織りなす大迫力のコーラスが一つになって、大会場ならではの壮大なオープニングを作り上げ、幕開けからド派手に魅せまくる。
続いて、高速サビメロを彼らならではのふりつけで楽しませ、メタル×華麗に優雅という独自のパフォーマンスを確立したキラーチューン「Ascendead Master」をアクト。「ボンジュール! ボンジュール! ボンジュール!」と日の丸の下でもKAMIJOがおなじみの挨拶を告げると、観客の緊張感がほどよく解け、場内に笑顔がこぼれる。
「今宵、日本武道館が私たちの城だ。大いに楽しんでくれ」と話し、「全員噛みついてこれるかー?」というあの煽りフレーズを合図に、アグレッシブチューン「Shout&Bites」がスタート。噛みつく勢いで客席からはoiコールが起こり、ステージではHIZAKI、それに続いてMASASHIもKAMIJOに近づき、噛みつく代わりにマイクに向かってシャウト。そして、曲後半の転調がくるやいなやHIZAKI、TERU,MASASHIの3人が揃ってクルッと華麗にバックターンを決める。バンドの美点をアピールするにはもってこいのこのパフォーマンスは、回転時に各々の衣装の裾がふわ〜っと広がった瞬間、花が咲いたように見えるところが薔薇の末裔らしくて美しい。
トーチの炎が揺れるなか、「zombie」で武道館にハンドクラップを鳴り響かせた後は、この日来場者限定で無料配布した4年ぶりのニューアルバム『Lineage〜薔薇の末裔〜』から、「Inheritance」をライブで初パフォーマンス。メロディックな歌ものがMASASHIの美しいフレージングから変拍子へと展開し、後半KAMIJOの歌のみのパートへと上りつめるという最新のVersaillesをオーディエンスの脳裏に焼き付けた後は、HIZAKIとTERUがぴったり背中合わせになって許されない愛を綴ったミッドテンポの「Vampire」へ。続いて、スローテンポから滑り出した「Chandelier」は、テンポアップと同時に明るいメロディーに引っ張られて歌もバンドアンサンブルもオーディエンスも照明も、それまでの世界観を陽の光り輝く世界へと一気に切り替えていく破壊力がすごかった。
ものすごい手数の音を切れ味抜群の音で操るYUKIのドラミングに乗せて、KAMIJOが“信じる力を信じて夢の続きを見よう”と歌い、そのパワーをMASASHIのゴリゴリじゃないのに存在感ある音色とフレーズを生かしたベースプレイでひきつけ、TERUのテクニカルな高速速弾きへとつなぎ、HIAZAKIが最後それをメロディックなフレージングでまとめ上げて、みんなを感動へと導いていった後、駄目押しで2本のギターがこれでもかと流麗なメロディーをハモリながら奏でて迎えるフィナーレの美しさたるや。5分間以上、見るものに息する瞬間も与えない徹頭徹尾考え抜かれたマニアックな楽曲の構成力。それを、完璧にこなすメンバーの緊張感あるパフォーマンスのクオリティーの高さ。
改めて、Versaillesというバンドが放つ10年というキャリアに裏付けされた実力に感銘を受けるファンに、KAMIJOは最後「君たちが僕たちを照らしてくれるChandelierだ。ありがとう!」と賞賛の言葉を送った。
こんなにも崇高なパフォーマンスでオーディエンスを大感動させた後のバンドの存在感を大いにアピールした後のMCでは、KAMIJOがこの日イチの“笑い”を叩き出す。武道館前に行なっていたヨーロッパツアーでは、ポーランド公演でステージから落ちてしまい、その直後から松葉杖と車椅子での生活を余儀なくされてバルセロナでは座って歌ったというKAMIJO。
「そういう生活に身を置いてみて、改めて大切なことに気づかされました」。
神妙な表情で聞き入る観客たちに、その後KAMIJOが
「大切なもの。それはね、バリアフリー!!」と告げると、武道館はたちまち大爆笑に包まれた。
「なってみないと分からないからね。バリアフリー、広げていきましょう」。ヨーロッパ風の異世界から、いきなりそこからは想像もつかないようなトークをおみまいするKAMIJOのギャップもまたVersaillesの魅力。
そうして、ステージは再び照明が暗くなり、メンバーとオーディエンスがローズライトを左右に振る中、ピアノをバックにしっとりと「DESTINY-THE LOVERS-」がスタート。リズムチェンジを繰り返して観客の情熱を高ぶらせた後は、KAMIJOとともにオーディエンスがタイトルコールをして始まる「After Cloudia」へと繋いだ。
そして、KAMIJOが「みんな聞いてくれる? TERUがね、真面目な顔して“全曲テンポ速くしたらたくさん曲できるじゃない?”っていうんだよ。ただでさえVersaillesの曲は速くてTERUの指とか見えないのに(微笑)。TERUがそういった罰として、次の曲はちょっとだけ速くやってみようと思う。ちょっとだけだぞ?」と茶目っ気たっぷりに話し、メンバーそれぞれの限界点突破をさらに追求するスパルタっぷりで、Versailles史上最高速のテンポを叩き出して「Philia」を堂々パフォーマンス。怒涛の超絶サウンドを全身に浴びた客席からは、演奏が終わった途端に大きな拍手が沸き起こった。
この後、KAMIJOが「このステージに立たなければいけない理由がありました」と伝え、いまは亡きメンバー、JASMINE YOUとこのステージを夢見ていたことを打ち明けると、客席では泣き出すファンも。
そして「このステージに立ったいま、この曲をJASMINE YOUに捧げます」と伝え「Serenade」の演奏が始まった。
曲中、バックのLEDには静かに天使が舞い降り、天空へと消えていった。
KAMIJOがいなくなった舞台にトーチがともり、この日最大の見せ場がやってきた。Versaillesが誇る彼らの人生を綴った超大作「Faith & Decision」が始まると、普段はなかなか聴けないこの曲を生で聴けるとあって、客席には緊張感が走る。
KAMIJOが途中から加わり、“今こそ交わした約束を”と歌い上げる歌詞は、この日だからこその説得力で客席に感動を呼び込み、その後曲がパーンとテンポアップすると同時にステージにはものすごい数のファイヤーボールが上がる。フロント4人がセンターに集結すると同時に連続で炎が上がり出すと、モニターにはリリックが映し出された。そうしてKAMIJOのアカペラ、クワイヤのコーラス、オーディエンスの歌声に包まれ、壮大な物語はエンディングを迎え、最後にキラーチューン「MASQUERADE」を演奏して本編を締めくくった。
「We are」「Versailles」のコールに迎えられて始まったアンコールでは6月23日、東京・豊洲PITから<Versailles 10th Anniversary Ceremoni「CHATEAU DE VERSAILLES」>が始まり、これでワールドツアー、11月からは国内ツアーを行なって、12月17日に東京・Zepp TokyoでこのツアーのGrand Finaleを迎えるなど嬉しい発表を伝えたKAMIJOは「ちょっとKAMIJOのティータイム」といって、ワイングラスでステージドリンクをゴクリ(微笑)。
その後は、サビで楽器隊全員がバックコーラスを担当するニューアルバムのタイトルチューン「Lineage」、お馴染みの「The Red Carpet Day」のジャンプで武道館をゆらせた。
2回目のアンコールは、カラフルなローズライトが灯る会場を見回したKAMIJOが「ありがとう!この景色が見たかった」とつぶやいた「Sympathia」、壇上に再びクワイヤが登場してシルバーテープが舞った「The Revenant Choir」で、祝祭感満載のままライブは終了。
「10年目にしてこの日本武道館に立てたことを心から感謝しています。ありがとう。今日こうして笑っていられる。これがVersaillesの未来です」とKAMIJOが宣言した後、会場のみんなが手を繋いで「We are」「Versailles!」をコール。手を繋いで笑い合うメンバーの手元には、JASMINE YOUのベースが握られていた。
メンバーの急死、活動休止、いろいろあった10年だったが「バンドはこの10年間で、いまが一番いい状態」だとライブ中にいい「だから、これから10年、20年、30年。いや、永遠にみんなとこの“夢”を見続けられたらこの上なく幸せです。どうぞ、永遠によろしくお願いします」と話したKAMIJO。
まだまだ続く夢への期待、それをさらにかき立ててくれるステージはこの後10周年を祝うセレモニーへと展開していく。
メンバーソローショット&セットリスト