KAMIJO Solo 10th Anniversary Special Live「LOUIS XVII」
2023年8月28日(月)Zepp Shinjuku(TOKYO)
Versaillesの活動と平行して、KAMIJOがソロ10周年を記念した特別公演<Solo 10th Anniversary Special Live「LOUIS XVII」>を8月28日、東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)で開催した。
KAMIJOが10年かけてたどり着いた自身の世界観をとことん極めた超耽美なKAMIJOワールド。その決定版であり、完成形を観たコンセプチュアルなライブだった。これはお芝居なのか、朗読劇なのか。クラシカルなオペラやミュージカルを観ているようでありながらも、目の前で行われているのは正真正銘、ゴリゴリのメタルで優美なシンフォニックなロックライブ。それを美しい旋律とともに、品格高く聴かせていくKAMIJOの徹底した美学。このような公演は、そうそう見られるものじゃない。それぐらい貴重な1本だった。1つの世界観、美学を極めるとはこういうことなのだというのをまざまざと見せつけられた。
KAMIJOがソロで並々ならぬ思いを注ぎ込み、ストーリーテーラーとなって描き続けてきた大仕事といえば、ルイ17世の物語だ。これまでKAMIJOはこの物語をタームごとに区切ってライブで披露してきた。今回はついに、それを、Zepp Shinjuku(TOKYO)に常設された360度LED画面に映し出される映像とともに、豪華声優陣たちによる声のお芝居、HIRO(Gt/La'cryma Christi)、YUKI(Gt/DUSTAR-3、Rayflower, Λucifer)、IKUO(Ba/BULL ZEICHEN 88,Rayflower)、shuji(Dr/ex.Janne Da Arc)といった超メジャーなバンドメンバーによる演奏、それをまとめあげるKAMIJOの歌とパフォーマンスを使って、自身が書き下ろしたシナリオによるルイ17世の全物語をお届けするというスペシャルなアニバーサリーライブなのである。どこまでも手の込んだ本公演の全貌が、いま明らかに…。
オープニングはこの物語の始まりを告げるナレーションから静かにスタート。1789年7月、フランス革命が勃発。声優たちの声の演技が始まり、ルイ16世とマリー・アントワネットはコンコルド広場へ。マリー・アントワネットは、王位継承権1位にいた次男のルイ・シャルルに「いつかお父様のような立派な王様になって。シャルル、いやルイ17世」という言葉を残して処刑されたところで、ライブは1stミニアルバム『Symphony of The Vampire』収録、スピーディーな演奏と美しく耽美な旋律を歌うKAMIJO節が冴える「第一楽章 Presto」で幕を開ける。次は、そのまま音が途切れることなく「第二楽章 Sacrifice of Allegro」へと展開。重厚感あるシリアスな空気がただよってきて、物語の不穏な展開を知らせる。凄腕ミュージシャンばかりを揃えたKAMIJOバンドだが、この演奏家たちが、複雑かつ難解な展開をもつKAMIJOの組曲のような楽曲を、1音1音、丁寧にプレイして、しっかり音楽で物語を描こうとしているところがなんとも素晴らしい。ナレーションがナポレオン・ボナパルト時代の到来を告げたあと、曲はダークでサウンドもヘヴィな「闇夜のライオン」で勢いをつけていく。さっきまでステージのバックに映っていた額縁のような画面はワイドに広がり、客席の前後左右を取り囲むように360度に広がったLED画面いっぱいにカミナリの模様が広がっていく。まるでテーマパークのような立体的演出をフルに使った映像が、大迫力で観客やステージに迫っていくと、KAMIJOのパフォーマンス、観客たちが振り上げる拳にも一層力が入る。シンフォニックメタルが何度も展開を繰り返しながら、画面の映像との相乗効果で新しい時代の幕開けのファンファーレを鳴らしていったあとは、ポップ感溢れるノリノリのロックなパーティーチューン「Beautifull Rock'n Roll」へ。曲が始まると、場内にはKAMIJOとバンドメンバー、そしてオーディエンスが一丸となった合唱の掛け合いで、とたんに楽しい雰囲気が広がっていく。
手に持ったグラスに注がれたお水がワインに思えるほど、歌っていないときの立ち振る舞いまで優雅に見えるKAMIJO。次は、そのKAMIJOのタイトルコールからメロディアスさピカイチの「第五楽章 Sonata」がスタート。真ん中のお立ち台にKAMIJOとIKUOが片足をのせ、ロマンティックでどこかせつないメロディーを奏でていく。声優たちの声で、死んだと思われていたルイ17世が偽物だという噂が世の中にはびこっていること。だが、20世紀に入り、ミイラとなって眠るルイ17世の心臓とハプスブルグ家に代々伝わるロザリオから発見されたマリー・アントワネットの毛髪のDNAを鑑定したところ、その心臓はルイ17世のものだと分かったと伝えたところで、曲は「Habsburg」へ。イントロからスピードメタルが炸裂。白煙がステージから吹き上がり、クワイアが場内に響き渡る。そうして“ロザリオを”と歌いながらKAMIJOは空を切り裂くように人差し指で十字を切ったあと、最後に“今革命を~”と歌う場面がやってくると、そこでは自ら演者となり、ステージに跪いて天を仰ぎ、願いを唱えるパフォーマンスを披露していった。
ナレーションを挟んで「さあいこうか、いくぞ歌舞伎町!」とKAMIJOが叫び、次は「Vampire Rock Star」へ。ここでKAMIJOはルイ17世にヴァンパイアの血を与えたサンジェルマン伯爵に扮し、ロックスターとなってキャッチーなロックンロールナンバーを歌唱。KAMIJOソロでは革新的ともいえるこの曲、客席もここではロックスターを後押しするように一心不乱に“Vampire Rock Star”や“yeah,yeah,yeah,yeah”のコールをステージに届け、声を張り上げて大盛り上がり。ここで大騒ぎしたあとは、アルバム『Sang』の核になっていたクラシックメタルの様式美を感じさせる「Castrato」へ。そこから、待ってましたの組曲「Sang」へと展開。今回は「Sang I」、「Sang II」を繋げてプレイし、ここでこみあげるようなエモい感動をサウンドで作り上げ、中盤のクライマックスを作り上げていった。
物語がアメリカに渡ったところで、曲調もガラリとモダンなものに変わり、ヘヴィなギターとデジタルなダンスビートを融合させた「Conspiracy」が立ち上がると、そのサウンドに合わせて、LED画面にもデジタルな世界が広がっていく。そうして、メロスピな「Eye of Providence」へと曲が展開すると、バンドサウンドが今度はオーケストラのようにからみあい、メランコリックな旋律を奏で始める。KAMIJOはその上で、全編英詞の歌詞をファルセットを使った繊細な歌いまわしで歌唱してく。スローな幕開けから、サビはバスドラが激しくドコドコ鳴り響くまでテンポアップするこの曲は、この後そこにHIROがスピード感あるギターソロをつないで、物語の展開をさらに加速させていく。このあとは、ここまでの物語がフラッシュバックするようなセリフのサンプリングに続いて、始まったのはこの日のためにバラードへと生まれ変わった「OSCAR」だった。“百合の名と青い血と王の誇りにかけて”とルイ17世と自身のヒストリーにもかけた歌詞を、KAMIJOがドラマチックに歌い上げていく。ここからライブは後半のハイライトへと向かっていく。
ソロになって心機一転となったデビュー曲でありルイ17世のヴァンパイアとしての目覚めを描いたLouis 〜艶血のラヴィアンローズ〜」が始まると、“ラヴィアンローズ”でオーディエンスは各々、一斉にローズライトを掲げる。間奏パートでは声優の「ルイ17世、生きていたのか」というセリフも入ってきて、最後はそのルイ17世とともに覚悟を決めた気持ちを表すようにKAMIJOが手に持っていた薔薇にキスをして、客席に投げ入れた。「ここがお前たちの理想の世界」というKAMIJOの言葉に続いて、壮厳なストリングスとスピード感溢れるバンドサウンドがからみあう「Theme of Sang」。そこから続けざまに「Nosferatu」の演奏へとつなげ、ツインギターのユニゾン、shujiがドラムで超人的なプレイを行うなか、KAMIJOが手を左右に振り、オーディエンスとともに一体感ある理想の世界を作り上げていく。そして「僕がずっとそばにいるよ」というナレーションをはさんで、KAMIJOが穏やかなムードでほんの少し、笑顔を浮かべながら会場に集まったオーディエンスを見つめ「Avec Toi 〜君と共に〜」を歌い上げていったところは大感動。10年間という月日を費やし、フランスにあった史実からインスパイアされたファンタジックでコンセプチュアルな物語を描きながらも、それを描いてきた先にあったもの。それを、愛する大切なファン(やサポートメンバー、スタッフ)へと着地させたことで、この物語の本質を実にハートフルな人間味溢れる現実の愛情の物語へとつないでいったところは本当に素晴らしかった。そして、KAMIJOの「いくぞ!」という掛け声から「Symphony of The Vampire」第七楽章「Throne」が始まると、美メロの応酬のなか、フロントから白煙の柱が勢いよく立ち上がり、第八楽章「NOBLESS OBLIGE」では場内には銀テープが華やかに舞い降り、最後は「この世で一番美しい薔薇よ」でこの物語の有終の美を飾ってみせた。歌い終えたKAMIJOはまず「みなさんお集まりいただき、ありがとうございました」と感謝の言葉を伝え、そのあと、これまでの10年を振り返り「あっという間でした。長い人間の歴史のなかで、現代にみんなと出会い、集まれたことは奇跡。そして、この10年はもっと奇跡だと思ってます」と感慨深げに言葉を伝えた。そうして「この世で~」のサビの“あなたの魂と一つになって/初めてこの歌は命を持つ/あなたの人生と重なり合って/動き出すストーリー/時を超えて”を一緒に歌い、場内の照明が全開になったところで、観客全員を現実世界へと連れ戻し、ライブはフィニッシュ。終演後には「理想の世界を楽しんでいただけただろうか。多くの人に広げてもらいたい。諸君は未来の英雄だ」という次の展開を予想したくなるようなナレーションを残して、ライブは終わりを迎えた。
10周年を期に、デビュー以来紡いできた史実を元にしたストーリーを見事に完結させたKAMIJO。2024年1月には、新曲を提げて東名阪ツアーを行なうことも決定した。全公演共に今回と同様のサポートメンバー、そして豪華声優陣の演技とLEDによる映像演出で彩られるフルストーリーライヴとして開催される。
年内には10月28日、東京・新宿ReNYで行なわれるイベント<Crazy Monsters Halloween Party 2023 Day.1>に出演。KAMIJO、Versaillesともに、今後の活動に期待していてほしい。
SET LIST
01. 第一楽章 Presto
02. 第二楽章 Sacrifice of Allegro
03. 闇夜のライオン
04. Beautifull Rock'n Roll
05. 第五楽章 Sonata
06. Habsburg
07. Vampire Rock Star
08. Castrato
09. Sang I
010. Sang II
011. Conspiracy
012. Eye of Providence
013. OSCAR
014. Louis 〜艶血のラヴィアンローズ〜
015. Theme of Sang
016. Nosferatu
017. Avec Toi 〜君と共に〜
018. NOBLESS OBLIGE & 第七楽章「Throne」& 第八楽章「NOBLESS OBLIGE」
019. この世で一番美しい薔薇よ